こんにちは。がん治療専門医の加藤隆佑です。
先日、家族の介護にはコツがあることを知りました。
橋中今日子さんの「がんばらない介護」という本を読んでさまざまな学びました。
特に心に残った言葉は、
「一人で、頑張らなくてもいいですよ」
もし限界になり仕事を辞めるしかないと思った時には
・1回で全てを解決しようとしない
・一人で解決しない
・家族の中だけで解決しない
そこで、学んだことを架空の会話形式でまとめてみました。
(認知症という過程で話を書いていますが、がんの方にも役立つ内容です。)
相談者:山田さん
アドバイザー:清水さん
「認知症かもしれない…どうすれば?」
山田さん:最近、母が同じことを何度も聞いてきたり、財布をどこに置いたか分からなくなったりするんです。認知症じゃないかと心配で…でも、どうしたらいいのか分かりません。
清水さん:お母さまの変化に気づかれたんですね。まず、お医者さんに診てもらうのが第一歩ですが、その前に、山田さんができることがありますよ。
山田さん:家族ができること、ですか?
清水さん:はい。慌てず、お母さまの気持ちに寄り添うことが大切です。そして、早めに介護保険の申請をするのがいいですね。
山田さん:介護保険の申請…どうすればいいんですか?
「まだ介護が必要な状態じゃないですけど」
清水さん:年をとると、さまざまな支障が出てくるものです。
一番軽い「要支援1」が取れるだけでも、困っていることができたらケアマネに相談できますし、デイサービスも利用できて、認知症予防に役立つレクリエーションを受けることもできます。
外出が不安、お風呂に入るのが大変になってきた、食事の時にむせやすいというような症状が出た時には、要支援1がつく可能性があるので、相談してみてください。
介護保険の申請はどこに?
清水さん:「地域包括支援センターに相談すると良いです。」
地域包括支援センターの役割とは?
山田さん:地域包括支援センターって、何をしてくれるんですか?
清水さん:簡単に言うと、介護に関する“何でも相談窓口”です。介護保険の申請手続きの案内や、介護サービスの紹介、家族の負担を軽くする方法の相談もできますよ。
山田さん:そんな相談できる場所があるなんて知りませんでした。
清水さん:意外と知られていないんですが、とても役立つんですよ。例えば、認知症の方の見守りや、家族向けの相談会も行っています。
山田さん:一人で抱え込まずに、相談してもいいんですね。
清水さん:困ったら、ひとまず地域包括支援センターに駆け込むと良いです。
なぜならば、介護に関する“何でも相談窓口”です。ケアマネ、保健師、そして、高齢者の権利擁護に関する相談をする社会福祉士のような専門家がいて、チームで解決をしてくれます。
介護保険の申請手続きの案内や、介護サービスの紹介、家族の負担を軽くする方法の相談もできます。
高齢者の虐待や、自分の判断で財産の管理ができなくなった時の相談にも乗ってくれます。
山田さん:ところで、認定を受けるためには、認定調査を受けないといけないんですよね。そのときに注意点はあるんですか?
清水さん:たとえば、認定調査の人がきたときに、お母さんの調子が非常によかったから、実態が伝わりません。
そこで、日々の記録・粗相をした時の写真・騒いでいる時の動画・廊下に落ちている排泄物の写真を見せると良いです。
そして、“要支援”か“要介護”の区分が決まります。それによって受けられるサービスが変わるんです。ただ、認定までには1ヶ月から1ヶ月半かかります。
どんなサービスが受けられる?
山田さん:具体的に、どんなサービスがあるんですか?
清水さん:例えば、“要支援”なら、デイサービスで運動やレクリエーションができます。“要介護”なら、訪問介護でヘルパーさんが来てくれたり、ショートステイを利用したりもできます。
山田さん:なるほど。でも、どのサービスを選べばいいのか分かりません…。
清水さん:そのために、ケアマネージャーがいます。介護認定を受けたら、ケアマネージャーが、必要なサービスを組み合わせたケアプランを作ってくれるんです。
ケアマネが誰になるかでだいぶ違うと聞いたこともあるけど
清水さん:居宅介護支援事業所にケアマネはいますが、介護認定の結果通知に同封されるリストや、地域包括支援センターに相談して事業所を選びます。
複数の事業所をあたってみて感触が良いところを選んでほしいです。事業所が近いこと、病院系列もしくは介護施設を運営している事業所は使い勝手が良いことが多いです。
そこで、地域包括支援センターに、「病院付属の事業所はどこですか」や、「施設を持った事業所はどこ」といった質問をしても良いでしょう。
山田さん:事業所が決まったら、ケアプランを作ってもらうのですよね。ケアマネにケアプランを作ってもらうときにコツはありますか?
清水さん:要望を遠慮なく具体的に伝えて、なるべく今までと同じように暮らせるプランを作成してもらいましょう。もし、対応をしっかりしてもらえない時や、サービスを入れても思ったような結果にならないときは、一人で抱え込まずケアマネに相談してください。対応に満足できなければ、ケアマネ・事業所を変更することもできます。
頑張りすぎない介護をするために
清水さん:介護は長期戦です。一人で頑張りすぎると、家族が疲れてしまいます。上手にサービスを活用して、無理なく続けていくのが大切ですよ。
山田さん:母のために頑張らなきゃ、と思っていましたが、頼ることも大事なんですね。
清水さん:はい。それ以外にも
・介護で疲れた、死にたいと思った時は、「もう限界です」「助けてください」「もう疲れた」と単刀直入にS O Sをケアマネに出す
・お風呂に入れるのが大変な時は、訪問入浴介護や、食事や入浴もできるデイサービスを利用
・食事の支度や掃除で困ったときは、家事支援サービスでできる範囲をやってもらいつつ、サービスの範囲外のところは、全額自費になりますが、民間の配食サービスや家事代行サービスを利用
・介護用品の手配〜社会福祉業議会や、民間のレンタルサービス、介護保険を利用して福祉用具の貸与を利用
といったコツもあります。山田さん自身の生活も大切ですから、一緒にできる方法を考えていきましょう。
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学んだことを多くの人に知っていただくために、会話形式にしてみました。、
ちなみに、橋中今日子さんの「がんばらない介護」には、以下のような内容も含まれています。
・施設を利用するのは親不孝?
・介護の大変さ、わかってほしいけどわかってもらえない
・上司から、介護していても、特別扱いはできないよと言われた〜有給休暇で対処すべき?
・時間も気持ちも余裕がない時の対処法
・たびたび休まれるのは困ると言われた時の対処法
・緊急事態が発生したら介護認定の見直しを
・ケアマネが思ったように動いてくれない時の対処法
・もう疲れた、会社辞めたい時の対処法
・介護離職は〇〇のリスクが大きい
・親の介護を兄弟の中でなぜ私だけ?
・老老介護の親の助け方
・経済的なことが心配な時の処方箋
・旦那の親のめんどうをいつまでみないといけないの?〜婚姻関係終了届の活用法
・同居しないといけない?
・私が盗ったなんて、ひどい
・イライラして優しくできない時の対処法
・お父さんがお母さんを殴った時の対処法
・最後まで見届けたかった〜看取りは最後の瞬間に立ち会うことだけを意味しない
・要介護のランクが上がらない時の解決策
・自分の時間を大切にできるようにするために
・夜起こされずに眠りたい時の対処法
・介護を理由に、恋愛や結婚をあきらめてはいけない
・介護で青春が過ぎていく時の対処法
がんのご家族にとっても、参考になることは多いと思います。