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陽子線治療や重粒子線治療のがんに対する効果、保険適応そして費用を医師が解説

 2021/01/20 放射線治療コラム  

こんにちは。加藤隆佑です。

日本には、粒子線がん治療施設が25ヵ所あります。それらの治療を適切に用いれば、がんの制御に、とても役に立ちます。

粒子線治療が適当となるがんは?

保険診療で、粒子線治療が受けられる、がんは、以下の通りです。

・前立腺がん

条件として、リンパ節や他臓器に転移がないこと

・頭頸部腫瘍〜悪性黒色腫、腺様嚢胞がん、扁平上皮がん(口腔・咽喉頭を除く)

条件として、他臓器に転移がないこと

・骨軟部腫瘍

条件として、他臓器に転移がないこと

・小児腫瘍

原発性腫瘍または転移性腫瘍。

・肝細胞がん

条件として、手術不能かつ長径4cm以上がないこと

・肝内胆管がん

条件として、手術不能で、遠隔転移がないこと

・局所進行膵がん

条件として、手術ができず、他臓器に転移がないこと

・大腸がん局所再発

条件として、切除困難な術後局所再発であること

次に、先進医療で粒子線治療が受けられるのは、以下の通りです。

  • 肺がん
  • 膵臓がん
  • 肝細胞がん(4cm未満)
  • 子宮頚がん、子宮体がん
  • 食道がん
  • 腎臓がん
  • 再照射
  • 転移性腫瘍

これらの癌に対しては、粒子線治療を受けることができるのです。

ただし、がんが一部分にとどまっていることが、最低条件になります。

全身に散らばっている場合ですと、粒子線治療の適応はありません。

ちなみに先進医療とは、高度の医療技術を用いた治療法や医療技術のうち、公的医療保険の対象にはなっていないものの、有効性や安全性について一定の基準を満たしたものをいいます。

つまり、医療費の自己負担額は、それほど高い額面にならないということです。

ちなみに、粒子線治療は、重粒子治療と陽子線治療に、分けられます。

はじめに、この違いについて解説します。

重粒子治療と陽子線治療の違いについて

炭素イオンを加速させて、病変にぶつけるのが、重粒子線治療です。

また、水素という最も軽い元素の原子核を加速させたものを病変にぶつけるのが、陽子線治療です。

がん細胞に対する殺傷能力はX線と比較すると重粒子線は2~3倍、陽子線は1.1倍であるとされています。

従って、粒子線治療は通常の放射線治療では効果が得られにくいとされるがんに対しても治療効果は期待できます。

そして、重粒子線と陽子線による治療を比べると、効果はほぼ同じと言われています。

しかし、病変が小腸や十二指腸と数ミリ程度しか距離がない場合は、粒子線を十分な量を、当てることができないために、粒子線治療がなされないことがあります。

粒子線治療のがんに対する効果は?

手術に匹敵する効果があるとされています。

手術が難しい場所であっても、粒子線をしっかり照射できれば、手術に匹敵した効果を期待できるということです。

粒子線治療にかかる費用は?

300万円前後かかるケースが多いです。そして、先進医療の場合は、全額自己負担となります。

保険診療の場合は1から3割負担です。その場合は、高額療養費制度も適応されます。

粒子線治療を受けられる病院はどこ?

粒子線 陽子線 場所 病院名
北海道 北海道北海道大学病院陽子線治療センター
北海道 札幌禎心会病院陽子線治療センター
北海道 北海道大野記念病院 札幌高機能放射線治療センター
福島県 南東北がん陽子線治療センター
群馬県 群馬大学医学部附属病院 重粒子線医学研究センター
山形県 山形大学医学部東日本重粒子センター
茨城県 筑波大学附属病院 陽子線医学利用研究センター
千葉県 国立がん研究センター東病院
千葉県 量子科学技術研究開発機構QST病院(旧放医研病院)
神奈川県 神奈川県立がんセンター 重粒子線治療施設
神奈川県 湘南鎌倉総合病院先端医療センター陽子線治療室
長野県 相澤病院 陽子線治療センター
静岡県 静岡県立静岡がんセンター
愛知県 社会医療法人明陽会 成田記念陽子線センター
愛知県 名古屋陽子線治療センター
大阪府 大阪重粒子線センター
大阪府 大阪陽子線クリニック
京都府 京都府立医科大学 永守記念最先端がん治療研究センター
奈良県 高清会陽子線治療センター
福井県 福井県立病院 陽子線がん治療センター
奈良県 社会医療法人 高清会 陽子線治療センター
兵庫県 兵庫県立粒子線医療センター
兵庫県 兵庫県立粒子線医療センター付属神戸陽子線センター
岡山県 岡山大学・津山中央病院共同運用 がん陽子線治療センター
佐賀県 九州国際重粒子線がん治療センター
鹿児島県 メディポリス国際陽子線治療センター

もし安全に受けられるならば、粒子線治療は非常に試みる治療です。

粒子線治療も利用して、がんを克服していきましょう。

もしかしたら、粒子線治療の適応がない状態のこともあるでしょう。

そのようなときであっても、がんの増殖を抑えるために、効果的な治療があります。

その詳細は、こちらです。

 

 

 

 

参考文献

筑波大学附属病院 陽子線治療とは
http://www.pmrc.tsukuba.ac.jp/pm.html
国立がん研究センター 東病院 陽子線治療の概要
https://www.ncc.go.jp/jp/ncce/clinic/radiation_oncology/consultation/pbt/about.html
国立がん研究センター 東病院 分野別治療方針
https://www.ncc.go.jp/jp/ncce/clinic/radiation_oncology/consultation/pbt/treatment_policy.html
南東北がん陽子線治療センター 陽子線治療の基本的な条件
http://www.southerntohoku-proton.com/conditions/conditions.html
名古屋陽子線治療センター 治療できるがん
http://www.nptc.city.nagoya.jp/proton/cancer.html
筑波大学附属病院 陽子線治療の流れ
http://www.pmrc.tsukuba.ac.jp/flow.html
南東北がん陽子線治療センター 治療の流れ
http://www.southerntohoku-proton.com/conditions/flow.html
名古屋陽子線治療センター Q&A よくある質問とその回答
http://www.nptc.city.nagoya.jp/qanda.html
厚生労働省 「先進医療 A として実施した粒子線治療(陽子線治療,重粒子線治療)について」
https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12401000-Hokenkyoku-Soumuka/0000183158.pdf
厚生労働省科学研究費補助金がん対策推進総合研究事業
小児・若年がん長期生存者に対する妊孕性のエビデンスと生殖医療ネットワーク構築に関する研究 用語の説明
http://www.j-sfp.org/ped/termlist.html
書籍:
重粒子線治療・陽子線治療 完全ガイドブック 編集協力 辻 比呂志、櫻井英幸 2016年7月27日 第1版発行 株式会社法研

九州国際重粒子線がん治療センター SAGA HIMAT 重粒子線がん治療
https://www.saga-himat.jp/actual.html
群馬大学 重粒子線医学研究センター 重粒子線の特徴と施設
http://heavy-ion.showa.gunma-u.ac.jp/page.php?id=2
九州国際重粒子線がん治療センター SAGA HIMAT 治療の範囲
https://www.saga-himat.jp/actual/_1052.html
群馬大学 重粒子線医学研究センター 重粒子線治療の適応となる疾患
http://heavy-ion.showa.gunma-u.ac.jp/page.php?id=9
群馬大学 重粒子線医学研究センター 受診を希望される方へ
http://heavy-ion.showa.gunma-u.ac.jp/page.php?id=3
群馬大学 重粒子線医学研究センター 重粒子線治療の保険診療・先進医療に関する新しい診療体制について
http://heavy-ion.showa.gunma-u.ac.jp/page.php?id=22
群馬大学 重粒子線医学研究センター 治療費について
http://heavy-ion.showa.gunma-u.ac.jp/page.php?id=6
放射線医学総合研究所病院 よくあるご質問
http://www.nirs.qst.go.jp/hospital/qa/index.shtml
神奈川県立がんセンター 重粒子線治療施設 治療対象部位 頭頸部
http://kcch.kanagawa-pho.jp/i-rock/concern/toukeibu.html
書籍:
重粒子線治療・陽子線治療 完全ガイドブック 編集協力 辻 比呂志、櫻井英幸 2016年7月27日 第1版発行 株式会社法研

参考資料:医用原子力技術研究振興財団ホームページ 

参考資料:厚生労働省HP〜粒子線治療の取扱いについて 

執筆医師:加藤隆佑


癌治療認定医
内科学会認定医
消化器病学会専門医・指導医
消化器内視鏡学会専門医
肝臓専門医・指導医
札幌禎心会病院がん化学療法センター長

(2021年9月までは、小樽協会病院消化器内科に所属)

消化器領域のがん(食道、胃、すい臓、肝臓、胆のう、大腸)を専門としつつ、がん全般についてアドバイスをしています。

緑書房より「抗がん剤治療を受けるときに読む本」「大腸がんと告知されたときに読む本」「がんと向き合うために大切なこと」を出版。

加藤隆佑医師の論文

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