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B R C A遺伝子に異常があるときに、気をつけないといけないこと

 2024/11/26 遺伝子検査コラム  

こんにちは。加藤隆佑です。

がんの治療中にB R C A遺伝子の検査を受ける必要があります。

もし、その検査結果でBR C A遺伝子に異常があるという結果になれば、リムパーザという分子標的薬を使えるかもしれないからです。

ただ、B R C A遺伝子に異常がある時には、さまざまながんのリスクが上がるとされています。

さらに、血縁の方も、B R C A遺伝子を持っている可能性があります。

約1/2の確率で、血縁者に B R CA遺伝子は、遺伝するからです。

したがって、BR C A遺伝子に異常がある場合は、血縁の方も、この遺伝子を持っているかの検査を受けた方が良いことになります。

なぜ、B R C A遺伝子に異常があるとがんのリスクが上がるの?

BRCA遺伝子にはBRCA1とBRCA2があります。

そして、BRCA1がつくりだすBRCA1タンパク質またはBRCA2がつくりだすBRCA2タンパク質は、細胞の遺伝子(D N A)に傷ができたときに、D NAの修復することに役に立ちます。

しかし、B R C A遺伝子に問題があると、そのタンパク質が作られなくなります。

その結果、D N Aの修復ができなくなり、がんが発生しやすくなります。

B R C A遺伝子を持つことで、どの程度、がんのリスクは上がるのか?

B R C A遺伝子に異常があると、生涯の間に、以下のがんになる確率は以下の通りとなります。

乳がん:60〜70%

もう少し正確に表現をすると、この数値は累積罹患率ですので、ある年齢までに特定の病気と診断される確率を示します。

乳がんになる累積罹患率は以下の示すようなグラフとなります。

このグラフの解釈としては、

たとえば、45歳までに乳がんと診断される確率は、BRCA1に異常がある場合は、約18%、BRCA2遺伝子に異常がある場合は、約22%であり、

85歳までに乳がんと診断される確率は、BRCA1に異常がある場合は、約60%、BRCA2遺伝子に異常がある場合は、約72%というふうに解釈できます。

他のがんにおいては、以下のような累積罹患率であることが判明しています。

<卵巣がん>

<膵臓がん>

<前立腺がん>

<胆道がん>

<胃がん>

JAMA Oncol. 2022 Apr 14;8(6):871–878. doi: 10.1001/jamaoncol.2022.0476より画像を引用

遺伝性乳がんと判明したときに、考えるべきこと

・血縁者に伝えるべきかどうか?

遺伝性乳がんと診断された方の血縁者に、その旨を伝えるかどうかを考えないといけません。

約1/2の確率で、血縁者に遺伝性乳がんの遺伝子は、遺伝するからです。

もし、血縁者の方が、遺伝しているかをはっきりさせたいと言われれば、遺伝子検査を受けることになります。
採血2ccとるだけ判明します。

ただ、問題点は、この検査が自費になるということです。2023年現在においては、20万円近くかかります。これが1日も早く公費でできるようになればと思います。

そして、この検査を通して、知って欲しいこととして、「乳がんになっていない方で、遺伝性乳がんの遺伝子を持っている場合」は、日常生活における注意点が発生することです。

遺伝性乳がんの遺伝子を持っている方の注意点

30歳未満の方ならば、マンモグラフィーを受けることは、推奨されません。

逆に、マンモグラフィーにより乳がんの発症リスクを数倍あげることになるとされています。

胸のレントゲン写真を取るだけでも、乳がんの発症リスクをあげると言われています。

ちなみに、30歳以上の場合は、マンモグラフィーを受けても、乳がんの発症リスクをあげないとされています。

BRCA遺伝子の変異をもつ場合は、年に1回の造影MRIが推奨されています。

遺伝性乳がんの遺伝子を持っている方が、乳がんになったら、治療方針も変わる。

乳がんと診断された方が、遺伝性の乳がんの遺伝子を持っていたら、乳房温存手術は、あまり推奨されません。

どちらかというと、乳房の全摘が推奨されます。

乳房を温存してしまうと、乳がんの再発率が高くなるからです。

つまり、どのような遺伝子を持つかを知ることが、がんの予防や治療の方針に影響を与えることになります。

乳房の予防的な切除術は推奨されるか?

ガイドラインには、以下のような記載があります。

「細心の注意のもと両側の乳房切除術を行うことを考慮する。」

その理由としてBRCAに異常がある女性は70歳までに約50%の確率で乳がんを発症することが判明しているからです。

予防切除を受けることにより乳がんの発症リスクを2%まで下げることができます。

また、乳がんの発症を減らすために、運動をすることも有用とされています。

逆に体重増加は、乳がん発症のリスクを上げることも判明しています。

ところで、私は、がんの方の食事療法や漢方治療に関わっています。

そして、食事療法だけで、がんが縮小する方もいます。

そのようことを考慮すると、ふだんの食事内容を気をつけることも、乳がんの発症を抑えることにつながると言えるでしょう。

執筆医師:加藤隆佑


癌治療認定医
内科学会認定医
消化器病学会専門医・指導医
消化器内視鏡学会専門医
肝臓専門医・指導医
札幌禎心会病院がん化学療法センター長

(2021年9月までは、小樽協会病院消化器内科に所属)

消化器領域のがん(食道、胃、すい臓、肝臓、胆のう、大腸)を専門としつつ、がん全般についてアドバイスをしています。

緑書房より「抗がん剤治療を受けるときに読む本」「大腸がんと告知されたときに読む本」「がんと向き合うために大切なこと」を出版。

加藤隆佑医師の論文

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