リムパーザ(オラパリブ)の効果と、吐き気という副作用を取り除く方法を医師が解説
こんにちは。加藤隆佑です。
本日は、卵巣がんや、乳がんで用いられることが多いです。
本日は、リムパーサの代表的な副作用である、吐き気を取り除く方法と、リムパーザの効果について、解説します。
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リムパーサ(オラパリブ)の効果とは?
卵巣がんや、遺伝子の乳がんを抑えるのに、有効な薬です。
飲み薬になります。
注意点として、この薬の内服期間中は、グレープフルーツやセイヨウオトギリソウを含む食品は摂取してはいけません。
血液中のリムパーサの濃度に、影響を与えるからです。
リムパーザの副作用とは?
吐き気や下痢、貧血、疲労感です。
それ以外の副作用としては、下痢、食欲減退、無力症、味覚異常などが報告されています。
さて、一番頻度の多い副作用は、吐き気です。
飲み始めたばかりのときに、吐き気は起きやすいとされています。
1から3ヶ月くらいすると、次第に吐き気は治まってくるケースが多いです。
したがって、飲み始めの時期の吐き気を、しっかりと制御することが、大切です。以下のようなお薬が有効です。
- 精神の不安を和らげる薬である、ノバミンやロラゼパム
- ナウゼリン、プリンペラン、ドラマミン
- 六君子湯という漢方
以上のような薬を用いて、吐き気をしっかりとることが、非常に大切です。
吐き気は食事摂取量を減らし、体力の低下につながります。そのことだけは、絶対に避けないといけません。
万が一、薬を用いても、なかなか吐き気が落ち着かないかもしれません。
そんな時も、先ほど記載した通り、複数の吐き気どめの薬があるので、複数の吐き気どめの薬を試して、あなたにあった薬を見つけて欲しいです。
初めの1から3ヶ月を乗り切れれば、かなり楽に治療を受けられます。
リムパーザによる骨髄抑制も次第に回復する。
リムパーザにより、骨髄の機能が低下し、白血球(好中球)、赤血球、そして血小板が減ることがあります。
この副作用も、内服を続けるうちに、改善していくことが多いです。
リムパーザと似た薬であるゼジューラカプセルを例にとりますと、以下のような感じになります。
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グレード3以上の血小板減少症の発現率は、最初の1年が33.8%であったのが、2年目以降になると2.8%になる。
貧血の発現率も25.6%から0.7%、好中球減少症の発現率も19.3%から2.1%になる。
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リムパーザが原因で白血病になることがある。
リムパーザの副作用で、一番の問題は白血病です。
約0.8%の頻度で、白血病や骨髄異型症候群とったような、血液を作る部位のがんになることが、判明しています。
リムパーザの兄弟分的な薬で、ゼジューラカプセルというお薬がありますが、こちらのお薬も、約1.4%の頻度で白血病を発症することが判明しています。
頻度は低い副作用ではありますが、定期的に採血の検査をして、白血病になっていないかを確認しないといけません。
どのような乳がんに、リムパーザは効果がある?
遺伝性の乳がんに対して、効果があります。
がんの成長を制御できる期間は、リムパーザの場合は、約7.0か月とされています。
リムパーザ以外の抗がん剤を用いた場合は、がんの成長を制御できる期間は約4.2か月でした。
つまり他の抗がん剤に比べると、リムパーザは効果がより良いということになります。
どのような卵巣がんに、リムパーザは効果がある?
すべての卵巣がんの方に、リムパーザを用いることができるわけではありません。
以下のうちの、どちらかの条件を満たす方に、投与できます。
条件1、「再発した卵巣がん」(初発の卵巣がんではないという事)に対して、カルボプラチンやシスプラチンといった薬を用いて治療をして、非常によく効いた方
再発した卵巣がんに対して、カルボプラチンやシスプラチンといった薬を用いて、卵巣がんを、かなり小さくさせることができた場合に、リムパーザを用いることができるということです。
卵巣がんを、小さくさせたのちに、リムパーザを用いると、以下のことが期待できます。
小さくなった卵巣がんを、長期間にわたって、小さい状態のままにする。
リムパーザを服用した方のうち、約10%の方は、とてつもない効果がでることがあります。
何年にもわたって卵巣がんを制御できるのです。
一方で、がんを制御できる期間の中央値は、約8.4ヶ月です。
条件2、BRCA という遺伝子変異がある、「初発の卵巣がん」の方で、カルボプラチンやシスプラチンを用いた治療が、非常によく効いた方
「BRCA という遺伝子変異がある卵巣がんの方が、カルボプラチンやシスプラチンなどによる治療を受けて、卵巣がんを、かなり小さくさせることができた場合」に、リムパーザを用いることができるということです。
この場合においては、60%以上の方は3年以上にわたって、がんの増殖を制御できます。
BRCA という遺伝子変異がない、「初発の卵巣がん」の場合は、リムパーザと似たお薬である、ゼジューラカプセルという薬を用いることになります。
条件3、相同組換え修復欠損(HRD)がある、「初発の卵巣がん」の方で、「アバスチン+カルボプラチン+パクリタキセル」による治療が、非常によく効いた方
その場合は、卵巣がんが再び大きくならないように、「アバスチン+リムパーザ」による治療が推奨されます。
卵巣がんの約50%の方は、相同組換え修復欠損を持っていると言われています。
相同組換え修復欠損(HRD)がある、「再発の卵巣がん」の場合は、リムパーザと似たお薬である、ゼジューラカプセルという薬を用いることになります。
結論として、今後は、「小さくなった卵巣がんを、長期間にわたって、小さい状態のままにする治療」は、以下のどちらかが選択されることが多くなるでしょう。
- ゼジューラカプセル
- アバスチン+リムパーザ
BRCA遺伝子の検査は、どのような検査?
7ccくらいの血液でBRCAという遺伝子変異があるかどうかは分かります。結果がでるのに3週ほどかかります。
そしてBRCA遺伝子変異があれば、遺伝性卵巣がんということになります。血縁の方も、卵巣がんや乳がんになりやすい可能性がでてきます。
補足事項となりますが、遺伝性卵巣がんの頻度は、以下の通りです。
- BRCA1という遺伝子に変異のある遺伝性の卵巣がん:約8%
- BRCA2という遺伝子に変異のある遺伝性の卵巣がん:約3.5%
- BRCA以外の遺伝子に変異のある遺伝性の卵巣がん:約6%
また以下のようなデータもあります。
- 漿液性腺がんというタイプの卵巣癌:28.5%の方にBRCA遺伝子に変異あり
- 明細胞腺がんというタイプの卵巣癌:2%の方にBRCA遺伝子に変異あり
- 類内膜腺がんというタイプの卵巣癌:6.7%の方にBRCA遺伝子に変異あり
- 粘液性腺がんというタイプの卵巣癌:0%の方にBRCA遺伝子に変異あり
がんになりやすい遺伝子が、子供に遺伝してしまった時の心構えは、こちらで解説しています。
文献:NEWLY DIAGNOSED AND RELAPSED EPITHELIAL OVARIAN CARCINOMA: ESMO CLINICAL PRACTICE GUIDELINES2019].