漢方において注意を要する副作用を医師が解説
こんにちは。加藤隆佑と申します。がん治療を専門に総合病院で勤務しています。
本日は、漢方の副作用で、注意を要するものを解説いたします。
1、薬剤性肺炎
漢方が原因で、肺炎になることがあります。しかし、すべての漢方が、肺炎を引き起こすわけではありません。
漢方による肺炎を引き起こしやすい漢方は、小柴胡湯です。
ただし、頻度は、高いものではありません。約0.1パーセントです。
さらに頻度は低いですが、大建中湯、抑肝散、芍薬甘草湯という漢方でも、肺炎は報告されています。
また、漢方を飲んでいて肺炎になったとしても、必ずしも、漢方が悪さをしているわけではありません。
以下のような原因も、肺炎の原因になります。
- 細菌やウイルス
- 膠原病
2、偽アルドステロン症
漢方の構成成分の一つである甘草という生薬が原因となります。
症状としては、高血圧、むくみです。採血をすると、体内のカリウムの減少が、認められます。
もし、高血圧やむくみがでてきたら、甘草を含んでいる漢方を減らすか、止めるかの対処をすれば、治ります。
「甘草の量が多くなるような漢方処方は、避けた方が良い」という意見を主張する方がいます。
「甘草の量が多くなるような漢方処方以外の方法で、病状をよくすることが可能である」ときは、この意見は、正しいと言えるでしょう。
しかし、「甘草の量が多くなるような漢方処方」でないと対処できないケースでは、「甘草の量が多くなるような漢方処方」は許容されます。
たとえ、甘草の量が多くても、必ずしも、偽アルドステロン症になるわけではないからです。
たとえば、甘草を6グラムという高用量を摂取した場合でも、偽アルドステロン症が発症する確率は1割程度です。
また、万が一、偽アルドステロン症を発症した場合は、その漢方をとめれば、問題は解決です。
10日から4週ほどで、治ります。
偽アルドステロン症の早期発見のコツ
がんの治療中であれば、定期的に採血を受けるので、早期に発見されることが大半です。
症状から、偽アルドステロン症の初期症状を疑うとしたら、以下の2つが重要です。
四肢脱力・筋力低下、血圧上昇
偽アルドステロン症の場合は、採血したときに、カリウムの数値が下がっています。
もし、下がっていなければ、偽アルドステロン症であることは、ほぼ否定できます。
つまり、たとえ偽アルドステロン症を疑うような血圧上昇があっても、カリウムが下がっていなければ、偽アルドステロン症ではないと言えます。
そして、抗がん剤が原因の副作用にもかかわらず、「この症状は、漢方の副作用だから」と言われ、漢方の服薬を止められるケースも散見されます。
3、腸間膜静脈硬化症
大腸の壁から、腸間膜という静脈にかけて、石灰化が生じます。
その結果、 腸管の血流障害がでます。その結果、腹痛(右側)、下痢、悪心・嘔吐といった症状がでます。
この副作用を引き起こす原因は、サンシシという生薬です。
サンシシを含む漢方を3年以上服用すると、頻度としては低いのですが、腸間膜静脈硬化症になることがあります。
サンシシを含む漢方は、以下の通りです。
- 加味逍遙散
- 黄連解毒湯
- 辛夷清肺湯
- 茵ちん蒿湯
これらの漢方を年単位で飲むときに、腹部症状がでたときには、大腸カメラの検査をうけて、腸間膜静脈硬化症がないかを確認しないといけません。
基本的には、原因となる薬剤をとめれば、ゆっくりとよくなっていきます。
4、肝障害
さて、がんを克服していく上で、漢方を加えると良いです。
抗がん剤による副作用を減らせます。
そして、より強力にがんの成長を抑えることができます。