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乳がんのホルモン療法の副作用を医師が解説!楽に治療をうけよう。

 2021/01/20 乳がん 副作用対策コラム  

こんにちは。加藤隆佑とです。

本日は、乳がんの治療に用いられるホルモン療法の副作用と、その解決策についてお伝えします。

ホルモン療法は、再発抑制に役立ち、再発の危険性を約50%低下させるとも言われています。

しかし、内服が年単位に及ぶことがあります。さらに、副作用に悩まされ方も多いです。

例えば、頭痛、関節痛、吐き気、眠気、ホットフラッシュといった症状です。そして、5年間で38%の患者さんが、副作用のために一時的もしくはずっとホルモン療法を中断しないといけないことが生じていたという報告もあるくらいです。

参考文献:Adherence to adjuvant endocrine therapy in postmenopausal breast cancer patients: A 5-year prospective study

したがって、適切な副作用の管理をしないといけません。適切な対応をしたら、楽に治療を受けられることが多いです。

ホルモン療法による骨粗鬆症

注意しないといけない副作用が、いくつかあります。

ホルモン療法で用いられるタモキシフェンに関しては、骨粗鬆症の心配はいりません。

むしろ骨粗鬆症を抑える方向に働きます。

しかし、閉経前の乳がんの方に用いるゾラデックスやリュープリンという薬や、アリミデックス、アロマシン、フェマーラは、女性ホルモンの低下させます。

その結果、骨粗鬆症が出やすくなります。

さて、骨粗鬆症の診断は、骨密度を調べます。

骨に含まれるカルシウム量 が、標準的な数値の70%以下になると骨粗鬆症と判定されます。

骨粗鬆症は、甘くてみてはいけません。少しの力が加わっただけで、骨折してしまうこともあることです。骨折すると、日常生活を快適に過ごすことができません。

だからこそ、ホルモン療法をしているときは、骨密度を6ヶ月から1年に1回くらいの割合で定期的にチェックすることが必要です。

安心してほしい点としては、急激に著しく骨量が低下するわけではありません。通常の人の年齢に伴う骨量の低下に比べると、少し減り方が大きいという感じです。

骨粗鬆症の治療になれば、ビスフォスフォネート製剤(ボナロンなど)を飲むことが必要になります。また、ふだんから、適度な運動をしてください。

運動をすることも、骨粗鬆症の予防につながります。

ホルモン療法の効果を、しっかり、ひきだすための注意点

ホルモン療法の際によく用いられる薬の1つは、タモキシフェンです。

そして、この薬剤を、うつ病の薬であるパキシルと併用すると、効果が落ちることが判明しています。

乳がんによる死亡率が1.91倍になるという 報告もあるくらいです。

したがって、ホルモン療法の中でもタモキシフェンによる治療を受けているときに、うつ病の薬を併用する場合には、注意を払ってください。

タモキシフェンの効果を落とさないに、うつ病の薬にしてもらいましょう。

ちなみに、うつ病になる原因はいろいろありますが、タモキシフェン自体がうつ病の原因になるとも、されています。

アロマターゼ阻害薬による関節痛

アリミデックス、アロマシン、フェマーラは、アロマターゼ阻害薬という薬に分類されます。

そして、閉経後のホルモン療法として、用いれれます。

さて、アロマターゼ阻害剤でよく認められる副作用は、関節痛です。閉経後5年以内の人に起こりやすいとされています。

朝のこわばりだけの初期症状から、徐々に痛みが加わり、ひどくなると一日中症状が続くようになります。

対処方法は、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)やアセトアミノフェンといった鎮痛薬の内服です。しばらくすると、痛み止めを飲まなくても痛みが落ち着くこともあります。

鍼治療によって、関節痛が改善するというデータもあります。

文献:Effect of Acupuncture vs Sham Acupuncture or Waitlist Control on Joint Pain Related to Aromatase Inhibitors Among Women With Early-Stage Breast Cancer

ストレッチ体操をすると、症状の緩和につながるとされています。

こちらにストレッチ体操を含めた対処法を記載しています。

ホルモン療法による更年期障害

ホルモン療法によって、女性ホルモンが欠乏します。その結果、ホルモンバランスが崩れます。その結果、更年期障害と同じような症状がでます。

その症状の強さには個人差があり、まったく気にならな い人から日常生活に支障をきたす人まで様々です。

具体的には、以下のような症状です。

動悸、立ちくらみ、腹痛、ほてり・のぼせ(ホットフラッシュ)、多汗、頭痛、めまい、耳鳴り、肩こり、不眠、疲労感、口の渇き、のどのつかえ、息切れ、下痢、便秘、腰痛、しびれ、知覚過敏、関節痛、筋肉痛、性交痛、不安感やイライラ、抑うつ気分

たとえ、更年期障害がいったん終えた方であっても、ホルモン療法をすることにより、再び更年期障害になることはあります。

閉経後であっても微量な女性ホルモンはあります。その女性ホルモンが、ホルモン療法の薬によって、さらに減るからです。

また、症状の強弱には精神的要素が大きくかかわります。

この副作用で、ホルモン療法を断念するケースはあります。しかし、わずかです。

そして、当帰芍薬散、加味逍遥散、桂枝茯苓丸といったような漢方薬が、症状の緩和に役立ちます。

抗うつ薬のセルトラリン、抗てんかん薬であるガバベンチンが、症状の緩和に役立つこともあります。

大豆イソフラボンが、ホットフラッシュの軽減効果があることも報告されています。

大豆イソフラボンの成分が、エクオールという食品として製品化されています。(商品名:)。エクオールの摂取量の目安は1日あたり10mgとされています。

エクオールにより、ホットフラッシュ、肩こりなども軽減されたと報告されています。

文献:A natural S-equol supplement alleviates hot flushes and other menopausal symptoms in equol nonproducing postmenopausal Japanese women

ちなみに、大豆イソフラボンによって、乳がん再発のリスクが上がらないことは示されています。

このように、いろんな工夫をすることにより、ホルモン療法による副作用を緩和できます。

ホルモン療法による高コレステロール血症と脂肪肝

ホルモン療法により、中性脂肪が上昇したり、脂肪肝による肝機能障害が出現することがあります。

タモキシフェンという薬で、そのようになる頻度が高いです。

それ以外の薬剤では、そのようなことは、ほとんどありません。

肥満の方や、閉経をしている方は、このようになりやすいです。

この副作用がでると、食事療法をしても、なかなか改善しないケースも珍しくありません。

そのような場合は、コレステロールの数値が高いことによる影響や、脂肪肝による影響を減らすための、漢方などを取り入れるとよいでしょう。

また、これらの副作用の程度が非常に悪いときには、トレミフェン(商品名はフェアストン)やアロマターゼ阻害薬に変更します。

そうすることにより、肝障害や高コレステロール血症の改善を期待できます。

ちなみに、タモキシフェンとトレミフェンは、兄弟的な位置付けにある薬です。

脂肪肝や高コレステロール血症にならないかを確認するために、3から6ヶ月ごとには採血や腹部超音波検査を受けるとよいでしょう。

いろいろ工夫をしても副作用が軽減しない時の対処法

改善しない場合は、他のアロマターゼ阻害薬や、タモキシフェンに変更することもします。

ホルモン療法で用いる薬剤の減量を試みることにより、この症状が緩和されることもあります。

例えば、隔日投与という方法です。

十分な医学的なデータはありませんが、副作用のためにレトロゾールの継続が困難であるならば、試みる価値は十分にあります。

文献:Double-Blind, Randomized Trial of Alternative Letrozole Dosing Regimens in Postmenopausal Women with Increased Breast Cancer Risk

何故ならば、日常生活の質を落とさず、長く飲み続けることが、ホルモン療法において最も大事なことだからです。

副作用のために、日常生活の質を落としたホルモン療法は、ダメです。再発するか否かは、ホルモン療法を十分な量を飲むだけで規定される訳ではないことも忘れてはいけません。

注意点として、タモキシフェンは減量をすべき薬ではないので、飲み方の工夫をするか、他のタイプほホルモン療法の薬に変更することが選択肢になります。

文献:Decensi A et al., J Natl Cancer Inst. 2003; 95(11): 779-90

飲み方の工夫ですが、タモキシフェンは10mgを1日2回、20mgを1日1回の2つの飲み方があり、副作用は10mg1日2回の方の方が若干少ないと報告されています。

文献:妹尾亘明ほか、薬理と治療1989;17(7):3605

タモキシフェンによる子宮体がん

タモキシフェンにより、子宮体癌の発生リスクを3倍増加することが判明しています。

しかし、子宮体がん自体、発生する頻度が高いがんではありません。たとえ、3倍になっても、発生頻度はタモキシフェンを服用した患者さんの1%未満です。

また、54歳以下ならタモキシフェンによる子宮体がん発症リスクは低いとされています。

一方で、タモキシフェン により、新たな乳癌の発生を有意に減少させます。

メリットとデメリットを考えると、タモキシフェンを投与することは、合理的であるということになります。

そうはいっても、念のために、年1回は、子宮がん検診時に、頸がんと体がんの細胞診の検査を受けると良いでしょう。

さて、乳がんは、長期戦です。10年してから、再発することも、珍しくはありません。

乳がんの再発を抑えるために、取り入れてほしいことは、こちらです。

 

 

執筆医師:加藤隆佑


癌治療認定医
内科学会認定医
消化器病学会専門医・指導医
消化器内視鏡学会専門医
肝臓専門医・指導医
札幌禎心会病院がん化学療法センター長

(2021年9月までは、小樽協会病院消化器内科に所属)

消化器領域のがん(食道、胃、すい臓、肝臓、胆のう、大腸)を専門としつつ、がん全般についてアドバイスをしています。

緑書房より「抗がん剤治療を受けるときに読む本」「大腸がんと告知されたときに読む本」「がんと向き合うために大切なこと」を出版。

加藤隆佑医師の論文

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