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卵巣がんの腹腔内化学療法について医師が解説

 2024/10/28 卵巣がん  

こんにちは。加藤隆佑です。札幌の総合病院で、がん治療を専門に勤務しています。

卵巣がんの腹腔内化学療法について解説いたします。この治療法は、進行卵巣がんの患者さんにとって有望な選択肢の一つです。

腹腔内化学療法は、どのような治療法か?

腹腔内に、直接、抗がん剤を散布することにより、腹膜に転移しているがんを、制御することを試みる治療法です。

抗がん剤をお腹に中に注入するために、皮下にポートを埋め込む必要があります。

そうすることにより、お腹の中に、容易に抗がん剤を投与することができるようになります。

そして、卵巣がんは腹腔内に広がりやすい特性があるため、この方法が効果的とされています。

治療の特徴

投与方法: 皮下に埋め込んだポートを通じて、抗がん剤を腹腔内に直接注入します。

使用薬剤: カルボプラチンという薬剤が主に使用されます。

併用療法: 通常、静脈内投与と併用して行われます。パクリタキセルという薬剤が用いられることが多いです。

腹腔内化学療法のメリット

局所的高濃度: 腹腔内に直接投与することで、がん細胞周囲の薬剤濃度を高く維持できます。

再発リスクの低下: iPocc(アイポック)試験の結果によると、再発リスクが17%減少することが示されています。

ただし、合併症(腹痛、腹腔内感染、ポート感染)のリスクが約10%程度認められましたので、そのような合併症を生じた場合には、抗生物質の投与や、留置したポートの抜去を検討する必要があります。

今後の展望

現在、この治療法は保険適用外ですが、適用に向けて準備が進められています。

従来の静脈投与による化学療法(TC療法)と腹腔内化学療法を比較すると、副作用の程度が同じうえに、腹腔内化学療法の方が治療効果が高いと考えられます。

1日も早く保険診療で用いることができるようになると良いと思います。

 

参考資料:Intraperitoneal Carboplatin for Ovarian Cancer – A Phase 2/3 Trial

執筆医師:加藤隆佑


癌治療認定医
内科学会認定医
消化器病学会専門医・指導医
消化器内視鏡学会専門医
肝臓専門医・指導医
札幌禎心会病院がん化学療法センター長

(2021年9月までは、小樽協会病院消化器内科に所属)

消化器領域のがん(食道、胃、すい臓、肝臓、胆のう、大腸)を専門としつつ、がん全般についてアドバイスをしています。

緑書房より「抗がん剤治療を受けるときに読む本」「大腸がんと告知されたときに読む本」「がんと向き合うために大切なこと」を出版。

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