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肺がんの腫瘍マーカーであるCEA、シフラなどについて医師が解説

 2021/01/21 肺がん  

こんにちは。山本洋平です。がん治療を専門に総合病院で勤務しています。

肺がんの検査項目の1つとして、腫瘍マーカーを調べることがあります。

そこで、肺がんの腫瘍マーカーであるCEA、シフラなどについて解説します。

CEA、シフラといったような腫瘍マーカーを調べることにより、分かることは、以下の3つです。

  • 腫瘍マーカーが正常域を超えた数値の場合は、体の中にがんがある可能性がある。
  • 治療を行い、腫瘍マーカーが下がれば、治療は効果的であり、がんが縮小してきている可能性が高いと判断できる。
  • 治療を行っても、腫瘍マーカーが上昇するならば、治療は無効であり、がんが増大している可能性が高いと判断できる。

ここでは、乳がんの腫瘍マーカーについて、もう少し詳しく説明します。

腫瘍マーカーとは何か?

実は、多くの腫瘍マーカーは、がん細胞からだけではなく、正常な細胞でも作り出される物質です。

しかし、がん細胞の方が、正常な細胞よりも成長が早いために、よりたくさんの腫瘍マーカーを作ります。

その結果、腫瘍マーカーが基準値よりも高い時には、身体の中に、がんが存在している可能性が高いと、解釈できます。

腫瘍の大きさが大きいほど、腫瘍マーカーの数値は高くなる傾向があります。したがって、早期のがんでは、腫瘍マーカーは正常域内にとどまることが多いです。

そして、がんがあっても、腫瘍マーカーは正常域にとどまっていることがあることは、知っておくべきことになります。

逆に腫瘍マーカーが高い数値でも、背景にがんが存在しないことがあります。

特に、以下の腫瘍マーカーは正常域から外れた数値であっても、背景にがんがないケースが多いです。

CEA:慢性肝炎、肝硬変、慢性膵炎、肺結核などでも高値を示すことがあり、その確率は20~40%程度と考えられています。

CA15-3:乳腺の良性疾患でも、まれに陽性になります。他に子宮筋腫,子宮内膜症,卵巣のう腫などの婦人科疾患,肝機能障害で陽性となる場合も、あります。

CA125:子宮内膜症の50~65%程度、膿疱腺腫の20%程度でも高値を示すことがあります。

ここでいう高値とは、正常域から少しはみ出る程度の数値のことを指します。

腫瘍マーカーが数千というような数値である場合や、腫瘍マーカーが右肩上がりで上昇する場合には、非常に高い確率で、背景にがんがあるであろうと推測されます。

肺がんで用いられる腫瘍マーカーは?

肺がんの腫瘍マーカーとして、以下のものが挙げられます。

  • CEA
  • NSE
  • ProGRP
  • SLX抗原
  • シフラ
  • SCC抗原

さて、肺がんは、主に腺がん、扁平上皮がん、大細胞がん、小細胞がんが、あります。

そして、腫瘍マーカーとして臨床的によく用いられるのは、以下のどれかです。

CEA:どのようなタイプの肺がんであっても、測定することが多いです。

SLX抗原:腺がんの時に、測定することが多いです。

シフラやSCC抗原:扁平上皮がんの時に、測定することが多いです。

ProGRPやNSE:小細胞がんの時に、測定することが多いです。

腫瘍マーカーが右肩上がりで上昇してきたらどうする?

定期検査の検査結果で、腫瘍マーカーが少し上昇することがあります。腫瘍マーカが少し上がった程度では、不安に思う必要はありません。

しかし、右肩上がりに上昇する場合は、注意が必要です。

たとえ、正常域内であったとしても、右肩上がりに数値が上昇するときは、がんが増殖してきている兆候であることが多いです。

治療に、なんらかの工夫を付け加えないといけないサインと、言えるかもしれません。

CTで肺がんが悪化していないかを確認し、悪化しているようであれば、なるべく早めに対処していかないといけません。

無治療の状態ならば、抗がん剤を開始したり、抗がん剤治療をしている最中ならば、抗がん剤を変更する必要があります。

そして、肺がんが大きくなるのを防いでいきましょう。

 

 

参考:『肺がん 受診から診断、治療、経過観察への流れ』国立がん研究センターがん報サービス

参考:日本癌治療学会がん診療ガイドライン〜肺がん

執筆医師:山本洋平
札幌禎心会病院の消化器内科医師

(2021年9月までは、小樽協会病院消化器内科に所属)

消化器領域のがん(食道、胃、すい臓、肝臓、胆のう、大腸)を専門と同時に、呼吸器領域の治療にも知識が豊富です。

消化器病学会専門医、総合内科専門医、日本肝臓学会 肝臓専門医、消化器内視鏡学会所属

山本洋平医師の関わる論文

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