こんにちは。外園正光です。小樽協会病院でがん治療を専門に勤務している医師です。
さて、がん剤治療によるトラブルをへらすために、口腔内をきれいにすることが求められます。
抗がん剤による口内炎を軽減することができます。
大きな手術前に口腔ケアをしっかりすると、手術後の合併症も減らすことができます。そのことに関連した静岡がんセンターからの報告を一つお示しします。
「頭頸部がんの手術の際に、手術前に口腔ケアをしっかりすると、瘻孔形成・創部感染・肺炎・皮弁壊死といった合併症の発生を1/3から1/4に減らすことができた。」
口腔ケアは、いろんな場面で、とても重要なのです。
そこで、具体的にすべきことをお伝えしますね。
1、治療前に歯科受診する
治療前に、歯科を受診して、口腔内をチェックしてもらうことが大事です。
その際には、がん診療と連携している歯科医師に相談すると良いです。
2、適切なタイミングで歯磨きをする
歯磨きをしっかりすることも必要です。
そして、歯磨きにも、ベストのタイミングというものがあります。
一番重要なのは、朝一番の朝食前の歯磨きです!
私たちは「食べたら磨きましょう」と幼い頃から言われています。以下のようなイメージがあるからです。
「食べる」→「口の中に、食べ物の残りカスができる」→「歯磨きで、きれいにする」
食後に、歯についたカスを取り除くことはよいことです。したがって、食後に軽くブラッシングして、歯についたカスを取り除くことは大事です。
しかし、もっと大事なことがあります。
朝一番の、朝食前の歯磨きです。
朝起きたときが、お口の中は、寝ている間に増えた細菌でいっぱいです。朝起きた時が、口腔内はもっとも汚いと、言えます。
歯を磨かずに飲食すると、口腔内の細菌が体内に入れることになります。体調を崩しているときなどは、誤嚥性肺炎を引き起こす原因ともなります。
ちなみに、虫歯予防という視点からも、歯磨きは、食前にした方が良いです。
食前に歯磨きをして口の中の菌を減らしておけば、食事で糖質が与えられても菌が減っているために、酸が生じにくくなるからです。その結果、虫歯ができにくくなるのです。
逆に、食前の歯磨きによりプラークを取り除いていない状態で食べた後は、口腔内の酸性度が高まります。当然、歯は脱灰されます。そして、虫歯ができやすくなります。
朝食前の口腔内は、細菌が非常に繁殖している状態なので、朝の食事の前にプラークを掃除すべきなのです。
ということで、今後は、以下のような歯磨きをおすすめします。
1、朝起きたら、食事の前に歯磨き
5分くらい時間をかけてしっかりと!
プラークを取り除くことや、口腔内の悪玉菌を取り除くことに役立つからです。
具体的には以下のことを意識してください。
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毛先を、歯と歯ぐきの境目にあてて、軽い力(毛先が広がらないくらいの力)で小刻み(5から10ミリ)で1本ずつ磨くイメージ
歯並びが悪いところは、歯ブラシを縦にして、1本1本みがく。
嘔吐反射を誘発されやすい場合は、ヘッドの小さな歯ブラシで、舌に歯ブラシが当たらないようにして磨く。
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歯と歯の間を細いブラシ(ワンタフトブラシ)や歯間ブラシを用いてブラッシングを行うと、さらによいでしょう。
歯間部のプラークの除去率は、歯ブラシのみですと58%ですが、歯間ブラシを併用すると、95%に上昇することがわかっています。
2、食後は、食べかすを取り除く目的で、30秒程度の軽いブラッシング。そして、寝る前は、朝と同じくらいに入念に歯磨きを。
最近になり、口腔内の細菌とがんの関連性が指摘されています。
口腔ケアをしっかりされていなくて、悪玉の細菌が口腔内に多いと、膵臓がんや肺がんになりやすいことが判明しています。
がん予防という視点からも、口腔ケアをしっかりしていきましょう。
参考文献:在宅療養中のがん患者さんを支える口腔ケア実践マニュアル
参考文献:静岡がんセンター(大田、歯界展望2005)
参考文献:The microbiome and lung cancer
文献:日歯学術誌