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オキサリプラチンによる血管痛を和らげる方法を医師が解説

 2024/06/11 副作用対策  

こんにちは、加藤隆佑と申します。がん治療を専門に診療をしています。

今日は、大腸がんや胃がんで用いられる抗がん剤であるオキサリプラチンの副作用対策についてお話します。

オキサリプラチンは治療でとても重要な武器になります。

例えば、大腸がんで肝転移があって手術ができなかった方で、この薬を併用した抗がん剤治療により、手術ができるようになり、癌をすべて取り除くことができることもあります。

とても効果的な抗がん剤なのですが、オキサリプラチンを投与する時の血管痛で悩まされることがあります。

それを解決するための方法を解説いたします。弱点の一つが末梢神経症状です。

オキサリプラチンによる血管痛とは?

血管痛とは、点滴や注射の際に薬剤が血管を通過する時に感じる痛みのことです。

オキサリプラチンによる血管痛の特徴ですが、

1、オキサリプラチンを投与中、または投与直後に血管痛が発生することがあります。この痛みは一時的なもので、通常は投与終了後に軽減します。

2、一部の方は、投与後数時間から数日間にわたり、血管の痛みや不快感が続くことがあります。

血管痛を生じる理由とは?

オキサリプラチンは、pH約 4.8という低い pHになっているために、血管を通過する際に以下のような問題を引き起こします。

1、血管の刺激:血管の内壁を直接刺激し、痛みを引き起こします。

2、炎症反応:薬剤が血管内皮細胞を刺激し、局所的な炎症反応を引き起こすことがあります。この炎症が痛みの原因となります。

3、神経への影響:オキサリプラチンは神経毒性を持つため、神経に影響を及ぼし、痛みやしびれを引き起こすことがあります。これも血管痛を助長させる原因になることがあります。

血管痛を和らげるためにすべきこととは?

1、温める。

オキサリプラチンの投与の15分前から終了まで、針刺入部のところから10cmくらいのところを、ホットコールドパックで温めます。

ホットパックは、あらかじめ水を入れた容器に浸し、電子レンジ500Wで3分間加温します。ホットパックの温度は 40°C前後とすると良いです。

冷えてきたら交換します。

温めることにより血管が拡張し、その結果、血流量の増加・新陳代謝允進による炎症消退作用・知覚神経の感受性の低下による鎮痛作用が期待できます。

オキサリプラチンを溶かした液体そのものを温めたのちに、点滴で投与することも、痛みの軽減に役立ちます。

2、温めても痛みが良くならないときは、CVポートを使って薬を投与します。

CVポートは、皮膚の下に埋め込んだ小さな機器で、そこから薬を体に入れます。薬液は太い血管に流れるので、血管に痛みが出ることはありません。

CVポートとは、以下のようなものを、

こんな感じで埋め込みます。

オキサリプラチンによる血管痛が強い時には、CVポートの留置も検討してもらうと良いです。

30分から1時間くらいで安全に埋め込んでもらえます。

オキサリプラチンによる末梢神経障害の対策に関しては、こちらで解説しています。

 

 

 

参考資料:オキサリプラチン末梢静脈投与患者の血管痛に対する 輸液加温併用法による効果

 

執筆医師:加藤隆佑


癌治療認定医
内科学会認定医
消化器病学会専門医・指導医
消化器内視鏡学会専門医
肝臓専門医・指導医
札幌禎心会病院がん化学療法センター長

(2021年9月までは、小樽協会病院消化器内科に所属)

消化器領域のがん(食道、胃、すい臓、肝臓、胆のう、大腸)を専門としつつ、がん全般についてアドバイスをしています。

緑書房より「抗がん剤治療を受けるときに読む本」「大腸がんと告知されたときに読む本」「がんと向き合うために大切なこと」を出版。

加藤隆佑医師の論文

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