子宮体がんに、レンビマとキートルーダの併用療法が承認されました。
こんにちは。加藤隆佑と申します。
札幌の総合病院でがん治療を専門にしている医師です。
本日の本題に入らせてもらえればと思います。
子宮体がんに、レンビマとキートルーダの併用療法が承認されました。
手術ができない子宮体がんで、以前に白金系の抗がん剤(カルボプラチンなど)の治療歴のある方に用いることができます。
非常に効果ができる治療法になります。
レンビマとは?
がん細胞は、多くの栄養を必要としているため、新しい血管を作ろうとします。レンビマは新しい血管が、がん細胞の周囲にできることを防ぎ、さらに、がん細胞の増殖に関わる信号をブロックします。
毎日服用する飲み薬です。
通常の抗がん剤治療では、生存期間の中央値は11ヶ月だったところが、この薬剤を用いることにより、生存期間の中央値が18ヶ月に延長することができました。
dMMRの遺伝子異常を持つ子宮体がんの方の場合は、さらに高い治療成績が出ています。
約7%の方が、画像上、がんを消失した状態にもっていけたと報告されています。
キートルーダとは?
免疫チェックポイント阻害薬の1つです。
T細胞という免疫細胞を活性化します。
3週もしくは6週に1回の点滴の薬剤です
この2つを併用した治療になります。
レンビマの副作用
副作用について解説いたします。
1、甲状腺機能低下症
元気がない、疲れやすい、体重増加、便秘といった症状がでます。
定期的に甲状腺機能をチェックする採血をします。
2、高血圧症
約8割の方に出ます。毎日血圧を測定して、高くなったら降圧薬を服用します。
血圧が140以上になるようであれば、医師に報告してください。
血圧が150以上になったら、レンビマを休薬し、降圧薬を追加します。血圧が下がったら、レンビマを1段階減量して再開します。
3、下痢
4、蛋白尿
5、手足症候群
手のひらや足の裏の痛みや腫れ
保湿を心がけることで、症状を緩和したり予防できます。
症状が出たら、写真に撮り、医師に見せてください。
6、吐き気や食欲不振
7、疲労感や倦怠感
8、貧血
カルシウムの数値に異常値が出ることがあるので、カルシウムの数値も定期的にチェックします。
副作用の程度に応じて、レンビマを減量して、副作用を軽減するようにします。
通常は1日1回20ミリグラム飲むお薬ですが、状態に応じて14ミリグラム、10ミリグラム、8ミリグラム、4ミリグラムに減量します。
キートルーダの副作用
免疫細胞が暴走することによって、自分の体の細胞を攻撃してしまうことによる副作用が問題になります。
重症度の高い副作用が出ることの頻度は高くはないですが、もし、生じてしまったら、しっかりとした対応をしないといけません。
代表的な副作用は、以下の通りです。
- 間質性肺炎
- 大腸炎や小腸炎
- 重度の皮膚障害
- 肝炎
- 内分泌障害〜甲状腺機能異常、下垂体機能障害、副腎機能障害
- 1型糖尿病
抗がん剤によく見られる副作用である吐き気や嘔吐、脱毛といった副作用は稀です。
まとめ
レンビマとキートルーダの併用療法は、子宮体癌に非常に効果が期待できる薬剤です。
副作用をしっかり抑える工夫をしながら、治療を受けていくと良いです。
補足)dMMRとは?
細胞分裂の過程では、一定の確率で複製エラーが発生します。したがって、細胞にはこのエラーを修復するミスマッチ修復(MMR)機能が備わっています。
しかし、MMR機能が欠損すると、DNA複製時のエラーが修復されず蓄積されます。そして、がん化につながります。
がん組織中のミスマッチ修復に関するタンパクであるMLH1、PMS2、MSH2、MSH6を調べることで、MMR機能欠損しているかどうかの判定ができます。
もし、どれかが欠損していたら、MMR機能欠損、つまり、dMMRと表現されることになります。
「マイクロサテライト不安定性(MSI-High)固形がん」とも呼ばれます。