膵臓癌の検査の方法と費用ならびに検査の期間を医師が解説!楽に検査を受ける秘訣とは?
こんにちは。加藤隆佑です。総合病院でがん治療を専門として働いています。
もし、あなたが、膵臓がんを疑わせる症状がある時は、検査を受けて欲しいです。
膵臓がんは、早期発見できれば、完治が望める病気だからです。
本日は、膵臓の診断のために、必要な検査と費用について、解説いたします。
同時に、私の18年間の膵臓がん治療の経験をもとに、楽に検査を受ける方法と、膵臓がんを克服するコツを説明いたします。
Contents
膵臓がんの初期症状(自覚症状)
膵臓は、胃の後ろの深部にあります。がんが発生しても症状が出にくく、早期の発見は非常に難しいです。しかし、早期の段階で見つかることも、あります。
症状がでるとしたら、腹痛、食欲不振、黄疸(体が黄色くなること)、腰や背中の痛みです。すい臓がんのために、糖尿病を発症することもあります。
しかし、これらの症状は、すい臓がん以外の理由でも起こることがあります。いづれにせよ、このような症状のときは、病院で検査を受ける必要があります。
膵臓がんが疑われた時に行う検査
超音波検査、CTを行います。
膵臓がんの腹部エコー検査
超音波を発生する機械を、おなかにあて、お腹の中を観察します。
痛みはなく、負担が少ない検査です。
エコー検査で膵臓を観察することができますが、患者さんの体形や状態によっては、膵臓をくまなく観察できないことがあります。
特に膵臓の尾部(膵臓のハジの部分)は、腹部エコーにより、しっかり調べることが難しい部位です。
膵臓がんのCT検査
膵がんを示唆する所見が無いか?を確認するために、CT検査をします。
もし、膵がんを示唆する所見があったら、以下のことも、確認します。
- 画像所見から、膵がんとして矛盾しないか?
- 膵がんが、遠くの臓器(肺や肝臓)への転移はないか?
- 膵臓から遠く離れたリンパ節への転移はないか?
- 膵臓の周りの臓器(十二指腸や腎臓)へ、膵臓がんが浸潤していないか?
- 膵臓がんが、上腸間膜動脈といった重要な血管に浸潤していないか?
- 腹水はないか?
CT検査は非常に重要な検査です。
大半のケースは、これだけの検査で、膵がんの診断ならびに、膵がんの広がりが、分かります。さらに治療方針の大まかなことを判断できます。
もし、これらの検査で、膵がんを疑わせる所見がなければ、一安心できます。
ただし、非常に早期の膵がんは、これらの検査であっても、発見できないことはあります。したがって、早期の膵がんの存在を完全に否定できなければ、経過を追う必要が出てきます。
つまり、定期的に、検査を受けて、膵がんを示唆する所見が出現しないかを、確認するということです。
さて、典型的な膵がんであれば、画像診断だけで、診断はできます。
しかし、念のために、内視鏡を用いて細胞を採取する検査を行い、細胞レベルでも、膵臓がんであることを確認した上で、治療に踏み切るケースことが多いです。
そこで、次に、内視鏡検査について、説明していきます。
膵臓がんの内視鏡検査
膵臓がんの内視鏡検査をする目的は、2つあります。
1つ目は、膵がんの細胞採取を試みるためです。このときに用いられる機械は超音波内視鏡です。
超音波内視鏡検査による膵がんの細胞採取とは?
超音波装置の付いた内視鏡を口から入れます。
そして、胃や十二指腸の中から、超音波を出すことにより膵臓の腫瘍の部分を描出します。
次に、腫瘍の部分に針を刺して、腫瘍の細胞を採取します。
穿刺吸引細胞診(EUS-FNA)といいます。
太い内視鏡を用いるので、非常に苦しい検査となります。
そこで、検査の際には、少し眠くなる薬を注射することによって、楽に検査を受けられるようにします。
検査時間は30分前後です。
採取した細胞を顕微鏡で調べて、癌かどうかを確認します。
もし顕微鏡で、採取した細胞に、がん細胞を認めなくても、CT所見などから膵がんが強く疑われる場合には、手術をすることもあります。
膵がんによって黄疸が出現した場合も、内視鏡検査が有効です
膵臓がんが発見されるきっかけの1つが、黄疸という症状がでることです。
黄疸がでる理由は、胆汁の流れ道である胆管というところに、膵がんが浸潤するからです。その結果、胆汁がスムーズに流れなくなり。黄疸がでるのです。
このような場合には、内視鏡治療によって、膵がんによって生じた黄疸を、良くすることができます。
内視鏡によって、狭窄した胆管にステント(ストローのようなもの)を留置すると、黄疸は治ります。
ステントの中を通って、再び胆汁はスムーズに流れるようになるからです。
この治療は胆汁の流れをスムーズにするだけであり、膵がんそのものの治療ではありません。
胆汁がスムーズに流れるようになったら、手術や抗がん剤による治療を検討します。
この内視鏡検査は、検査時間が30から60分と、やや長い時間がかかります。
そこで、検査の際には、少し眠くなる薬を注射することによって、楽に検査を受けられるようにします。
次に、膵がんが疑われる時に行われる、血液検査の詳細を説明していきます。
膵臓がんにおける血液検査とは?
血液検査によって、以下のことがわかります。
腫瘍マーカー
膵臓がんではCEAやCA19-9と呼ばれる腫瘍マーカーなどを検査します。
がんがあっても、必ずしも腫瘍マーカーが上昇するとは限りません。
腫瘍マーカーは、手術後の再発のチェックや抗がん剤治療の効果判定の参考に使われます。
臓器の機能が正常化かどうか?
腎機能や肝臓の機能を確認します。
もしこれらの臓器の機能が低下しているようであれば、手術や抗がん剤治療による合併症が起こりやすくなります。
糖尿病がないかどうかも、チェックします。
糖尿病があり血糖値が高いときは、膵臓がんの治療の前に、糖尿病の治療を優先しないといけないこともあります。
手術ができる段階の膵臓がんとは?
以下のような状況であれば、膵臓がんを手術で取り除けることになります。
- リンパ節の転移が膵臓の周囲にとどまってる。
- 肝臓や肺といった臓器に転移がない。
- お腹の中に、膵臓がんが、ばらまかれている所見(腹水など)がない。
- 膵臓がんが、上腸間膜動脈といった重要な血管に浸潤していない。
ただし、「お腹の中に、膵臓がんが、ばらまかれていないか?」は、実際にお腹の中を見てみないとはっきりしないこともあります。
そこで、手術の際に、審査腹腔鏡という検査をして、「お腹の中に、膵臓がんが、ばらまかれていないか?」を確認した上で、膵臓の切除に臨むケースが多いです。
膵臓がんの審査腹腔鏡検査とは?
審査腹腔鏡とは、お腹に小さな穴をあけて、そこから腹腔鏡というカメラを挿入して、お腹の中に膵臓がんが、ばらまかれていないかを確認する検査のことです。
膵臓がんの検査費用と、検査の期間は、どのくらいかかるのか?
実際の膵臓がんの外科的な手術を行った患者さんの事例で、検査費用をお示しします。
(患者様の置かれている状況や、病院によって、実施される検査内容が異なります。1つの目安としてご覧ください。)
初診料:約3000円
再診料:約700円
超音波検査:約3500円
CT検査:約16000円
MRI検査:約18500円
採血検査:約10000円
ここまでの検査は2日ほどで終わります。
今回のケースは合計51700円かかっています。
(実際の負担額は1割から3割です。)
以上の検査で、膵がんが強く疑われたので、さらに、以下の検査に進みます。
膵臓がんの細胞採取のための、超音波内視鏡を用いた検査(EUS-FNA):約48000円
採取した細胞を、顕微鏡で確認する検査(病理検査):約15000円
ちなみに、膵臓がんの細胞採取のための、超音波内視鏡を用いた検査(EUS-FNA)は1泊2日で行われることが、多いです。
手術をすることになったので、さらに、以下の検査を行うことを行いました。
PET検査骨:約75000円
胸のレントゲン写真:約2100円
肺活量の検査:約2000円
心電図検査:約1300円
検査に、だいたいこのくらいの費用がかかることになります。
ここまでで合計「195000円+入院費用」となります。
(実際の負担額は1割から3割です。)
それなりに高額になります。
そこで、お金の負担を減らすためのコツは、こちらで解説しています。
参考:『膵臓がん 受診から診断、治療、経過観察への流れ』国立がん研究センターがん報サービス
参考:膵がん診療ガイドライン