若年層(50 歳以下)におけるがんの患者数が増えているという報告
こんにちは。加藤隆佑です。がん治療を専門に総合病院で医師として勤務しています。
先日、世界において、若年層(50 歳以下)におけるがんの患者数が増えているという報告がありました。
今日は、この問題について解説いたします。
若年層のがんの特徴にはいくつかあり、そのうちの一つは、治癒したとしても、その後、様々な問題を抱えるリスクが高くなることです。
例えば、不妊症、心血管疾患、二次がんといった問題です。
なぜ、この世代における、がんの患者数は増えているのか?
若年層(50 歳以下)におけるがんの患者数が増えている要因は、以下の通りです。
1、アルコール摂取量の増加
1960年代と比較するとアルコール消費量の増加。女性におけるアルコール消費量も増加。
2、抗生物資を投与される機会の増加
3、社会生活の変化
運動量低下、初産平均年齢の高齢化、出生率の低下、経口避妊薬の使用率の増加、母乳の代わりに人工ミルクの使用の増加、西洋風の食事の増加
4、喫煙率の増加
5、肥満の増加、糖尿病の増加
子供の頃より、以上の要因に暴露されることにより、若年層(50 歳以下)のがんが増えているのです。
このことをまとめたのが、以下の図です。
「Is early-onset cancer an emerging global epidemic? Current evidence and future implications」という論文より画像を引用
どのようながんが、増えているのか?
乳がん、大腸がん、子宮がん、食道がん、頭頸部がん、腎臓がん、肝臓がん、骨髄腫、膵臓がん、胃がんの増加が、認められています。
ちなみに、若年者のがんの中には、ウイルス感染が関与する場合もあります。
・肝臓がん〜B型肝炎ウイルスなど
・頭頸部がん、子宮頸がん〜パピローマウイルス
・胃がん〜ピロリ菌感染
遺伝的な要因が関わることもあります。
がんを減らしていくために必要なこと
正しい食事やライフスタイルの教育、がんの危険因子の除去(ウイルス除去など)をするだけでも、かなりのがんの患者数を減らせることが期待できます。
そして、そのようなことを、世界中の子供、そしてその親の世代に知ってもらうことが必要です。
そうすれば、若年層のがんの罹患率を減らせますし、50歳以上のがんの罹患率も減らせることでしょう。
参考論文
Is early-onset cancer an emerging global epidemic? Current evidence and future implications
Nature Reviews Clinical Oncology volume 19, pages 656–673 (2022)