CARTの効果を医師が解説!KM-CARTと従来のCARTで、効果に違いはある?
こんにちは。加藤隆佑です。
本日は、がんによって、たまった腹水によって、お腹が張っているときの治療法を解説いたします。
Contents
腹水とは?
お腹の中には、健康な人であっても、20から50ccの腹水が存在します。
そして、がんが、腹膜に播種して、腹膜というところで炎症がおきると、腹水が増えます。
その結果、お腹がパンパンになって、苦しいという症状がでることがあるのです。
治療が難しい腹水の治療法とは?
腹水が増え始めたときには、利尿剤によって、腹水を減らすことを試みます。しかし、利尿剤を投与しても、腹水が、減らないことがあります。
そのような場合は、難治性の腹水ということになります。
そのような場合の対処法は、5個あります。
1、腹水穿刺による腹水の廃液
お腹に小さなストローみたいなものを刺すことにより、腹水を外にだします。
お腹のはりはとれますが、腹水の中の栄養分も、失うことになります。
3リットル前後の腹水をぬくと、約75グラムのタンパク質を喪失すると言われています。
2、腹水穿刺による腹水の廃液+アルブミン投与
腹水を抜いた後に、アルブミンを投与するとことにより、栄養の喪失を補います。
がんによる腹水の場合は、アルブミン投与が、保険診療で用いることが難しくなってきていますので、この選択肢が取られることは、だいぶ減りました。
3、腹腔静脈シャント
腹腔と静脈をつなぎ、腹水を静脈に流す治療法です。外科的な処置となります。
リスクもあり、実施されることは少ないです。
4、経頸静脈肝内門脈大循環短絡術
肝臓の中の静脈と、門脈にステントをいれ、新しい血液の流れ道を作ります。
リスクもあり、実施されることは少ないです。
5、腹水濾過濃縮再静注法 (CART)
お腹に小さなストローみたいなものを刺すことにより、腹水を外にだします。
その腹水をろ過して、栄養成分だけを抽出して、体の中に戻します。
保険診療では2週に1回行うことができます。
最近は、がんによって、たまった腹水には、CARTによる治療で対応をするケースが多いです。
CARTとは、どんな治療?
実際の治療に関しては、以下の図に、かいてあります。
旭化成メディカル株式会社のパンフレットからの引用です。
CARTを受けると、どのようなメリットがあるかについて
この治療によって、お腹の張りが、とれます。
採血検査をしてみると、栄養状態を表すアルブミンという数値が改善します。
なぜならば、腹水の中の栄養分を、体の中に戻すからです。
循環状態が改善することにより、尿量も増えます。
CARTが受けられないケースとは?
腹水 (又は胸水)中にエンドトキシンが検出される場合です。
しかし、実際は、エンドトキシンが検出されても、安全にできることは判明しています。
エンドトキシンが腹水中にあることをCARTの禁忌とするならば、腹水中のエンドトキシンの測定を義務にしないといけません。
しかし、実際は、CARTをする際に、腹水のエンドトキシンを確認している施設は皆無です。
そのような点からも、CARTの禁忌にすることは、非常におかしいですし、CARTの際に、エンドトキシンを99%以上除去できることは判明しているので、安全なのです。
また、以下のような方は、CARTを受けることを、慎重に判断しないといけないとされています。
・血性腹水の認められる患者
理由〜腎障害の可能性がある
・細菌性腹膜炎(もしくは胸膜炎)を併発している患者
理由〜腹水中にエンドトキシン(細菌の毒素)が検出される可能性がある。
・卵巣がん患者
理由〜他のがんと比べて発熱頻度が高い
しかし、適切なCARTをできる施設であれば、問題なく、安全にできます。
適切なCARTとは?CARTの問題点とは?
腹水が、ドロっとしているときや、血性の腹水の場合は、腹水が、サラサラとした性状ではありません。
その結果、ろ過する膜が詰まり、ろ過できなくなることがあります。
さらに、5リットル以上の腹水を処理するときで、腹水が、サラサラでないときには、ろ過する膜が詰まり、ろ過できなくなることが多いです。
たとえば、以下のようなことが、起きるということです。
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10リットルの腹水を採取→腹水をろ過する過程で、腹水を6リットルくらい、ろ過したところで、ろ過する膜がつまる。その結果、残りの腹水を、ろ過することができなくなる。
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このような場合は、6リットル分の腹水の中の、栄養成分は、体に戻せます。しかし、残りの4リットルの腹水の中の栄養成分は、ろ過ができないため、体に戻すことは、できません。
この問題点を解決する方法は、KM-CARTという方法を用いることです。
この方法ですと、ろ過する膜が詰まるという問題は、解決できます。
しかし、この方法を採用しているところは、1割くらいの病院とされています。
濃縮濾過した腹水を、体内に戻す時に生じることがある発熱の頻度を減らすことも、大きなメリットです。
その理由は、腹水へのストレスが少ない方法で、濃縮濾過することができるからです。
3から5リットル程度の少ない量の腹水で、粘度が低い腹水であれば、多くの病院で行われている従来のCARTで大丈夫です。
しかし、それ以上の量の腹水だったり、粘度の高い腹水の場合は、KM-CARTを用いるのが良いでしょう。
さらに、多量の腹水を、お腹から抜くテクニックが普及していないという問題点もあります。
たとえば、
10リットルくらいの腹水がお腹にあっても、4リットルくらい抜いて、残りの6リットルの腹水は抜かないで、そのままにしておく。
といったことが、実際の現場では、よく見受けられるのです。
それでは、本来期待できる治療効果が、半減するといって良いでしょう。
KM-CARTをしている施設では、10リットル以上の腹水を抜くテクニックを持つ医師が在住しているので、そのような点からも、安心できます。
CARTの副作用とは?
5%以上の確率で、発熱、悪寒がでます。
しかし、一時的なものですので、問題はありません。
1%未満の頻度になりますが、血圧上昇、頭痛、眠気があるとされています。
本日のまとめ
少量の腹水であれば、どこの施設でCARTを受けても、治療結果は大丈夫でしょう。
ただ、大量の腹水であったり、粘性の高い腹水の場合といったケースでは、KM-CARTをしている施設で、CARTを受けた方が、より良いです。
参考文献:Cell-Free Ascites Reinfusion Therapy(CART)Modified by Keisuke Matsusaki(KM-CART)at Our Hospital