こんにちは。がん治療専門医の加藤隆佑です。
今日は最近のがん治療の話題と、新たに使えるようになった期待のできる薬剤のご紹介です。
・ヘルスケアパスポートplus
最近、「ヘルスケアパスポートplus」という新しい仕組みが少しずつ使われるようになっています。
これは、日々の健康状態や検査結果、血圧などの情報を記録し、その変化を医療従事者と共有できる仕組みです。
特に注目されているのが、体調が大きく悪化する前の「小さな変化」に気づくことです。
例えば、血圧や体重、体温などにいつもと違う変化が続いている場合、ヘルスケアパスポートplusを通して、医療従事者が早めに確認することで、体調不良の兆候を早い段階から把握できます。
患者さん自身が「まだ病院に相談するほどではない」と感じている段階でも、日々のデータの変化から医療従事者が気づくことができれば、早めの相談や対応につながります。
こうした「悪化する前に変化を捉える」という考え方は、これからの医療でますます重要になっていくでしょう。
ヘルスケアパスポートplusも、そのような医療を支える仕組みの一つとして、少しずつ活用が広がり始めています。
ここで1つクイズです。
体調が悪化している患者さんを観察するとき、重症化の早期兆候を捉えるうえで、特に重要なサインはどれでしょう?
・血圧
・脈拍
・体温
・呼吸数
答えは、一番最後にあります。
このことを知れば、自宅でも、どのような時に早めに病院に相談したら良いかわかるようになります。
さて、新たに使えるようになった薬をご紹介しますね。
1、イブランスがHER2陽性乳がんにも
イブランスは、これまで主にホルモン受容体陽性・HER2陰性乳がんで使われてきた薬です。
今回、ホルモン受容体陽性かつHER2陽性の乳がんでも、化学療法後の維持療法として使えるようになりました。
抗HER2療法とホルモン療法に、イブランスを加える治療です。
2、エンハーツがHER2陽性乳がんの初回治療に
エンハーツは、HER2を標的とする薬です。
今回、HER2陽性の手術不能または再発乳がんの一次治療で使えるようになりました。
ペルツズマブとエンハーツを組み合わせる治療です。
3、ダトロウェイが乳がん治療に
ダトロウェイは、乳がんに対する新しい抗体薬物複合体です。
これまでは、トリプルネガティブ乳がんに対して用いられていましたが、ホルモン受容体陽性・HER2陰性の手術不能または再発乳がんで、新たな治療選択肢となりました。
4、キイトルーダが再発卵巣がんに
キイトルーダ¥は、免疫チェックポイント阻害薬です。
今回、白金製剤抵抗性の再発卵巣がんに対して、パクリタキセルとベバシズマブとの併用療法が使えるようになりました。
5、テビムブラが頭頸部がんに
テビムブラは、免疫チェックポイント阻害薬です。
再発または遠隔転移を有する上咽頭がんに対して、ゲムシタビンとシスプラチンとの併用療法が新たな選択肢となりました。
今回の変更で、がん治療の選択肢がさらに広がりました。
最近のがん治療の薬剤の発達は早いペースで進んでいます。
引き続き、新しいニュースがあればお伝えしていきますね。
最後に、クイズの正解は「呼吸数」です。
呼吸数は、患者さんの状態が悪化しているときに、血圧などよりも早く変化することがあります。
特に、1分間に24回以上の頻呼吸がみられる場合は、感染症や肺・心臓の異常など、全身状態が悪化している可能性を考えるきっかけになります。
例えば、熱が39度になり、呼吸数も25回になっている場合には、体調が悪化している可能性があるため、早めに病院へ相談することをおすすめします。
呼吸数は、ご自宅でも簡単に測定できますので、日頃の体調管理の一つとして、ぜひ参考にしてみてください。
もちろん、呼吸数が普段と変わらないからといって、必ずしも大丈夫というわけではありません。一方で、呼吸数が普段より増えているとき、とくに24回以上になっている場合には、体調の変化により厳重に注意することが大切ということです。