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がんの家族に1日でも長く生きてもらうためには、どうしたらよいのか?

 2022/10/31 心のケア  

こんにちは。がん治療を専門に、総合病院で勤務医をしている加藤隆佑です。

今日は「がんの家族に1日でも長く生きてもらうためには、どうしたらよいのか?」というテーマです。

このテーマを選んだ理由は、以前私の本を読んだ読者の方から相談があったことにあります。

相談の内容は以下の通りです。

・・・・・

家族で体が弱ってきてたが、治療は抗がん剤といわれた。体力はなくなり、抗がん剤治療をうけるべきなのか悩んでいる。

さらに体力が消耗しないか?不安。

しかし、少しでも、長く生きてほしい。

・・・・・・

このようなご相談を受け、多くの方が同様の悩みを抱えていることに気づきました。この相談内容から、解決の糸口を見つけるためには多くの要素が考慮されるべきです。

本日は、「1日でも長く生きるためにはどうしたらよいのか?」という視点から掘り下げていきます。

「1日でも長く生きてもらう」ためには、具体的にどのような行動を取るべきでしょうか?

「病院から提供される治療をうけること」と考えたならば、50点の解答です。

この問いに答えるためには、長生きするための原則に立ち戻る必要があります。

その原則とは、「苦しみを和らげ、そしてなくすことにつながる行為が、長生きにつながる」というものです。

たとえば、家族がそばにいてあげる、体をさすってあげることは、苦しみを和らげ長生きにつながります。

がん患者さんの痛みを取り除き、さらに精神的なカウンセリングを受けると、それだけで長生きするというデータも出ています。

体や精神的な苦しみを和らげることにつながる行為は、「長生き」にとって大切です。

がんが広がりすぎて、手術や抗がん剤をうけれない段階だったとしても、

・家族の方が、話をきいてあげる
・マッサージをしてあげる

その結果、苦しみが少しでも和らぐならば、それは長生きにつながるわけです。

長生きのためには、病院から受ける治療がすべてではないのです。

「苦しみを和らげ、そして無くすことに繫がる行為が、長生きにつながる」という考え方は抗がん剤にも応用できます。

抗がん剤治療を受けて、苦しみが無くなっていけば、そのまま抗がん剤治療を受ければよいです。

しかし、ぐったりして苦しみがふえるようであれば、抗がん剤をやめること、もしくは副作用対策の強化してもらうことも、考えないといけません。

抗がん剤治療を受けようとしても、体力的に難しければ、苦しみが増えることが強く予想されるので、抗がん剤を使いません。

抗がん剤治療は受けてみないと、どうなるかが分からない代物です。

従って、抗がん剤治療を受けると決断した場合には、苦しみが強くなってこないか、慎重に観察してもらわないといけません。

傾聴を優先し、アドバイスをしすぎない

先ほど記載しましたように、ご家族にしてほしいことは、最優先にしていただきたいことは、話を聞いてあげることです。

「このサプリメントを飲むといいかもよ」「お酒は飲まない方が良い」というアドバイス的なことをする前に、治療を受けている人の話を聞いてほしいのです。

ご家族がアドバイス的なことばかり言ってしまい、話を聞いてもらう時間がないと、逆に心を閉ざしてしまうことも懸念されます。

話を聞いてあげる意義は、治療を受けている人の心の重荷を吐き出してもらうことにあります。したがって、話を聞くときには、うなずきながら丁寧に聞いてあげてください。

「そう思ったんだね」「つらいんだね」程度の言葉を返すだけでも大丈夫です。

何かアドバイスをしないといけないと思われる人もいますが、アドバイスは必要ありません。

たとえば、「治療を受けるのだから、そんなことはやめておいたほうがいい」と言ったよう良し悪しを判断するような発言は避けてほしいです。聞くことに徹することが大事です。

アドバイス的なことは、本人からの求めがあった時、もしくは、たまにするくらいの程度にした方が良いです。

本日のまとめ

現在受けている治療や、行われているサポートが、がんの方の苦しみをやわらげることにつながっていますか?

そのことをたまに振り返ることが、大切な方が長生きにつながる一歩です。

残念ながら、多くの病院でやられている治療は、がんの方の苦しみに焦点が向いていません。

「教科書に書かれていることを提供することが治療」であり、それ以外は、二の次という風潮です。

本来は、苦しみをとることが一番大切なことであり、抗がん剤はそれを支援するための手段の一つにすぎないのです。

そして、ご家族の方には、話を聞くことや、日常が楽しい時間になるような工夫に、力を入れていただけると幸いです。

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