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HER2陽性の乳がんが、実はHER陽性でないことがある。その理由を医師が解説

 2021/01/19 乳がん  

こんにちは。加藤隆佑と申します。がん治療を専門に総合病院で勤務しています。

本日は、HER2陽性の乳癌の抗がん剤治療で、転移した部分から生検することの大切さのお話です。

乳癌の転移が疑われる場合は、転移疑いの病変を生検することが推奨されています。

なぜならば、転移と思っていた病変が、良性疾患の可能性と、他の悪性疾患の可能性があるからです。

生検すると、良性であることが2.5%、他のがんであることが0.8%の割合で起こりうるというデータもあります。

また、もともとHER2陽性なのが、それまでに使用していた抗がん剤の影響で、転移した部分は陰性になることもあります。

ただし、生検しにくい場合は、無理をすべきではないので、HER2陽性の乳がんに準じた治療をしていくことになるのでしょう。

さて、私の事例なのですが、もともとはHER2陽性の乳がんだったのですが、肝臓に転移してきたので、生検をしたところ、その結果は、HER2は陰性でした。

そのようなことは、10%の頻度で起きる事は知っていたのですが、頻度は低いために大丈夫だろうと思って検査をしたのですが、結果は、その10%に該当していたのです。

今回のケースを通して、改めて、転移した部分からは、一度は生検することが大切であると感じました。

ちなみに、ガイドラインでも以下のような記載があります。

以前は,HER2発現状況は原発巣と転移巣の間で大きな差がなく,再発乳癌においても原発巣での検索で代用可能と考えられてきたが,近年,10~24%程度の症例で,原発巣と転移巣でHER2発現状況が異なることが報告された。

したがって,治療法選択上,転移・再発巣でも可能な限りHER2検査を行うべきである。

引用:乳がん診療ガイドライン

もちろん、生検する必要が全くない場合もあります。そのあたりは、専門的な知識を加味して判断しないといけません。

執筆医師:加藤隆佑


癌治療認定医
内科学会認定医
消化器病学会専門医・指導医
消化器内視鏡学会専門医
肝臓専門医・指導医
札幌禎心会病院がん化学療法センター長

(2021年9月までは、小樽協会病院消化器内科に所属)

消化器領域のがん(食道、胃、すい臓、肝臓、胆のう、大腸)を専門としつつ、がん全般についてアドバイスをしています。

緑書房より「抗がん剤治療を受けるときに読む本」「大腸がんと告知されたときに読む本」「がんと向き合うために大切なこと」を出版。

加藤隆佑医師の論文

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