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乳がんの腫瘍マーカーであるCEAやCA15-3などについて医師が解説

 2021/01/21 乳がんコラム  

こんにちは。加藤隆佑です。

乳がんの検査項目の1つとして、腫瘍マーカーを調べることがあります。

そこで、乳がんの腫瘍マーカーであるCA15-3、NCC-ST-439、CEA、BCA225について解説します。

CA15-3といったような腫瘍マーカーを調べることにより、分かることは、以下の3つです。

  • 腫瘍マーカーが正常域を超えた数値の場合は、体の中にがんがある可能性がある。
  • 治療を行い、腫瘍マーカーが下がれば、治療は効果的であり、がんが縮小してきている可能性が高いと判断できる。
  • 治療を行っても、腫瘍マーカーが上昇するならば、治療は無効であり、がんが増大している可能性が高いと判断できる。

ここでは、乳がんの腫瘍マーカーについて、もう少し詳しく説明します。

腫瘍マーカーとは何か?

実は、多くの腫瘍マーカーは、がん細胞からだけではなく、正常な細胞でも作り出される物質です。

しかし、がん細胞の方が、正常な細胞よりも成長が早いために、よりたくさんの腫瘍マーカーを作ります。

その結果、腫瘍マーカーが基準値よりも高い時には、身体の中に、がんが存在している可能性が高いと、解釈できます。

腫瘍の大きさが大きいほど、腫瘍マーカーの数値は高くなる傾向があります。したがって、早期のがんでは、腫瘍マーカーは正常域内にとどまることが多いです。

そして、がんがあっても、腫瘍マーカーは正常域にとどまっていることがあることは、知っておくべきことになります。

逆に腫瘍マーカーが高い数値でも、背景にがんが存在しないことがあります。

特に、以下の腫瘍マーカーは正常域から外れた数値であっても、背景にがんがないケースが多いです。

CEA:慢性肝炎、肝硬変、慢性膵炎、肺結核などでも高値を示すことがあり、その確率は20~40%程度と考えられています。

CA15-3:乳腺の良性疾患でも、まれに陽性になります。他に子宮筋腫,子宮内膜症,卵巣のう腫などの婦人科疾患,肝機能障害で陽性となる場合も、あります。

CA125:子宮内膜症の50~65%程度、膿疱腺腫の20%程度でも高値を示すことがあります。

ここでいう高値とは、正常域から少しはみ出る程度の数値のことを指します。

腫瘍マーカーが数千というような数値である場合や、腫瘍マーカーが右肩上がりで上昇する場合には、非常に高い確率で、背景にがんがあるであろうと推測されます。

乳がんで用いられる腫瘍マーカーは?

乳がんの腫瘍マーカーとして、以下のものが挙げられます。

  • CEA
  • CA15-3
  • NCC-ST-439
  • BCA225

ちなみに、CA15-3は、肝臓や骨といった臓器に転移しているケースにおいて、高値を示すことが多い特徴があります。

腫瘍マーカーが右肩上がりで上昇してきたらどうする?

定期検査の検査結果で、腫瘍マーカーが少し上昇することがあります。腫瘍マーカが少し上がった程度では、不安に思う必要はありません。

しかし、右肩上がりに上昇する場合は、注意が必要です。

たとえ、正常域内であったとしても、右肩上がりに数値が上昇するときは、がんが増殖してきている兆候であることが多いです。

治療に、なんらかの工夫を付け加えないといけないサインと、言えるかもしれません。

例えば、卵巣がんの事例になりますが、以下のような事例があります。

60歳代の女性

卵巣がんの手術後に、CA125が上昇してくる。

画像上でも、リンパ節に再発した疑いとなる。

しかし、漢方を内服し、腫瘍マーカーは再び下がり、がんの増大は抑えられる。

 

ちなみに、この方に飲んでいただいたのは、大青葉・山豆根という漢方です。

このように、腫瘍マーカーが上昇したときには、漢方は非常に重要な役目を果たします。

これは、乳がんにも言えることです。

腫瘍マーカーが上昇する兆候がある時には、なるべく早くがんを抑えるアクションを取るべきです。

そのためにすべきことの1つが漢方を取り入れることです。

具体的にすべきことは、こちらで学ぶことができます。

 

 

 

 

 

 

参考文献

国立がん研究センター がん情報サービス 腫瘍マーカー
http://ganjoho.jp/public/dia_tre/diagnosis/tumor_marker.html
独立行政法人 国立病院機構 大阪医療センター 腫瘍マーカー(臨床検査科) 1.腫瘍マーカーとは
http://www.onh.go.jp/seisaku/cancer/kakusyu/syuyo.html
広島区医師会 平成24年4月15日発行 広島市医師会だより (第552号 付録)
腫瘍マーカーの測定~その臨床的意義と効率的活用法~
http://labo.city.hiroshima.med.or.jp/wp-content/uploads/2013/12/center201204-04.pdf
東邦大学医療センター 大橋病院 婦人科 絨毛性疾患について
http://www.lab.toho-u.ac.jp/med/ohashi/gyne/patient/detail/chorionic.html
公益社団法人 日本産科婦人科学会 日産婦誌59巻11号
http://www.jsog.or.jp/PDF/59/5911-672.pdf
順天堂大学医学部付属順天堂医院 がん治療センター 患者さんへ
https://www.juntendo.ac.jp/hospital/clinic/cancer/patient/program/answer/kouza_05_2_2.html
東都文京病院 腫瘍マーカー
https://www.tohtobunkyo-hp.com/%E4%BA%BA%E9%96%93%E3%83%89%E3%83%83%E3%82%AF-%E5%81%A5%E8%A8%BA%E3%81%AE%E3%81%94%E6%A1%88%E5%86%85/%E8%85%AB%E7%98%8D%E3%83%9E%E3%83%BC%E3%82%AB%E3%83%BC/
日本衛生検査所境界 検査項目と疾患(5) CEA
http://www.jrcla.or.jp/atoz/rexm/rexm_05_07.html
同上 腫瘍マーカーの検査について
http://www.jrcla.or.jp/kensanohanashi/img/h26_11.pdf
友仁 山崎病院 腫瘍マーカー検査について
https://www.yujin-yamazaki.co.jp/dock/marker.html
日本臨床検査医学会 臨床検査のガイドライン JSLM2005/2006 腫瘍マーカーの見方
https://www.jslm.org/books/guideline/05_06/298.pdf
同上 臨床検査のガイドライン JSLM2012 腫瘍マーカー検査
http://jslm.info/GL2012/00-1.pdf

参考:『乳がん 受診から診断、治療、経過観察への流れ』国立がん研究センターがん報サービス

参考:日本乳癌学会乳がん診療ガイドライン

執筆医師:加藤隆佑


癌治療認定医
内科学会認定医
消化器病学会専門医・指導医
消化器内視鏡学会専門医
肝臓専門医・指導医
札幌禎心会病院がん化学療法センター長

(2021年9月までは、小樽協会病院消化器内科に所属)

消化器領域のがん(食道、胃、すい臓、肝臓、胆のう、大腸)を専門としつつ、がん全般についてアドバイスをしています。

緑書房より「抗がん剤治療を受けるときに読む本」「大腸がんと告知されたときに読む本」「がんと向き合うために大切なこと」を出版。

加藤隆佑医師の論文

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