こんにちは。加藤隆佑です。がん治療を専門に総合病院で勤務しています。
本日は、放射線治療に関するお話です。
放射線治療は、どこで治療を受けても、治療成績は同じと思われていませんか?
そうではありません。
どこで受けるかで、治療成績が大きく変わることがあります。
そのような事実を示した論文がいくつかあり、たとえば、ジョン・デイビット医師は、論文で、治療実績が多いところほど、治療成績が良いという報告をしています。
「病巣になるべくたくさんの放射線をあてて、他の部位には極力放射線を当てないようにする。」
これは、全ての放射線治療医が、意識していることなのですが、そのテクニックに病院、そして個人における差があります。
放射線治療による副作用の出方も、医師の技術が反映されます。
例を挙げてご説明いたします。
ドカンと大量の放射線を照射するピンポイント照射(定位照射)という方法があります。
少しでも多くの放射線をあてた方が、がんの制御率は上がります。
そして、工夫を凝らした治療をしている施設では、がんに、よりたくさんの放射線を照射しています。
下の図は、どちらも定位照射なのですが、工夫をした照射法の方が、がんに当たる放射線量が高いです。
そして、がんに当たる放射線量が高いほど、がんの制御率が高くなります。
別の例を提示します。
直腸がんが、肝臓に転移した場合に、「完全ながん消失」を目指した放射線治療を、肝臓に転移した直腸がんに対して行うことがあります。
しかし、がんの制御率が非常に悪いです。
たかだか2cmにも満たないがんが、放射線をあててもビクともせず、愕然としてしまうことも珍しくありません。
しかし、照射法を非常に工夫したごく一部の施設では、ほぼ100%の確率でがんの制御に成功しています。
放射線治療というは、病院によって、治療成績が大きく異なることがあり、施設を選ぶということがとても大事になるのです。
選択の基準の1つが、治療実績の数が多いことです。
ただし、放射線治療を緊急でしないといけない局面があります。そのような時には、施設を選ぶというよりも、治療をしていただけるところで、治療をしないといけません。
また、治療内容によっては、どこで治療を受けても、効果に大きな違いがないこともあります。