お薬を減らしたら、治療効果が落ちるのでは?…そう思っていませんか?

こんにちは。がん治療専門医の加藤隆佑です。

「抗がん剤は、決められた通りのスケジュールでしっかり飲まないと、効果がなくなってしまうのでは…」

そう心配されている方は、少なくありません。

でも、実際の現場では、副作用がつらくて、予定どおりに飲めない方もたくさんいらっしゃいます。

そんな中、「お薬の量や頻度を減らしても、治療効果が落ちないかもしれない」ことを示した研究が、少しずつ増えてきています。

乳がんのお薬・イブランス(パルボシクリブ)

本来は「21日間内服して、7日間休む」というスケジュールですが、

「5日飲んで2日休む」という形で飲んでも、治療効果は変わらず、副作用は少なくなるかもしれないという臨床試験があります。

論文はこちら(Nature誌)

さらに、「2週飲んで、2週休む」スタイルでも、効果を保ちながら、副作用をやわらげられそうだという報告もあります。

PubMed掲載論文

肺がんのお薬・タグリッソ(オシメルチニブ)

通常は毎日服用するお薬ですが、隔日や週1回に減らしても、効果を保てる可能性が示された研究があります。

しかも、副作用も減る傾向にあるという結果でした。

 臨床研究はこちら

膵がんのS-1(エスワン)

膵がんの二次治療として、S-1を「毎日」飲むのではなく、「隔日」で飲んだらどうなるか?という臨床研究があります。

生存期間(OS)の中央値は、
毎日飲む場合:4.5ヶ月
隔日で飲む場合:4.4ヶ月(差はほとんどなし)

一方で、副作用(Grade 3以上)は、
毎日群:47.2%
隔日群:25.6%(副作用が有意に軽減)

この結果から、治療効果は保ちつつ、副作用を減らす可能性があることが示されました。

ただし、症例数が少なかったために、統計的には「効果が同じ」と断定するには至っていません。

PubMed掲載の研究

治療の工夫で、心も体もラクに

このように、「お薬を少し減らしたり、休薬日を増やしても、効果が落ちない」という研究は少しずつ増えてきています。

そして、これは私が日々の診療で実感していることとも、ぴったり一致します。

ただし、注意が必要な薬もあります

「どんな薬でも減らして大丈夫」というわけではありません。

例えばGIST(消化管間質腫瘍)などに使うイマチニブは、休薬や減量によって耐性ができやすくなることが知られています。

でも、私の経験と調査では、こうした薬はむしろ非常に少数派です。

そして、「量を調整しながら無理なく続ける」ことのほうが大切だと私は考えています。

まとめに

治療をがんばるのは、とても大変なことです。

体調や副作用がつらいとき、「休んだら効果がなくなるんじゃないか」と不安になるのも当然です。

でも、お薬を少し工夫することで、副作用を減らしながら、しっかり効果を出していける。

そんな希望のあるデータが、たくさん出てきています。

さらに、漢方や食事の工夫で治療効果を上げていくことも可能です。

私は、あなたの体調・生活に合わせて、最適な治療ができるように、一緒に考えていきたいと思っています。

このような「治療をラクに続けるための工夫」はこちらで解説しています。