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モルヒネの副作用に悩まされず痛みを除く!便秘、吐き気への対処法を医師が解説

 2021/01/20 がんによる痛み  

こんにちは。加藤隆佑です。

がんによる痛みを、もっと取り除くことはできます。

そのために、適切にモルヒネを適切に用いることが大切です。

モルヒネとは何?

モルヒネは、ケシを材料にして作られる化合物です。医療用麻薬に分類され、痛み止めとして用いられます。

モルヒネと類似した薬として、以下のような薬があります。

  • オキシコドン
  • フェンタニル

どれもが、医療用麻薬に分類されます。

「麻薬」と聞くと、覚せい剤のような怖い薬物と誤解されるかもしれません。しかし、「医療用麻薬」と「不正麻薬・覚せい剤」は、全く違います。

適正に用いれば、依存性や中毒になることは、ありません。

痛みがよくなれば、やめることもできます。

余談ですが、最近は、モルヒネを用いることは減りました。

モルヒネと兄弟的な薬であるオキシコンチンやフェントステープを用いる頻度が高いです。

モルヒネに対するよくある誤解をなくしましょう。

モルヒネといった医療用麻薬は、末期のがんに用いるのか?

がんによる痛みが、通常の痛み止めで十分にとれないときに、モルヒネを持ちます。

痛みがとれないことと、末期は関係ありません。

比較的初期のがんであっても、モルヒネを使わないと痛みがとれないことはあります。

痛みを我慢することは、逆に寿命を短くすることにつながります。したがって、医学的適応があれば、がんの病状の進行具合にかかわらず、躊躇なくモルヒネを用います。

そして、痛みを取り除き、がんになる前と同じような生活をできるようにします。

モルヒネといった医療用麻薬に依存性はあるのか?

痛みを抑えるために、用いるときには、依存性はありません。

逆に快楽を求めて用いると、依存性があります。

どのような用途で用いるかさえ間違えなければ大丈夫です。

モルヒネといった医療用麻薬は、痛いときには、どれだけ飲んでも良いか?

モルヒネといった医療用麻薬には、定期的に飲む製剤と、痛いときに飲む頓服用の製剤があります。

たとえば、以下のような感じです。

「オキシコンチンは12時間ごとに飲む。痛いときには頓服の痛みとしてオキノームを飲む。

それでは、痛いときには、頓服の痛み止めを、どれだけでも飲んで良いのでしょうか?」

また、ある医師からは「医療用麻薬を飲み過ぎないように」、別の医師からは、「痛かったら我慢せずに飲みなさい」と言われ混乱することがあります。その結果、患者さんは混乱することがあります。

ここでは、この2点をしっかり理解してもらえるように、解説します。

痛みがあるのでれば、頓服の痛み止めをどんどん用いて良いです。

たとえば、オキノームという痛み止めならば、飲んでから1時間しても、強い痛みが続くなら、追加で1包飲みます。さらに1時間しても、痛みが続くならば、さらに1包飲みます。

しかし、医療用麻薬の必要量を大きく超えて使用すると、副作用が前面に出てしまいます。

したがって、痛みが落ち着いているときは、頓服の医療用麻薬は飲まずに、定期の医療用麻薬のみを飲むようにします。

これが、「医療用麻薬を飲み過ぎないように」と「痛かったら我慢せずに飲みなさい」の、一見すると矛盾するような文言の解釈の仕方になります。

モルヒネといった医療用麻薬の副作用は?

代表的な副作用として、吐き気、眠気、便秘が挙げられます。

それらの対処法をお伝えします。

吐き気の対処法

内服を飲みはじめた1週くらいの期間は、吐き気がでることがあります。

しかし、次第に体は慣れて、吐き気に悩まされなくなります。

万が一、吐き気に悩まされるときには、以下の薬を試して欲しいです。

ノバミン、ドラマミン、メトクロプラド、ナウゼリン

しかし、試行錯誤しても、吐き気が取り除けないケースがあります。そのような場合は、他の医療用麻薬に切り替えます。

たとえば、オキシコンチンという医療用麻薬により吐き気がでて、なかなか良くならない場合は、他の医療用麻薬に変更します。

このようなケースにおいては、フェントステープという医療用麻薬は、非常に有効です。フェントステープは、吐き気が出にくいという特徴があるからです。

このような対処をすることにより、大半のケースにおいて吐き気を取り除くことができます

便秘の対処法

モルヒネといった医療用麻薬により、便秘になることが多いです。

便秘に悩まされる場合は、スインプロイクという薬が非常に有効です。

この薬は、医療用麻薬により誘発される便秘に特化した便秘改善の薬です。

また、医療用麻薬の中でも、フェントステープという薬は、便秘がでにくいという特徴があります。

眠気の対処法

内服を飲みはじめた1週くらいの期間は、眠気がでることがあります。

しかし、次第に体は慣れて、眠気に悩まされなくなります。

しかし、中には、眠気が取り除けないケースがあります。そのような場合は、他の医療用麻薬に切り替えます。

たとえば、オキシコンチンという医療用麻薬により眠気がでて、なかなか良くならない場合は、他の医療用麻薬に変更します。

このようなケースにおいては、フェントステープという医療用麻薬は、非常に有効です。フェントステープは、眠気が出にくいという特徴があるからです。

このような対処をすることにより、大半のケースにおいて眠気を取り除くことができます

モルヒネといった医療用麻薬を適切に用いるとどうなるか?

痛みがなくなります。

倦怠感が、とれることもあります。

その結果、毎日の生活に楽しみを持つことができるようになります。

モルヒネは、生きる力を与えてくれることにも、なるでしょう。

だからこそ、モルヒネを怖がらず、うまく利用してください。

ただし、痛み止めを用いても、痛みをうまく取り除けないことが、あります。そのような場合は、医療用麻薬以外の対処法を考えないかもしれません。

痛みで困ったときの対処法は、こちらです。

執筆医師:加藤隆佑


癌治療認定医
内科学会認定医
消化器病学会専門医・指導医
消化器内視鏡学会専門医
肝臓専門医・指導医
札幌禎心会病院がん化学療法センター長

(2021年9月までは、小樽協会病院消化器内科に所属)

消化器領域のがん(食道、胃、すい臓、肝臓、胆のう、大腸)を専門としつつ、がん全般についてアドバイスをしています。

緑書房より「抗がん剤治療を受けるときに読む本」「大腸がんと告知されたときに読む本」「がんと向き合うために大切なこと」を出版。

加藤隆佑医師の論文

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