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がん治療中の便秘の対処法を医師が解説

 2023/01/04 漢方  

こんにちは。加藤隆佑です。がん治療を専門に総合病院で医師をしています。

本日は、便秘の治療法について解説いたします。

がん治療中に、便秘になることがあります。

便秘が悪化すると、「腹部不快感、痛み、非常に強い便秘の場合は、腸閉塞」といったことが生じる可能性が出ます。

本来であれば、便とともに外に排出されるべきものが排出されなくなる結果、抗がん剤の副作用がひどくなる可能性も、0ではないと思われます。

したがって、便通を普段から、よくする工夫をしていかないといけません。

例えば、以下のようなことを習慣づけることが大事です。

・便意を覚えたら、そのタイミングで必ずトイレに行くようにする

・1日2回程度、食後30分を目安に、5分間は便意があってもなくても必ずトイレに行くようにする。

・朝、トイレに行けない場合には、1日のうち時間に急かされる事なく、ゆっくりした気分で5分でも10分でもトイレにこもれる環境ができる時間帯を作る。

・便座に座ったら、最も力が入りやすい前方35度の前傾姿勢を意識する。

一方で、病院の薬もうまく利用しないといけない場面も多いです。

ただ、便秘の薬物療法は、非常に奥が深いです。便秘の治療をしっかりとできる医師は、実はあまり多くはないという現状もあります。

理由は、

・便秘に対する薬のトレーニングをしっかりと受けている方は、少ない
・西洋の薬だけでは限界があり、漢方の知識も必要不可欠

ということが、挙げられます。

そこで、本日は、便秘の薬物療法について、知ってほしいことを書きます。

便秘の薬への考え方は、医師によってだいぶ異なります。私は20年近く便秘の治療にもかなり力をいれてきましたので、そのエッセンスをお伝えします。

便秘の薬は、非常にたくさんあるので、この記事を読んで、主治医に、「〇〇という便秘薬を処方してもらうことはできませんか?」とお願いしても良いでしょう。

便秘の薬の大原則

原則1、

使ってみないと効果はわからない。したがって、試行錯誤が大事

原則2、

どんな便秘の薬でも、ひどい下痢になる可能性はある。恐る恐る用いて、ひどい下痢になったら、量を減らすか、止めること。

原則3、

センノシド、ピコスルファートを、使いすぎない。

刺激性の下剤です。効果はありますが、長期的に使うことによる弊害はあります。

いろんな便秘の薬剤を試しても、うまく便通をコントロールできないときに、必要最低限の範囲で用いると良いです。

次に、どんな薬を用いたら良いかに関してです。

酸化マグネシウム

便秘といったら、ひとまず、この薬剤を試すことは、非常に良い選択肢です。

この薬が効かなかったという方がいらっしゃいますが、飲んでいる量が足りないということもあります。1日2グラムくらいの量までトライして、効果があるかを試しましょう。

この薬を飲むときには、水分を多めに取ることも大事です。

以上の方法で、効果が十分ではない場合

1、グリセリン浣腸120cc

便秘時、もしくは、連日用います。

浣腸ができない場合は、レシカルボン座薬で代用はできますが、浣腸の方がより効果的です。

浣腸は手間がかかりますが、確実性や安全性も高い治療法です。

ただし、浣腸のカテーテルを5cm以上は入れないことと、立位で浣腸をしないことが重要です。

浣腸を提案すると、「もっと他にもいろんな飲む便秘薬があるでしょ?」と言われることもありますが、浣腸は体への負担も考慮しても、実は、優先順位の高い方法です。

2、大建中湯を追加

浣腸の代わりに、この漢方を試みても良いでしょう。

麻子仁丸や、潤腸湯という漢方にすることもあります。

以上の方法でも、なかなか良くならない場合

さらに、試行錯誤を繰り返して、体に合う薬を見つけないといけません。

・西洋医学の薬
アミティーザ、グーフィス、リンゼス、モビコールLD、ラクツロースラグノス(NF経口ゼリー)

・漢方
大黄甘草湯

「排便があれば、どんな薬でも許容される」と考えて、即効性のある「センノシド、ピコスルファート」「アミティーザ、グーフィス、リンゼス、大黄甘草湯」が安易に処方される
ことも多いです。

しかし、長期的に服用することになることも多いので、体への負担も考えて手順を踏んで、便秘の薬を処方するのが大事であると、私は考えています。

例外として、モビコールは体への負担が少なく、長期間飲んでいても安全とされています。

ラクツロースラグノスも体への負担は少ないです。

あとは、便秘体操も取り入れると良いです。

最後に、整腸剤に関して、質問を受けることが多いです。

整腸剤も有効なことがあります。ただ、どのような整腸剤が良いかは、人によって異なります。

例えば、酪酸菌の整腸剤は、効果を実感できなかったけど、乳酸菌の整腸剤は良かったという方もいます。

人によって、求められる菌が違うということなのでしょう。

一方で、腸内細菌のエサになるようなサプリは、非常に良いです。万能とも言えます。

直腸がんの手術後の排便異常に関しては、こちらの記事をご参照ください。

執筆医師:加藤隆佑


癌治療認定医
内科学会認定医
消化器病学会専門医・指導医
消化器内視鏡学会専門医
肝臓専門医・指導医
札幌禎心会病院がん化学療法センター長

(2021年9月までは、小樽協会病院消化器内科に所属)

消化器領域のがん(食道、胃、すい臓、肝臓、胆のう、大腸)を専門としつつ、がん全般についてアドバイスをしています。

緑書房より「抗がん剤治療を受けるときに読む本」「大腸がんと告知されたときに読む本」「がんと向き合うために大切なこと」を出版。

加藤隆佑医師の論文

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