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胃がん、すい臓がんの手術後の、栄養療法と体調不良の解決法を医師が解説

 2023/04/19 胃がん 膵臓がん  

こんにちは。加藤隆佑です。

札幌でがん治療を専門にしている医師です。

本日は、胃がん、すい臓がんの手術後の、栄養管理で知って欲しいことをまとめました。

栄養管理をしっかりすることで、より良い治療結果になりますので、読んでいただけると幸いです。

胃がん手術後の注意点

胃がんの術後は、体重が10から20%落ちることがあります。胃がんの術後に、1年間近く抗がん剤をしないといけないこともあり、体重を維持することが大事です。

もし、体重が落ちる兆候があるときには、ラコールに代表される半消化帯(吸収しやすい形態の栄養剤)を摂取することにより、体重の低下を軽減することができます。

ただ、ラコールの味が口に合わない、下痢が悪化するといった理由で、全ての人にとって、ラコールが体に合うわけではありません。

ラコールを飲むことで体重減少を抑えることを検証する臨床試験では、半数の人しか、ラコールを毎日飲み続けることができませんでした。

ラコールを飲み続けて体調が問題ない方が、ラコールを飲むことにより体重減少を低下させることができるということになります。

胃がんの術後に体重が減る方は、ラコールは試みる価値が高いことです。

ダンピング症候群

食べ物が、急速に十二指腸や小腸に流れ込むことにより現れる症状をダンピング症候群と言います。

早期ダンピング症候群

急速に十二指腸や小腸に流れ込み、腸への血流が増え、相対的に、脳への血流が減ることにより生じます。

症状としては、食後30分以内に、強い眠気・動悸・発汗・めまい・脱力感が起こり、ひどいと失神することがあります。

食前に、抗ヒスタミン薬(塩酸シプロヘプタジン、塩酸ホモクロルシクリジン)、オキセサザインが有効とされています。

後期ダンピング症候群

胃切除後の1割くらいの方に見られる症状です。

腸に炭水化物が急速に流れ込み、高血糖になり、インスリンが過剰に分泌されて、低血糖症状を起こします。

食後2から3時間後に、全身倦怠感・発汗・めまい・脱力・失神が起こります。

「大食い」と「早めし」を避けることが大事です。

さらに、糖尿病治療薬であるアルファーグリコシターゼ阻害薬が有効なことがあります。

貧血

食道がん術後や、胃がんの術後には、鉄欠乏性貧血になることがあります。胃酸の分泌量が減り、鉄の吸収障害が生じるからです。

さらに、胃の全摘後の場合は、ビタミンB12の吸収障害が起こり、それによる貧血が起こることもあります。

定期的に、貧血が悪化しないかを、採血検査で見てもらいことが大事です。

もし、採血でヘモグロビンの低下(つまり、貧血)を認めたら、鉄の補充、もしくはビタミンB12の補充をしてもらうことが大事です。

骨代謝障害

胃がん術後は、ビタミンDの吸収障害が生じ、それにより骨粗鬆症になる事があります。

日光浴と運動によるビタミンDの生成を促すことが大事です。

たまに骨粗鬆症になっていないかの検査を受けましょう。

胃の内容物の排出障害

胃の手術後に、胃の内容物が外に出にくくなることがあります。

約5から10%の方に、そのようなことが生じるとされています。

胃の動きをよくする薬を追加すると良いです。

下痢

手術の後に、下痢になりやすくなることがあります。

理由は様々ですので、割愛いたしますが、内服による対処法をお伝えします。

大腸の手術後

タンニン酸アルブミン、ロペラミド、アヘンチンキ

胃の手術後

胃の手術後に、乳糖不耐症になることがあります。それが原因の場合は、乳糖を避けることが大事です。

薬物療法ですと、ガランターゼ、ミルラクトという乳糖分解酵素薬を用いることになります。

膵臓の術後の下痢

アヘンチンキが有効です。

アヘンチンキを1日あたり0.9mlからスタートし、便回数が減るまで増やします。

こちらの論文に、この点に関して詳しい記載があります。

すでに医療用麻薬(モルヒネなど)を飲んでいる方が下痢に悩まされた時に、以下のように医師から言われることがあります。

「モルヒネを飲んでいるから、医療用麻薬にも分類されるアヘンチンキを飲んでも、下痢は改善しないと思います」

このことに対する回答ですが、アヘンチンキの主成分は確かにモルヒネですが、他の成分を複数含んでいます。他の成分が下痢止めとしての機能を持っています。

その結果、モルヒネを飲んでいるかたで下痢に悩まされていても、アヘンチンキを飲むことで下痢が改善することがあるのです。

膵臓を切除した場合に出てくる症状

膵臓を切除すると、インスリンの分泌量が減り、糖尿病になることがあります。

血糖の管理をしていき、必要に応じて薬物を用いることも大事となります。

膵外分泌機能不全と脂肪肝

膵臓を切除すると、膵臓から分泌される消化酵素が減ります。

消化酵素を補充することで、栄養状態を改善することが期待できます。

リパクレオンという薬を処方してもらうと良いです。

 

参考文献:Long-Term Outcome of Patients with Postoperative Refractory Diarrhea After Tailored Nerve Plexus Dissection Around the Major Visceral Arteries During Pancreatoduodenectomy for Pancreatic Cancer

 

 

 

執筆医師:加藤隆佑


癌治療認定医
内科学会認定医
消化器病学会専門医・指導医
消化器内視鏡学会専門医
肝臓専門医・指導医
札幌禎心会病院がん化学療法センター長

(2021年9月までは、小樽協会病院消化器内科に所属)

消化器領域のがん(食道、胃、すい臓、肝臓、胆のう、大腸)を専門としつつ、がん全般についてアドバイスをしています。

緑書房より「抗がん剤治療を受けるときに読む本」「大腸がんと告知されたときに読む本」「がんと向き合うために大切なこと」を出版。

加藤隆佑医師の論文

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