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メトホルミンは、がん治療にも非常に有効な可能性が高い薬剤です。

 2022/09/10 漢方  

こんにちは。加藤隆佑と申します。

札幌の総合病院でがん治療を専門にしている医師です。

本日の本題に入らせてもらえればと思います。

メトホルミンは、がんの治療において、非常に役立つ可能性を秘めた薬剤です。

メトホルミンは、糖尿病治療薬の1つです。

なぜ、がんの治療に役立つか疑問に思われるかもしれません。

そこで、がん治療におけるメトホルミンの役目について解説します。

メトホルミンという薬は?

メトホルミンは、ビグアナイドという薬剤に分類されます。

この薬剤の開発のきっかけは、ガレガ草という薬草です。

中世ヨーロッパでは、糖尿病症状の緩和にガレガ草が使用されていました。

そして、ガレガ草の薬効に重要や成分であるグアニジンの作用を強めようとして、製品開発がされ、1950年代にビグアナイド系薬が開発されました。

メトホルミンの薬効は?

1、血糖値をさげる

インスリンの作用を増強して、糖の取り込みを促進します。腸管でのブドウ糖の吸収を抑制する作用もあります。

かなり、長い歴史をもつ薬剤で、この薬剤が使われる過程で、がんの発生率を抑えることが明らかになっています。

2、がんの予防効果

たとえばですが、台湾で実施された80万人を対象にした研究では、この薬剤を内服してる糖尿病の方は、この薬剤を内服していない方に比べて、大腸がん・肝臓がん・胃がん・膵臓がんの発生率の発生率が半分でした。

2型糖尿病があって血糖降下剤を服用していないグループでは、が約2倍くらいに高く、メトホルミンの服用によって非糖尿病グループのレベルに低下することが報告されています。

糖尿病の方がメトホルミンを服用することにより、膵がんのリスクを 62 %低減できるというデータもあります。

3、抗がん作用の増強

抗がん作用の増強を期待できるというデータもあります。

2009年の臨床データで、以下のようなものがあります。

・・・・

糖尿病をもつ乳がん患者における術前化学療法において、メトホルミンを内服させた方が、がんの消失率が高く、その差は統計的に有意であった。

・・・・・

糖尿病でない方であっても、この薬剤を飲むことにより、低血糖がおこる頻度は極めて少なく安全な薬といえます。

ちなみに、「メトホルミンとがん」というキーワードで論文を調べると、6517個の論文を見つけることができます。

がんの領域において、注目されている薬剤といえるでしょう。

メトホルミンの副作用で気を付けることは?

乳酸アシドーシスに注意しないといけません。

乳酸アシドーシスとは、血中に乳酸が過剰に蓄積される状態です。この状態の血液は、酸性に傾いています。

その結果、昏睡状態となり、その死亡率は50%にもなります。

初期症状は、悪心・嘔吐・腹痛といった胃腸症状、筋肉痛、倦怠感、脱力などです。

ただ、頻度は極めて低いですし、そのようなこともあり、日本では、幅広く使われている薬剤です。

腎機能が低下している場合にも、注意深く使わないといけませんが、最近、腎機能が低下していても、eGFRという数値が30以上あれば、安全に使えるケースが多いことがわかってきています。

デメリットよりも、メリットが大きく上回る薬剤といえるでしょう。

ただし、副作用のリスクを抑えるために、以下の4点は注意してもらっています。

1、のんで体調がよくないとき(吐き気など)

薬が体質に合わないということで、やめること。

副作用で胃腸症状が出る頻度が少し高く、1割から2割くらいの方が、下痢になると言われています。

軟便程度であれば許容範囲ですが、下痢になるようであれば、体質的に合わないのかもしれません。

そして、少なめの量からメトホルミンを開始することで、胃腸症状が発生する頻度を減らすことができるとも言われています。

2、CTの造影剤の検査をうけるときは、とめること。

造影剤の検査の2日前から休薬し、造影剤の検査をおえて2日間あけてから、再開。

乳酸アシドーシスという副作用のリスクをへらすため。

3、脱水といった体調のよくないときは、のまないようにする。

乳酸アシドーシスという副作用のリスクをへらすため。

4、腎機能が、メトホルミンを内服する基準に該当しない場合は、服用しない。

がんの治療におけるメトホルミンの内服する量は?

500から750ミリグラムです。

漢方を中心にてがん治療をうけているときに、漢方にメトホルミンを追加することで、腫瘍マーカーが低下する事例も、私は複数経験しています。

漢方とメトホルミンの相性は良いと考えています。

抗がん剤とメトホルミンとの相性もよいです。

メトホルミンには、がんを制御に役立つといえます。

 

 

 

参考論文

・Type 2 diabetes increases and metformin reduces total, colorectal, liver and pancreatic cancer incidences in Taiwanese: a representative population prospective cohort study of 800,000 individuals
Meei-Shyuan Lee, Chih-Cheng Hsu, Mark L Wahlqvist, Hsin-Ni Tsai, Yu-Hung Chang & Yi-Chen Huang:
BMC Cancer 2011 Jan 18: 11(1):20 [Epub ahead of print]

執筆医師:加藤隆佑


癌治療認定医
内科学会認定医
消化器病学会専門医・指導医
消化器内視鏡学会専門医
肝臓専門医・指導医
札幌禎心会病院がん化学療法センター長

(2021年9月までは、小樽協会病院消化器内科に所属)

消化器領域のがん(食道、胃、すい臓、肝臓、胆のう、大腸)を専門としつつ、がん全般についてアドバイスをしています。

緑書房より「抗がん剤治療を受けるときに読む本」「大腸がんと告知されたときに読む本」「がんと向き合うために大切なこと」を出版。

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