抗がん剤による脱毛に対する頭皮冷却法の効果を医師が解説
こんにちは。加藤隆佑と申します。
がん治療を専門に札幌市内の総合病院で勤務しています。
さて、抗がん剤による脱毛で、悩まされる方は非常に多いです。
「脱毛をするくらいならば、治療を受けることを希望しない。」
そのような方もいらっしゃいます。
しかし、脱毛が回避できるような方法はあります。
頭皮冷却法という治療方法があります。
日本のガイドラインにおいても、頭皮冷却法に対して、以下のような内容の記載があります。
日本人を対象とした臨床試験はないが、脱毛の程度を軽減するために、頭皮冷却を推奨する。ただし、我が国では、保険適用外である上に、実施可能施設は限られる。
ちなみに、頭皮冷却とは、以下のような内容です。
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クーリング用のキャップを装着して、頭皮を冷やす事により、頭皮への血流を減らして、抗がん剤の毛根への影響を減らす。冷却には、保冷剤や冷却水を循環させる。
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アメリカでは、2015年12月より、乳がんの抗がん剤治療の女性の脱毛症を予防するために、頭皮冷却装置として、DigniCapが、承認されています。
脱毛の予防だけでなく、発毛の促進にも、役にたつと、されています。
ちなみに、この治療法により、一部の方は、完全に脱毛を予防できることが、あります。
DigniCapの多施設臨床試験の結果では、患者の66.3%が少なくとも50%の髪を維持していました。
参考文献:The DigniCap Scalp Cooling System and its use in the treatment of chemotherapy-induced alopecia
日本でも、パックスマンや、セルガードという頭皮冷却装置が、2020年から使われるようになってきました。
脱毛を高頻度に起こす薬剤で、パックスマン頭皮冷却装置を用いたところ、60%の方は脱毛を免れました。
それ以外にも、90%以上の患者さんは、脱毛になってしまう抗がん剤で、頭皮冷却を併用して行ったら、以下のような結果になったという報告もあります。
- 20%の患者さんは、髪の毛が全く抜けない
- 50%の患者さんは、25%の量の脱毛
- 14.7%の患者さんは、50%の量の脱毛
- 14.7%の患者さんは、50%以上の脱毛
データでみると、頭皮冷却の効果が客観的に分かるかと思います。
ちなみに、使用方法は、以下の通りです。
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頭皮の冷却は、化学療法開始の約30分前からスタート。
抗がん剤投与後治療終も90から180分は頭皮の冷却をする。
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この方法が、もっと広がることを切に願います。