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TS-1(エスワン)による副作用である下痢、味覚障害、涙目を改善する方法を医師が解説

 2021/01/20 副作用対策コラム  

こんにちは。加藤隆佑です。

ティーエスワンという飲み薬の抗がん剤があります。

エスワン、もしくは、テガフール・ギメラシル・オテラシルと呼ばれることもあります。

そして、悩まされることが多い副作用があります。

下痢、味覚障害、涙目です。

工夫をしても、これらの症状を和らげられないことも、珍しくありません。

しかし、適切な対応をしたら、これらの症状を改善させることは、できます。

この方法を解説いたします。

TS-1(エスワン)とは、どのような薬?

胃がん、大腸がん、膵臓がん、胆管がん、乳がん、肺がんに対して、用いられます。

そして、朝食後と夕食後に飲むお薬です。28日間は毎日飲んで、14日間はお休みします。これが1クールとなります。

TS-1(エスワン)の副作用は?

頻度の高い副作用は以下のものがあります。

    • 白血球減少
    • ヘモグロビン減少
    • 血小板減少
    • 食欲不振
    • 吐き気
    • 下痢
    • 口内炎
    • 色素沈着
    • 発疹
    • 味覚障害

TS-1(エスワン)による副作用を軽減する方法とは?

TS-1を飲む量を減らしたり、休薬期間を期間を長くすることにより、大半の副作用は、かなり軽減することができます。

漢方を加えることも、副作用の軽減に役立ちます。

たとえば、白血球が減少したときには、以下のような漢方が有効です。

  • 十全大補湯
  • 加味帰脾湯

下痢のときには、以下の半夏瀉心湯という漢方が有効です。

どれもが、保険診療で処方してもらえる漢方です。

味覚障害に対しては、女貞子(じょていし)という漢方が有効です。

ネズミモチという木の果実が材料になります。この漢方に関しては、保険診療での扱いは、ありません。漢方薬局で購入する必要があります。

TS-1(エスワン)による涙目を軽減する方法とは?

涙目が出現したときには、防腐剤が入っていない人工涙液で、涙を洗い流す必要があります。

涙の中に、抗がん剤の成分が入っているからです。

しかし、防腐剤が入っていない人工涙液は、保険診療で処方できません。

参天製薬のソフトサンティア、および洗眼薬のウェルウォッシュアイを購入するとよいです。

また、TS-1を減量、休薬することにより、涙目が改善することが、多いです。

もし、なかなか改善しない涙目の場合は、眼科の医師の診察を受ける必要があります。角膜に障害がでていることがあるからです。

涙道学会の専門医の診察が必要となるので、こちらから、専門医を探して受診してください。

さて、本来であれば、このような副作用が、でないようにしたいです。

特に味覚障害という副作用に関しては、いったん症状がでてしまうと、改善に時間がかかることがあるからです。

私は、これらの副作用がでることを防ぐために、TS-1を隔日で飲んでもらうという方法をとることが多いです。

隔日で飲む、つまり「1日は、飲む。その翌日は、飲まない」の繰り返しということです。

この飲み方の場合は、休薬期間を作る必要はありません。

さらに、副作用で悩まされることが、かなり減ります。

以下の副作用で悩まされることが、かなり減ります。

  • 白血球減少
  • ヘモグロビン減少
  • 血小板減少
  • 食欲不振
  • 吐き気
  • 下痢
  • 口内炎
  • 色素沈着
  • 発疹
  • 味覚障害
  • 涙目

TS-1の隔日投与にした結果、がんに対する効果は落ちないか?

TS-1の隔日投与にした結果、がんに対する効果は落ちないか?という不安を、持たれる方がいます。

いろんなデータがありますが、それらを総合的に検証してみても、効果が落ちるということは無いと判断します。

ただし、抗がん剤の効果の出方には、個人差があります。

たとえば、従来のTS-1の飲み方をしている方が、隔日投与にした結果、がんに対する効果が落ちる可能性は0ではありません。

したがって、隔日投与にして1ヶ月後くらいに、がんに対する効果が落ちていないかを、採血や画像所見で、確認する必要があります。

確認した結果、効果がちゃんとでていれば、いいわけです。

しかし、隔日投与にしても、TS-1による副作用が、なかなか制御できないケースは、あります。

そのような場合は、TS-1と同じ位置付けにあるUFTという飲み薬に変更するのも、よいでしょう。

1つ事例をあげます。

—–

胆管がん再発、80歳代の男性

胆管がんのリンパ節、骨転移による再発が判明して、TS−1を内服することになる。

しかし、TS-1による下痢に、悩まされる。隔日投与にしても、下痢を制御することはできず。

そこで、UFTという抗がん剤に切り替える。

その結果、下痢は、落ち着きく。

がんも、非常に縮小する。

—–

このように、TS-1による副作用を減らすために、試みるべき方法はたくさんあります。

そして、副作用に悩まされず、がんに負けないようにできます。

余談ですが、飲み薬の抗がん剤で副作用に悩まされるときは、隔日投与にする」というのは、どのような抗がん剤でも、言えるのでしょうか?

答えは、ノーです。

以下のような飲み薬の抗がん剤は、隔日投与にすると、効果が落ちます。

  • エンドキサン
  • リムパーザ
  • レンビマ
  • ソラフェニブ

逆に、隔日投与にしても、効果が落ちないであろうという抗がん剤は、TS-1以外にも、何種類があります。

本日のまとめです。

がんと闘う上で、大切なことの1つは、副作用によって、体力を消耗しないことです。

ちゃんと、毎日の仕事ができるくらいの副作用にしていかないといけません。

そのために、取り入れてほしいことは、こちらで学ぶことができます。

 

 

 

 

 

 

文献:Randomized phase II trial of daily administration versus alternate-day administration of S-1 in patients with advanced non-small cell lung cancer

執筆医師:加藤隆佑


癌治療認定医
内科学会認定医
消化器病学会専門医・指導医
消化器内視鏡学会専門医
肝臓専門医・指導医
札幌禎心会病院がん化学療法センター長

(2021年9月までは、小樽協会病院消化器内科に所属)

消化器領域のがん(食道、胃、すい臓、肝臓、胆のう、大腸)を専門としつつ、がん全般についてアドバイスをしています。

緑書房より「抗がん剤治療を受けるときに読む本」「大腸がんと告知されたときに読む本」「がんと向き合うために大切なこと」を出版。

加藤隆佑医師の論文

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