脳転移でも楽に余命を伸ばせる!症状を取り除き、完治を目指す方法を医師が解説!
こんにちは。加藤隆佑です。
あなたが、脳に転移があったとしても、脳の転移を、完治にもっていくことは、できます。
この数年の間に、脳転移への治療法は、非常に発達したからです。
そして、脳転移による症状をとっていきましょう。
その結果、乳がんや肺がんの多発脳転移であっても、10年以上、元気な人もいます。
たとえ、脳転移を完全に消失させられなくても、さらに、脳転移を制御させることはできます。
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脳転移は余命を数える状態なのか?
「脳にがんが転移した」と聞くと、余命わずかと思う方は、いるかもしれません。
しかし、脳転移は、現在は、かなり制御できるようになりました。
脳転移したがん細胞を、完全に、死滅させることも、多々あります。
脳転移をしているからといって、余命を数える状態にはなりません。
もし、脳転移だけならば、がんの完治を期待することもできます。
余命に関してもう少し説明するならば、「脳に転移した部位以外のがんの状態が、どのようになっているか?」が、余命に関係すると言えるかもしれません。
ただし、1つ例外があります。
脳に転移した部位の周りが、非常にむくむことがあります。その結果、頭蓋骨の内部が圧迫されて、頭痛や吐き気を感じることがあります。
このような場合は、緊急に対応しないと命に関わることがあります。
脳転移の症状は?
以下のような症状がでることがあります。
- 四肢の麻痺
- けいれん
- 感覚障害
- 目まい
- 頭痛
- 吐き気
脳転移といっても、脳のどの部位に転移するかで、症状は異なります。
例えば、思考や理性を司る部位に、がんが転移すると、人格が変化することになります。
頭痛や吐き気は、脳に転移したがんの周りが、非常にむくんだ結果、頭蓋骨の内部が圧迫されて、生じる症状です。
脳に転移しやすいがんは?
肺がん・乳がんです。
以上の2つ以外のがんで、脳転移を起こしやすいがんは、胃がん,頭頸部がん,結腸がん,子宮がんです。
しかし、どのがんでも、起こる可能性はあります。
脳に転移を発見するための検査法は何が良い?
脳転移を見つけることは、容易です。
ガドリニウムという造影剤を用いたMRI検査が、もっとも有効な検査とされています。
脳転移がないにも関わらず、脳転移の症状が出る時はどうする?
以下のような疾患を考えないといけません。
- 進行性多巣性白質脳症
- 傍腫瘍性症候群(亜急性小脳変性症 や辺縁系脳炎)
- 可逆性後頭葉白質脳症〜抗がん剤の副作用のために生じます。
脳転移の治療法は?
治療法として、以下のようなものがあげられます。
- 放射線治療
- 外科的切除
- 薬物療法
脳転移への放射線治療とは?
ガンマナイフ治療による治療
約18グレイくらいのエネルギーを持つ放射線を、どかんと、がんの転移した部位に当てます。
そうすることにより、転移した脳転移の部位の死滅を目指します。
1回の治療で終わります。
以下のような条件のときに、この治療法が行われます。
- 大きさが、2.5から3cmくらいの転移
- 脳に浮腫がほとんど生じていない
- 脳転移の数が3から4個以内
ちなみに、ガンマナイフというのは、治療装置の名前のことです。
この治療により、80%の確率で、照射した部位のがんを完全に制御できます。
つまり、脳転移の病変に関しては、完治にもっていくことは、できます。
定位分割照射
ガンマナイフによる治療は、ドカンと放射線をあてて、1回で治療を終わらせるものでした。
定位分割照射の場合は、ドカンとではなく、2から10回くらいに分けて、治療をします。
リニアックメス,ノバリス,サイバーナイフ,トモテラピーといった放射線装置を用いて、治療をすることになります。
1回で終わらせる治療であっても、数回に分ける治療であっても、治療成績は、変わりません。
脳に転移した部位のがん細胞を死滅させる力を持ちます。
しかし、定位分割照射で、すぐに再発する場合は、ガンマナイフによる治療にした方が良いこともあります。
全脳照射
脳への転移の数が多い時には、ガンマナイフや定位照射ではなく、全脳照射を行います。
具体的には、脳転移が5個以上,あるいはそれ以上ある場合に,全脳照射という治療法を提案されることが多いです。
しかし、脳への転移の個数が6個とか8個あっても、ガンマナイフといった治療で、脳転移の部位のがんを、完全に死滅させることを試みることはあります。
さて、全脳照射は,脳の全体に大量の放射線をかける治療です
通常は,40グレイを20回に分けてかけるか,30グレイを10回に分けて放射線治療をすることが、多いです。
がん細胞を完全に死滅させる力は、ガンマナイフや定位照射に比べれば弱いです。
全脳照射の問題点
副作用として、一時的に、倦怠感・食欲低下・吐き気・ふらつき・めまいといった症状がでることがあります。
もし、吐き気がでたら、ステロイドや吐き気止めといった薬で、対処することができます。
また、照射開始から2週間ほどたつと、徐々に脱毛します。しかし、時間が経過したら、再び髪の毛は生えてきます。
ここまでの副作用は、長期的には大きな問題を与えることではありません。
一番の問題は、数パーセントの確率で、数ヶ月後に認知障害になることがあるということです。
ひどい場合には、自分のことがよくわからなくなることです。
しかし、最近は、全脳照射の合併症の1つである認知症が発生するリスクを非常に減らす全脳照射の方法も、でています。
脳転移への手術とは?
現在は、ほとんどのケースが、放射線治療で治すことを試みます。
手術で切除するよりも、放射線治療の方が、治療成績が良いからです。
以下のようなときは、手術が選択されます。
- 定位分割照射やガンマナイフによる治療ができないくらい大きな脳転移(3センチ以上の大きさのとき)
- 脳が、非常にむくんでいるとき
そのような場合は、手術後に、放射線治療を受けることになります。
何故ならば、手術だけでは、がんを綺麗に取り除けないことが多いからです。
そして、放射線治療を加えることにより、脳転移の再発率が下がるからです。
脳転移の薬物療法とは?
がんが、脳以外の全身に転移して、全身状態が悪い場合には、手術も放射線治療も難しいことがあります。
そのような場合は、脳の浮腫に対して、副腎皮質ステロイドやグリセロールを投与して、脳浮腫の治療します。
デキサメタゾンという副腎皮質ステロイドを用いるならば、1日あたり4から8ミリグラムくらいを投与することになります。
がんそのものを叩く治療ではないのですが、症状の緩和になります。
抗がん剤は脳転移には、効果がないのか?
脳組織と血管との間にある障壁にはばまれ、抗がん剤は脳には届かないようになっています。
したがって、脳転移への治療は、放射線治療か、手術になるわけです。
しかし、例外的に、何種類かの抗がん剤は、脳に転移した部位にも、届くことは、わかっています。
例えば、肺がんに用いられるタグリッソ、タルセバ、アレセンサです。
この抗がん剤、正確には分子標的薬と呼ぶべきなのでしょうが、脳転移にも、効果を示します。
乳がんに用いられるタイケルブ、カドサイラも、脳転移に効果があるとされています。
さて、脳転移の制御は、それほど難しいものではないケースが多いです。
むしろ、最も大切なことは、脳以外の部位のがんの制御です。
参考資料:日本乳がん学会患者さんのための乳癌診療ガイドライン〜脳転移
参考資料:がん情報サービス〜放射線治療の基礎知識
参考資料:脳外科医 澤村豊のホームページ