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陽子線治療や重粒子線治療の治療効果と、治療効果をアップさせる工夫を医師が解説

 2022/10/20 放射線治療  

こんにちは。加藤隆佑です。

がん治療を専門に、札幌の総合病院で勤務医をしています。

本日は、陽子線治療、もしくは重粒子線治療に代表される粒子線治療について、解説したいと思います。

粒子線治療は、通常の放射線治療よりも効果がある?

陽子線治療、もしくは重粒子線治療は、粒子線治療の1つです。

そして、陽子線治療・重粒子線治療と聞くと、通常の放射線治療よりも、効果があると思われる方がいるかもしれません。

しかし、必ずしも、そうではありません。

粒子線治療で治療をしても、通常の放射線治療で治療をしても、治療効果は全く変わらないこともあります。

一方で、陽子線治療や重粒子線治療の方が、治療成績が良くなるという局面があることも事実です。

したがって、粒子線治療で治療を受けられるのであれば、それに越したことはないとも言えます。

ただ、粒子線治療ではなく、通常の放射線治療になったとしても、必ずしも悲観はしなくても良いことは、知っておいて欲しいです。

陽子線治療で治療をしても、通常の放射線治療で、治療をしても、治療効果は全く変わらないことも多々あるからです。

保険診療で粒子線治療を受けることができる?

最近は、保険診療で、陽子線治療や重粒子線治療を受けることができるがんが、増えています。

例えば、先日までは、すい臓がんの粒子線治療は、先進医療扱いでしたが、2022年より、保険診療で、粒子線治療を受けられるようになりました。

保険診療内で、粒子線治療を受ける機会は、増えてきているのです。

陽子線治療、重粒子線治療とは?

従来の放射線治療よりも、正常な組織に放射線が当たらないようにして、照射することができることが特徴です。

この特徴が、従来の放射線治療よりも治療効果をあげることに役立ちます。

例えば、従来の放射線治療だと、病巣の近くに小腸や胃があるために、高線量の放射線を照射できないことがあります。

その場合は、照射量を減らした治療にしないといけないので、その結果、がんを制御できる確率が減ります。

一方で、粒子線治療だと、正常な組織に放射線を当たらないようにするできるので、高線量の放射線を照射できるようになります。

このような理由で、粒子線治療の方が、従来の放射線治療よりも治療成績がよくなるのです。

ただし、病巣の周囲に問題となるような正常組織がなければ、粒子線治療でも、従来の放射線治療でも、治療成績は変わりません。

従来の放射線治療であっても、周囲の問題となるような正常組織のことを考慮せず、高線量の放射線を照射できるからです。

X線抵抗性のがんに対しては、陽子線や重粒子線の方が治療効果が高いという側面がある。

陽子陽子線治療、重粒子線治療の方が、通常の放射線治療より破壊力があるというわけではないのです。

ただ、X線抵抗性のがんでは、従来の放射線治療よりも、粒子線治療の方が、がんをより制御できるという側面はあります。

具体的には、以下のようながん種です。

・肉腫

・悪性黒色腫

陽子線と重粒子線の違いは?

一部の情報サイトを見ると、重粒子線治療の方が、陽子線治療よりも、効果があるという記載があります。

しかし、それは誇大な表現であり、実際は、ほぼ同じです。

粒子線治療の効果をより上げるための工夫とは?

先ほど、粒子線治療は、正常組織への被曝量を、かなり減らせると解説いたしました。

それであったとしても、病巣と正常組織が近接しすぎると、正常組織も、かなり被曝します。

できれば、5ミリ〜10ミリくらいのスペースは欲しいところです。

わずか「5ミリ〜10ミリ」が、治療成績に非常に大きな影響を与えることがあるのです。

そして、5〜10ミリのスペースを作るために、スペーサ(商品名:ネスキープ)というものを病巣の横に留置した後に、粒子線治療をすることがあります。

全身麻酔で、外科のドクターが、腹腔鏡、もしくは、お腹を切って、ネスキープを留置するのです。

例えば以下にお示ししたような腫瘍があったとします。

腫瘍と小腸が接しているので、粒子線治療であったとしても、小腸はかなり被曝してしまうために、十分な量の放射線を照射できません。

そこで、手術でスペーサーを留置すると、小腸と病巣の間に距離ができます。

その結果、病巣に、高い線量の放射線を照射できるようになるのです。

すい臓がんにおける粒子線治療を例に出しますと、胃や十二指腸(下降脚)との距離が近すぎることが問題になることがあり、そのようなケースも、スペーサーを入れると、より根治性の高い粒子線治療法ができるようになります。

スペーサーを留置する治療は、保険診療内でできて、スペーサーを留置できる病院は少しずつ増えてきています。

この治療が、もっと広がれば、良いと思います。

執筆医師:加藤隆佑


癌治療認定医
内科学会認定医
消化器病学会専門医
消化器内視鏡学会専門医
肝臓専門医
札幌禎心会病院がん化学療法センター長

(2021年9月までは、小樽協会病院消化器内科に所属)

消化器領域のがん(食道、胃、すい臓、肝臓、胆のう、大腸)を専門としつつ、がん全般についてアドバイスをしています。

緑書房より「抗がん剤治療を受けるときに読む本」と、「大腸がんと告知されたときに読む本」を出版。

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