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自分のがんが、子どもに遺伝したら、どうしたら良いですか?

 2021/01/18 がんと遺伝  

こんにちは。加藤隆佑と申します。がん治療を専門に、総合病院で勤務しています。

今日は「がんの遺伝」について考えてみます。

とても難しい話であり、個人差はあるのですが、一般的には以下のように言えます。

がんの遺伝的要因は、顔かたちが似るように、親から子へと、受け継がれる傾向にある。

例えば、乳がんでは、母親や姉妹が乳がんになった方は、そうでない一般の方と比べて2から4倍乳がんになるリスクが高いと言われています。

不安に思われたかもしれませんが、ここで知ってほしいことは、遺伝子の異常だけが原因で、がんになるわけではないということです。

大半のがんは、遺伝子的な異常に、生活習慣や外的要因も加わって、がんが発症していることです。

これだけだと、分かりづらいので、肥満になりやすい遺伝子であるアドレナリンβ3遺伝子を例にあげて、お話します。

この遺伝子に異常があると、肥満になりやすくなります。アメリカのインディアンから発見された遺伝子異常です。

その遺伝子異常をもつアメリカのインディアンの一部は、メキシコに移住しました。

移住したアメリカのインディアンの食生活は、1970年代から大きく変わりました。高脂肪食になったのです。その結果90%の人が、高度な肥満になってしまいました。

一方、メキシコのインディアンは従来通りの農業を中心にした生活を送っていました。肥満になることもありませんでした。

この話から分かることは、以下の2点です。

1、肥満になりやすい遺伝子異常をもったインディアンは、高脂肪食と運動不足といった要因が加わって肥満が発症した

2、肥満になりやすい遺伝子をもっていたとしても、従来通りの生活を続けていれば、肥満にならなかった

がんになりやすいと言われている遺伝子異常は、かなりの数が特定されていますが、その大半は、アドレナリンβ3遺伝子の異常に似たものだと思います。

すなわち、がんになりにくい生活習慣をすることにより、がんを防ぐことができるのです。

具体的には、

1、化学物質(食品添加物等)
2、遺伝子組み換え食品・原材料
3、人口抽出の果糖(異性化糖[ブドウ糖液糖など])
4、白砂糖(黒砂糖や甜菜糖であっても過度の摂取はしない)
5、放射性物質

に注意しましょう。

また、国立がん研究センターがん予防・検診研究センターがまとめた「がんを防ぐための新12か条」というものがあります。

1.たばこは吸わない
2.他人のたばこの煙をできるだけ避ける
3.お酒はほどほどに
4.バランスのとれた食生活を
5.塩辛い食品は控えめに
6.野菜や果物は不足しないように
7.適度に運動
8.適切な体重維持
9.ウイルスや細菌の感染予防と治療
10.定期的ながん検診を
11.身体の異常に気がついたら、すぐに受診を
12.正しいがん情報でがんを知る

このようなことも、日常生活に取り入れていってくださいね。

大半の遺伝子異常は、生活習慣をしっかりしていけば、がんの発症をかなり抑えることができるのです。

ただし、例外があります。例えば、MLH1遺伝子、MSH2遺伝子、MSH6遺伝子、またはPMS2遺伝子の異常がある場合は、大腸がんにかかる確立が非常に高いと言われています。

リンチ症候群という診断名になります。

BRCA1遺伝子(BRCA1)、BRCA2遺伝子(BRCA2)に異常がある場合は、非常に高い確立で乳がんになると言われています。

これらの遺伝子異常をもつ場合は、生活習慣に気をつけるだけでは、がんの発症をおさえることができない可能性が、高いです。

例えば、以下のような場合は、乳がんの遺伝子のカウンセリングをうけてもよいでしょう。

  • 若い年齢で乳がんを発症する
  • 両方の乳房に転移ではなく、独立して乳がんが発症する
  • 2世代以上にわたって乳がんの発症者がいる
  • 卵巣がんの発症者がいる
  • 乳がんと卵巣がんの両方を発症する
  • 男性の血縁者に乳がん発症者がいる

同様に、以下のような場合は、リンチ症候群を念頭にいれて、遺伝子カウンセリングをうけてもよいでしょう

  • 家計内に少なくても3名のリンチ症候群に関連した腫瘍がみとめられる
  • そのうちの1名は他の2名に対して第一度近親者(親、子、兄、弟)である
  • 少なくても2世代に渡って発病している
  • 少なくても1名は50歳以下で発病している

遺伝カウンセリングの専門医はこちらです。

遺伝子の件は、心中お察しします。
ただ、長期的な視点にたった遺伝子の影響については、1つ私なりの考えがあります。
たとえばですが、植物は、どれだけ遺伝子を改良して育てても、自然のやさしい環境下にもどして、育てると、以前の遺伝子に戻ります。
人間も、食生活をかえると遺伝子の活性はかわる(遺伝子変異が、元に戻るということではないです)が、わかっています。
ここから先が私の推測なのですが、体に優しい環境で生活していけば、数世代後には、遺伝子の活性がかわることの積み重ねで、遺伝子変異は、もとの状態に戻ると、私は思っています。
だからこそ、子供達の世代に、体に優しい食生活や、体に優しい環境になるようなライフスタイル(つまり環境保護になるようなライフスタイル)を伝えていくことが大事だと感じている次第です。

 

執筆医師:加藤隆佑


癌治療認定医
内科学会認定医
消化器病学会専門医・指導医
消化器内視鏡学会専門医
肝臓専門医・指導医
札幌禎心会病院がん化学療法センター長

(2021年9月までは、小樽協会病院消化器内科に所属)

消化器領域のがん(食道、胃、すい臓、肝臓、胆のう、大腸)を専門としつつ、がん全般についてアドバイスをしています。

緑書房より「抗がん剤治療を受けるときに読む本」「大腸がんと告知されたときに読む本」「がんと向き合うために大切なこと」を出版。

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