妊娠中の乳がんの治療方法について医師が解説
こんにちは。加藤隆佑です。がん治療を専門に総合病院で勤務しています。
さて、妊娠に伴う乳がんであっても、最近は、治療ができるようになってきました。
そこで、妊娠中の乳がんの治療について、解説していきます。
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妊娠期乳がんとは?
妊娠期乳がんの定義は、以下の通りです。
「妊娠中、あるいは、出産後1年以内、および授乳中に診断された乳がん」
授乳中の乳がんであれば、授乳をやめれば、従来通りの治療ができます。
問題は、妊娠中に、乳がんとわかった場合の、治療をどうするかです。
以前は、妊娠を諦めて、治療を受けるか、帝王切開などで、予定よりも早く出産するようにして、早急に乳がんの治療を受けるというものでした。
しかし、最近は、妊娠と継続しながら、乳がんの治療が可能なケースも、わかってきました。
妊娠中にがんになる確率は?
妊婦の1000人から1500人に1人に、乳がんが見つかります。
話はそれますが、妊娠している最中に発見されるがんの頻度は、乳がん、子宮頚がん、甲状腺がん、リンパ腫、悪性黒色腫、性腺腫瘍の順に多いです。
また、妊娠中に乳がんになったからといって、それが胎児に転移することはありません。
妊娠中に受けられる検査は?
妊娠中には、受けられる検査は、限られます。胎児への被曝の問題があるからです。
検査方法ごとに解説していきます。
マンモグラフィー:妊娠中においては、なるべくならば、避けるべきです。
CT:絶対に、避けないといけません。
MRI:妊娠の初期においては、避けるべきとされています。妊娠の中期以降であれば、必要最低限であるならば、良いであろうとされています。
骨シンチグラフィー:妊娠の初期においては、避けるべきとされています。妊娠の中期以降であれば、なるべくならば、避けるべきです。
乳がんの針生検や、細胞診は、どの時期であっても、問題はありません。
妊娠中において、手術を受けるとしたら、全身麻酔はOKか?
麻酔薬が、胎児に悪影響を与えることがあります。
したがって、妊娠初期の場合は、局所麻酔で手術が行われることが、あります。
妊娠の中期以降であれば、全身麻酔で行うことが多いです。しかし、麻酔薬による胎児への長期的な影響は、はっきりしていません。
妊娠中であっても、抗がん剤治療は可能?
妊娠中であっても、抗がん剤治療を受けられる可能性は、あります。
薬剤ごとに、説明いたします。
ホルモン療法:妊娠している時期は、投与してはいけない。
抗がん剤:妊娠の中期以降、つまり妊娠3ヶ月以降であれば、投与をすることを検討してもよい。初期の段階は、投与しては、いけない。
ハーセプチン(抗HER2療法):妊娠している時期は、投与してはいけない。
放射線治療:妊娠している時期は、行ってはいけない。
抗がん剤が直接胎児に影響を及ばさなくても、抗がん剤によって、母体が貧血になったり、食欲不振になることにより、低体重での出産になることもあるので、注意が必要です。
また出産後も、母乳を与えてはいけないこともあるので、注意が必要です。
予後に関してですが、妊娠していないに見つかった場合と比較して、変わらないとされています。
妊娠初期の段階は、ほとんどの薬剤が、投与できない理由は?
妊娠初期の段階は、胎児の器官形成期と呼ばれ、最も影響が懸念される時期です。
妊娠12週までのことを指すことが、多いです。
この時期に、外部より、なんらかの影響を受けることにより、催奇形のリスクが、高くなってしまうのです。
主治医に質問してほしいこと
最後に、妊娠中にがんが見つかった場合には、以下のことを主治医に聞いてください。
1, これまで、妊娠中のがんの治療をどの程度あつかったことがありますか?
2, どのような治療計画で、その治療計画をたてた理由はどのようなものでしょうか?
3, 今すぐ治療をしたほうがよいか、それとも、治療開始は遅らせたほうがよいですか?
4, 治療を送らせることにより、私の予後に影響がありますか?
5, 胎児に長期的に、もしくは短期的に、どのような危険がありますか?
6, 母乳で育てることができますか?
7, 私と、私の家族を支えてくれるサービスは、何かありますか?
主治医とはいえども、抗がん剤治療を妊娠中に受けて、胎児への10年から20年先への影響は全く分かっていません。
そのあたりのことが、早く分かってくれるとよいと思います。
妊娠と、がんの治療を両立させることは、とても大変なことです。そうであっても、いろんな人の力を借りながら、無事妊娠を終えて、乳がんを克服できるように、していきましょう。