抗がん剤治療中には、心臓や肺の副作用にも気をつけない!そして注意点を医師が解説
こんにちは。山本洋平と申します。小樽協会病院で、がん治療を専門の1つとして勤務しています。
さて、抗がん剤の中には、心臓や肺に影響を及ぼすものがあります。
例えば、乳がんでよく用いられるアドリアマイシンやハーセプチンによって、心不全が引き起こされることがあります。
特にアドリアマイシンは、いったん心機能が低下してしまうと、心機能は元に戻らないと言われています。
ハーセプチンという薬剤であれば、休薬したら、心機能は元に戻ります。
いづれにせよ、心臓の機能が低下してきた兆候がでたら、そのお薬をいったんやめないといけません。
具体的には、体重が急に増えてきたり、息切れをするようになったら、主治医に報告してください。
このような兆候は、心不全であることがあるからです。
ちなみに、漢方には、心不全を予防するのに役立つとされています。
たとえば、以下の論文では、乳がんの患者さんに漢方を用いることにより、心不全の発症を減らすことができたと方向しています。
この研究は、台湾の医療のビッグデータを解析したものです。
台湾では、がん患者は西洋医学の標準治療だけでなく、中医学治療もよく用いられています。さらに、台湾のビッグデータは非常に精度がよいことで有名です。
心臓の機能を回復する西洋の薬は?
抗がん剤に関連して生じる心障害に対する心臓の保護の効果を検討したデータがあります。
その結果によると、スピロノラクトン、次いでエナラプリル、β遮断薬のnebivolol、スタチンの順で、心臓の保護の効果があったと結論づけています。
これらの薬物により、心臓の機能が改善したのです。
心不全以外にも気をつけない副作用とは?
シスプラチンという抗がん剤は、心房細動という不整脈を引き起こすことがあります。
キロサイド、タキソールという抗がん剤の場合は、脈が遅くなったりします。
それ以外にも、体の静脈に血栓(血の塊)ができやすくなる抗がん剤もあります。
具体的には、アバスチン、ネクサバール、スーテントという抗がん剤です。
もし血栓ができて、肺の血管がつまると、命に関わることがあります。
このような場合も、息切れ、胸痛という症状が出てることが多いです。心不全と似たような症状になることもあります。
いろんな難しい抗がん剤の名前が出て頭が混乱されたかもしれません。
本日お伝えしたかったことは、以下の1点につきます。
不整脈、息切れ、急な体重増加、胸痛といった症状がでれば、主治医にすぐに報告!
早期に対処をすることが、肺や心臓に生じる副作用により命を奪われないようにしてくれます。
参考文献:癌化学療法による心毒性
参考文献:ネクサバール適正使用ガイド
参考文献:アバスチン点滴静注用注100mg/4mL,400mg/16mL 添付文書情報.中外製薬.2016年05月改訂版(第17版)