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古い抗がん剤でも、工夫をすれば効果がでることがある。それはどんな抗がん剤?

 2021/01/23 ハイパーサーミア(温熱療法)  

こんにちは。加藤隆佑です。がん治療を専門に総合病院で勤務しています。

本日も、戸畑共立病院のがん治療センター長の今田肇先生に、ハイパーサーミアに関する記事を監修していただきます。

今田肇先生は、ハイパーサーミアの治療の先駆者であり、私がこれまでがん治療を専門にする医師をたくさん見てきました中で、全国で5本の指に入るドクターでもあると考えています。

古い抗がん剤を用いて、治療の選択肢を増やす方法とは?

古い抗がん剤で、最近用いられなくなった治療法があります。

それは、「5FU+ロイコボリン」という2種類の抗がん剤による治療法です。

もう少し正確な表現をしますと、大腸がんや胃がんでは、「5FUとロイコボリンに、さらに1から2種類の抗がん剤を加えたレジメン」は、よく用いられます。

しかし、「5FU+ロイコボリン」だけによる治療は最近されなくなったのです。その理由は、5FU+ロイコボリン+別の抗がん剤」の方が、治療成績がよくなったからです。

1つ例を提示して説明します。

大腸がんでは、以下のような流れの治療が、なされることがあります。

「5FU+ロイコボリン+オキサリプラチン+アバスチン」

上の治療が無効になったら

「5FU+ロイコボリン+イリノテカン+アバスチン」

もし、この2種類による治療の効果がなくなったときに、「5FU+ロイコボリン」だけによる治療の効果がでると、誰が期待するでしょうか?

しかし、効果がでることがあるのです。

ハイパーサーミア+高圧酸素療法を併用して、「5FU+ロイコボリン」による治療を行うのです。

ハイパーサーミアに関しての基本的なことは、こちらをご参照ください。

実際の事例を紹介します。

胃がんで肝臓に複数の転移がある方の腫瘍マーカーの推移のグラフです。


(画像は、今田肇氏より許可を得て使用)

当初はがんを制御できていましたが、昨年秋に抗がん剤に対して耐性ができました。いきなり腫瘍マーカ(CA19-9)が、13000台まで上昇しました。

細かな治療経過は伏せますが、ハイパーサーミア・高気圧酸素療法に放射線治療を追加して一気に腫瘍マーカは低下しました。そして、その後は再度上昇傾向になりました。もうあらゆる薬剤を使ってきたのですが、古典的な「5FU+ロイコボリン」療法は行っていませんでした。

そこで、2か月間、「5FU+ロイコボリン」療法と温熱療法・高気圧酸素療法を行いましたところ、一気に正常値近くまでマーカは低下、画像でも病巣はもうわかりません。

今田医師の病院では、この忘れられた2剤が、胃がん、大腸がんの治療で大活躍しています。

何といっても副作用が少ない、骨髄抑制なし、脱毛なし、末梢神経障害なし、あるとすれば色素沈着程度。治療当初からこの治療法を使用することはありませんが、薬がなくなってきたら、この治療を試みます。

実際にデータをとりましたら、以下のような結果になっています。

(画像は、今田肇氏より許可を得て使用)

このグラフは、標準的な治療ができなくなった方に、ハイパーサーミアと高圧酸素療法を併用して「5FU+ロイコボリン」による治療を行なった結果の治療成績を示したものです。

病状制御率は83%、中間生存期間41.6ヶ月、5年生存率は33.3%でした。

副作用も非常に軽微でした。

ハイパーサーミアと高圧酸素療法を併用して「5FU+ロイコボリン」を投与することは、大腸がんや胃がんに対して試みる価値が高い治療の選択肢です。

患者さんにとって、新しい治療の選択肢が増えることを意味します。

ただ、なかなかハイパーサーミアと高圧酸素の両方を併用することは難しいでしょう。

その場合は、ハイパーサーミアだけでも良いから併用して治療を受けてください。

最後に、今田医師と加藤医師の対談記事をご紹介します。

今田肇医師と加藤隆佑医師の対談記事

(加藤医師)

今田先生、記事を監修していただきありがとうございました。

すごいですね!

その一言につきます。

胃がんと大腸がんで、困ったときには、「5FU+ロイコボリン+ハイパーサーミア+高圧酸素療法」を覚えておきます。

具体的には、どのような量を用いるのですか?

(今田医師)

5-FU 1000mg、ロイコボリン 350mgを隔週、もしくは5-FU 750mg、LV 250mgを3投2休が多いですね。大腸がんではアバスチンという分子標的薬を併用することが多いです。

(加藤医師)

ありがとうございます。

実は、私も古い薬剤で最近用いられなくなった抗がん剤であるエンドキサンという飲み薬や、ラステットという飲み薬を漢方と併用することが多いです。

古い薬でも、馬鹿にできないことは、これまでの診療から感じます。

(今田医師)

そうですね。

新しい治療をとりいれつつ、昔ながらの薬も生かしながら診療をしていくとよいですよ。

(加藤医師)

本日も、大切なことを教えていただいて、ありがとうございました。

対談後の更新情報

私は2022年10月からハイパーサーミアの機械を持つ施設に赴任し、この治療法を取り入れました。

私の施設では、大腸がんの方の場合は、以下のような感じで治療をしています。

病気の勢いが落ち着いている時は、8日目の治療を省略しています。

そして、今田先生から教えていただいたような治療結果が出ています。

副作用もほとんどないですし、とてもすごい治療だと感じています。

監修医師:今田肇
戸畑共立病院がん治療センター長

専門領域

放射線科診断治療、化学療法、温熱療法

資格

日本医学放射線学会放射線治療専門医
日本放射線腫瘍学会放射線治療専門医
日本ハイパーサーミア学会指導医
日本がん治療認定医機構暫定教育医
臨床研修指導医

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