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分子標的薬を用いることができないと判明した肺がんの治療における、ベストの治療方法は?

 2023/06/25 肺がん  

こんにちは。札幌でがん治療を専門に医師をしている加藤隆佑です。

今日は、分子標的薬を用いることができないと判明した肺がんの治療における、ベストの治療方法について解説いたします。

遺伝子検査の結果、分子標的薬を用いることができないと判明した肺がんの治療とは?

従来からある抗がん剤、もしくは免疫チェックポイント阻害薬を用いた治療になります。

効果がかなり期待できるお薬で、よく用いられるものは、以下の方法です。

よく用いられる治療法①

キートルーダ+アリムタ(ペメトレキセド)+「カルボプラチンもしくはシスプラチン」

3剤を併用する治療法です。

肺がんの種類が、腺がんの場合に、よく用いられます。

「カルボプラチンもしくはシスプラチン」は体に非常に負担を与えます。したがって、4から6クールこの治療法を受けた後は、「アリムタ+キートルーダ」だけの治療に移行します。

そうすることにより、体に与える負担を最低限にして、肺がんを抑えることができます。

シスプラチン、カルボプラチンという白金系は強い副作用がでやすい傾向がありますので、副作用に耐えられる体力を維持することが、非常に重要になります。

つまり、副作用に耐えられる体力がない方は、この抗がん剤を受けるべきではありません。逆に、寿命を短くすることに、なりかねないからです。

また、肺がんの顔つきを調べてみると、「PD-L1」というものを、たくさん認める場合があります。

その時は、3剤併用する治療法のかわりに、キイトルーダだけによる治療法も選択肢の1つにあがります。

PD-L1が50%以上あれば、キートルーダによる効果を、かなり期待できます。

そして、体への負担は、かなり少ない治療法となります。

ちなみに、キートルーダは免疫チェックポイント阻害薬に分類される薬です。免疫療法の1種になります。

よく用いられる治療法②

キートルーダ+アブラキサン+カルボプラチン

肺がんの顔つきが「扁平上皮がん」のときに、用いられる治療法になります。

「カルボプラチン」は体に非常に負担を与えます。したがって、4から6クールこの治療法を受けた後に、治療効果があれば、キートルーダだけによる治療に移行します。

また、肺がんの顔つきを調べてみて、「PD-L1」というものを、たくさん認める場合があります。

その時は、3剤併用する治療法のかわりに、キイトルーダだけによる治療法も選択肢の1つにあがります。

よく用いられる治療法③

2種類の免疫チェックポイント阻害薬を併用した治療、つまり「オプジーボ+ヤーボイ」による治療も認可されました。

ベストの選択は?

つまり、以下のような選択肢があることになります。

  • キートルーダ+殺傷性の抗がん剤(アリムタ(ペメトレキセド)+「カルボプラチンもしくはシスプラチン」、もしくは、アブラキサン+カルボプラチン)
  • PD-L1が50%以上あれば、キートルーダ
  • オプジーボ+ヤーボイ

さて、どの選択肢がベストかについて、大規模な臨床研究から解説します。

PDーL1が50%以上の場合は、キートルーダ単剤を選択するのが、最も治療成績がよい。

PDーL1が1〜49%の場合は、「キートルーダ+殺傷性の抗がん剤」か「オプジーボ+ヤーボイ」がよい。

PDーL1が1%未満の場合は、「キートルーダ+殺傷性の抗がん剤」か「オプジーボ+ヤーボイ」がよい。

興味深いこととして、オプジーボとヤーボイという免疫療法を行う際に、殺傷性の抗がん剤を数回だけ併用すると、逆に治療成績が悪くなるという結果もあります。

(併用しないと、3年生存率はPL-L1が1%以上で33%、PD-1が1%未満で34%、殺傷性の抗がん剤を数回だけ併用すると27%)

本日のまとめ

最近は、キートルーダ・オプジーボ・ヤーボイに代表される免疫チェックポイント阻害薬により、5年生存率が、20−30%になり、非常に治療成績がアップしました。

寛解に持っていける方も、増えています。

今後、さらに治療成績が上がると良いと思います。

 

 

執筆医師:加藤隆佑


癌治療認定医
内科学会認定医
消化器病学会専門医・指導医
消化器内視鏡学会専門医
肝臓専門医・指導医
札幌禎心会病院がん化学療法センター長

(2021年9月までは、小樽協会病院消化器内科に所属)

消化器領域のがん(食道、胃、すい臓、肝臓、胆のう、大腸)を専門としつつ、がん全般についてアドバイスをしています。

緑書房より「抗がん剤治療を受けるときに読む本」「大腸がんと告知されたときに読む本」「がんと向き合うために大切なこと」を出版。

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