こんにちは。がん治療専門医の加藤隆佑です。
がんの治療、とくに化学療法を受けていると、つらい副作用のひとつが「口内炎」や「食欲不振」です。
「食べたい気持ちはあるのに、痛くて食べられない…」
「口の中がしみて、水さえもつらい…」
そういった声を多くの患者さんから聞きます。
最近、あるシンプルな方法で、この副作用を軽減できることが、医学研究でも確認されてきました。
それが、口腔内冷却療法です。
どんな方法?
やり方はとてもシンプルです。
抗がん剤の点滴中に、氷を口に含んでおくだけです。
冷たい氷を口に含むことで、口の中の血流が一時的に少なくなり、抗がん剤が口腔内に届きにくくなります。その結果、粘膜がダメージを受けにくくなり、口内炎の発症を減らせるというわけです。
特に、作用時間の短い抗がん剤(例:5-FUなど)を使うときに効果が高いと報告されています。
研究でも効果が実証
海外の研究(2021年発表)では、14の臨床試験を調査したところ、口腔内冷却療法を行った患者さんは、口内炎の発症が明らかに少なかったという結果が出ました。
また、食欲不振の軽減にも効果があったとされています。
副作用はほとんどなく、誰でもすぐに取り入れられる方法です。ただし、冷たいものが苦手な方や、冷感で気分が悪くなる方は無理はしないでください。
実践のポイント
・清潔な氷を使う(感染予防)
・抗がん剤の点滴が始まる少し前から含む
つらい副作用を少しでも軽くし、食べる喜びや生活の質を守るために、ぜひ主治医と相談して取り入れてみてください。
追記)すべての抗がん剤で、この方法が役に立つわけではありません。
しかし、もし口内炎に悩まされたり、口内炎に起因する味覚障害に少しでも悩まされた時には、この方法を試すと良いでしょう。
それ以外にも、口内炎をよくする方法はこちらで解説しています。
参考論文