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本当は怖くはない放射線治療〜副作用を医師が解説

 2022/05/27 放射線治療  

こんにちは。加藤隆佑と申します。

札幌の総合病院でがん治療を専門にしている医師です。

本日の本題に入らせてもらえればと思います。

放射線治療を受ける際に、体にとても負担を与える副作用がでるのではと、不安になる方は多いです。

しかし、実際のところが、そうではありません。

放射線治療は、かなり、体への負担が少ない治療になります。

本日は、放射線治療に伴う副作用について解説いたします。

肺炎

放射線治療をあてたときに、肺炎になるリスクはあります。

間質性肺炎です。放射性肺臓炎とも言われます。

ただし、肺に放射線をあてなければ、肺炎にはなりません。

仮に肺に放射線治療があたっても、肺にあたる体積が少なければ、万が一、肺炎になっても、命のリスクになるような肺炎にはなりません。

肺にあたる体積が大すぎない限りは、肺炎になっても、ステロイドの投与で、ほぼコントロールできます。

日常生活に支障がでるような後遺症になることは稀です。

ただし、放射線治療を契機に、肺全体が肺炎になることがあります。

たとえば、もともと、間質性肺炎になった既往歴がある方は、放射線治療を契機に、肺全体に間質性肺炎になることがあります。

抗がん剤そのもので、間質性肺炎になることがあり、放射線治療により、間質性肺炎が躍起されることがあるのです。

そのような場合は、命の危険になることが、それなりの頻度であり、注意を要します。具体的には、そのような兆候を早く見つけ、早期に治療をしていく必要があるのです。

たとえば、息切れといった症状がでたら、すぐに主治医に報告してほしいです。

色素沈着、乾燥

放射線治療により、皮膚に色素沈着が生じたり、汗が出にくくなり、乾燥することがあります。

放射線療法を開始すると、皮膚には炎症が起き、日焼けに似た状態になるからです。

炎症は、放射線療法終了後1週間くらいをピークに、1か月程度まで持続します。

また、放射線療法終了、1から2週間ほどすると、炎症がおさまる過程で、皮膚は黒ずみ、かゆみが生じることがあるのです。放射線治療をして半年くらいは、皮膚のくろさが、次第に強くなることがあります。

特に、乳がんの方で、この症状に悩まれる方は多いです。胸は美容上、とても気になる部位だからです。

ただ、保湿を心がけると、年単位で次第に、皮膚はきれいになってきます。

そうなるためにも、しっかりと保湿しましょう。

皮膚の症状に関して、こちらの図がわかりやすいです。

「http://www.com-info.org/medical.php?ima_20180710_ogou」より画像を引用させていただいております。

皮膚の障害に対する対策は?

日常生活で刺激を与えないようにしましょう。たとえば、下着は軟らかい綿の素材のものを用いるとよいです。

入浴時も、照射された皮膚は直接こすらず、石鹸は泡を立ててなでるように洗います。

入浴後は、タオルでゴシゴシ拭かず、押さえるように水分をとります。

刺激を加えると、皮膚がペロッとむけてしまうこともあるからです。

同時に、保湿を心がけて欲しいです。

朝と入浴後には、保湿剤(ヒルロイド軟膏など)を塗ると良いです。

マーキングを消えないようにする

皮膚にマークをつけます。正確な位置に放射線をあてるための目印にするためです。

そのためにも、マークをしたところを、ゴシゴシ洗うことは避けないといけません。

このことは、放射線による皮膚の副作用を回避することにもなります。

ただ、万が一、マーキングが消えそうになったら、技師が、付け加えてくれるので、心配や不要です。

感覚異常

皮膚の感覚が強くなったり、感覚がなくなることもあります。

感覚が異常に強くなることにより、少しさわっただけで痛みが強く出ることがあります。この症状は、なかなかうまくコントロールすることができないことがあります。

肋骨の神経痛が残ることもあります。

肋骨骨折

乳腺にかかるときに、肋骨にも放射線があたります。

1%のくらいの方に、肋骨に骨折することがあります。

痛み止めと、サポーターで対応します。大きな問題になることは稀です。

下痢

子宮頸がん、子宮体がん、膵臓がんの場合に、そうなることが多いです。

上記の場合は、腸に放射線があたりやすく、腸がむくんで、下痢をしやすくなるからです。

下痢止めで対応します。

放射線治療をおえたら、1から2週くらいで落ち着きます。

ただ、ごく一部の方は、長年にわたって腸の調子が悪くなる方もいます。

下痢の改善に、漢方が役立つという報告もあります。

五苓散という漢方です。保険診療で用いることができる漢方です。

2日よい

放射線治療をすることにより、2日酔いのような症状がでることがあります。宿酔(しゅくすい)ともいいます。

体内に放射線という異物が当たることによって起こる反応と考えられています。

治療を受けてから 3 時間経ってから、だるい、眠い、食欲がない、吐き気がするといった症状がでます。

早い人では 、1 回目の治療か ら出現します。

治療が終わるまで続く場合と、治療中におさまる場合もあります。

吐き気に関する頻度と対策

・90%以上の頻度で生じる〜全身照射,全リンパ節照射

対策)予防的にグラニセトロン+ステロイド(デキサメタゾン)

・60%から90%の頻度で生じる〜上腹部,上半身照射

対策)予防的にグラニセトロン+ステロイド(デキサメタゾン)

・30%から59%の頻度で生じる〜頭蓋,頭蓋脊髄,頭頸部,胸部下部,骨盤

対策)予防的または症状が出た時にグラニセトロン

・30%以下の頻度〜四肢,乳房

対策)症状が出た時にグラニセトロン

予防的というのは、例えば、グラニセトロン(2㎎)1錠を放射線治療の1時間前に内服という感じで用います。

本日のまとめ

放射線治療は、抗がん剤に比べると、かなり負担の少ない治療になります。

さらに、最近は、正常の細胞に、なるべく放射線をあてないで照射できる機械がだいぶ普及し、以前よりも、体への負担を減らした照射が、できるようになりました。

放射線治療もうまく利用して、がんを克服していきましょう。

執筆医師:加藤隆佑


癌治療認定医
内科学会認定医
消化器病学会専門医・指導医
消化器内視鏡学会専門医
肝臓専門医・指導医
札幌禎心会病院がん化学療法センター長

(2021年9月までは、小樽協会病院消化器内科に所属)

消化器領域のがん(食道、胃、すい臓、肝臓、胆のう、大腸)を専門としつつ、がん全般についてアドバイスをしています。

緑書房より「抗がん剤治療を受けるときに読む本」「大腸がんと告知されたときに読む本」「がんと向き合うために大切なこと」を出版。

加藤隆佑医師の論文

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