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光免疫療法のがんに対する効果を医師が解説

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こんにちは。がん治療専門医の加藤隆佑です。

以前に、咽頭がんの患者さんから、以下のようなことを言われました。

「手術をすると、声を失うことになるし、絶対に嫌です。光免疫療法を受けてみたいです。どうしたら良いですか?」

光免疫療法は、喉頭がんに対して、保険適応になっています。そして、体に優しい治療というイメージを持たれている方も多く、このような質問を受けることがあります。

そのことに関する結論ですが、優しくはないと思います。それなりに体に負担がかかるので、慎重にやらないといけない治療です。

どのような手順の治療かと言いますと、

1、がんだけに集まる、光を吸収する増感剤というものを体内に注入します。

2、喉頭がんの場合は、アキャルックスという薬剤です。そこに光を照射して、がんを壊死させます。

光を照射してすぐに、がん細胞が死に、劇的な縮小をすることも、かなり期待できます。

しかし、その際に、周囲の組織も壊死することがあります。

例えば、血管が壊死すれば、大出血を起こしますし、皮膚が壊死すれば、皮膚に欠損ができて、皮膚から内臓が見えるようになります。

したがって、このような副作用が出ない方にしか、光免疫療法をできないのです。そうなると、実際に光免疫療法を受けられる方は、かなり僅かなのです。

ちなみに、本当の光免疫療法のイメージは、こんな感じです。

一方で、これとは違う光免疫療法が、自由診療の世界では、やられています。

インターネットで「光免疫療法」と検索すると、どちらかというと、そちらの治療ばかりを目にします。

残念ながら、保険診療で行われる光免疫療法に比べれば、効果はかなり落ちます。

先ほどの治療とは違い、副作用はほとんどない分、治療効果も軽度であるということです。

つまり、少し小さくなることは期待できることもありますが、劇的な効果は難しいということです。さらに、光が届かない部位には、この治療の適応はありません。

したがって、自由診療における光免疫療法を取り入れるとしても、その治療だけ出なく、他の治療法も併用しないといけないのではと、私は考えています。

今後も光免疫療法は、もっと発展する余地はあると思いますので、副作用が少ない上に、治療効果もドカンと出るようなものが開発されると良いですね。

執筆医師:加藤隆佑


癌治療認定医
内科学会認定医
消化器病学会専門医・指導医
消化器内視鏡学会専門医
肝臓専門医・指導医
札幌禎心会病院がん化学療法センター長

(2021年9月までは、小樽協会病院消化器内科に所属)

消化器領域のがん(食道、胃、すい臓、肝臓、胆のう、大腸)を専門としつつ、がん全般についてアドバイスをしています。

緑書房より「抗がん剤治療を受けるときに読む本」「大腸がんと告知されたときに読む本」「がんと向き合うために大切なこと」を出版。

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