1. TOP
  2. 漢方
  3. がん治療中の咳への対処法を医師が解説

がん治療中の咳への対処法を医師が解説

 2022/01/25 漢方 肺がん  

こんにちは。がん治療を専門に、医師をしています外園正光と申します。

がんの治療中に咳で、悩まされることがあります。

しかし、適切な対応をすることにより、咳の症状を和らげることはできます。

本日は、がん治療中に出現した咳に対する対処法を解説いたします。

1、咳の原因は?

一番初めに、咳の原因を考えることが大事です。

抗がん剤治療をしているときに、痰がからまない咳が続く場合には、抗がん剤による間質性肺炎の可能性もあるためです。

その場合は、ステロイドによる治療が必要になることがあります。

がんそのもの(肺がんなど)によるものや、風邪や、誤嚥ごえん、心不全といった持病により、咳が出ることもあります。

2、咳止めの種類

咳の原因を取り除きつつ、咳の症状が強い時には、咳止めを内服することになります。

一口に咳止めと言っても、その種類は色々あります。

そして、咳止めには大きく分けて中枢性鎮咳薬と末梢性鎮咳薬の2種類あります。

中枢性鎮咳薬というのは、脳の咳の中枢をブロックして咳を止めます。

末梢性鎮咳薬というのは、気管や気管支に作用して咳を止める薬のことです。

そして、中枢性鎮咳薬の方が効果はあります。

中枢性で良く用いられる咳止めは、以下の2つです。

デキストロメトルファン(メジコン®)という錠剤と、リン酸コデイン(リンコデ)という粉薬です。

ちなみに、リン酸コデインは医療用麻薬に分類されますが、極端に量を減らして使うので、麻薬の副作用は出ません。

処方例は、以下の通りです。

・ リン酸コデイン20ミリグラムを1日に4錠内服(朝、昼、夜、寝る前)

1日あたり6錠まで増量可能

しかし、実際に、これらを用いても効果がないこともあります。

そのような場合には、漢方や、ハチミツが有効なことが、それなりにあります。

例えば、

・上気道炎になった後に咳だけが残る場合、心因性の咳、寝入りばなの咳

柴朴湯という漢方

・痰の出る激しい咳、目がとびでるような咳、喘息発作時の咳

(熱の有無に関わらず使用可能)

柴朴湯+五虎湯

風邪や肺炎の回復期で、熱が長引き、平熱でも気分がスッキリせず、痰や咳おおく安眠できないとき

竹筎温胆湯+五虎湯

・たんの絡まない咳

(熱の有無に関わらず使用可能)

神秘湯+麦門冬湯、もしくは、柴朴湯+麦門冬湯

・膿性の痰の多く出る咳

清肺湯、もしくは、小柴胡湯加桔梗石膏+五虎湯

・虚弱な体質で慢性の咳と痰、喉に潤いなくて痰でなくて咳き込む、布団に入ると体が温まり咳出る

滋陰至宝湯+六味丸

といった漢方が、挙げられます。

以上のように、漢方を咳止めとして用いると、非常に良くなることが多いです。

咳に対するハチミツの効果とは?

咳に対して、ハチミツやシロップが有効であるというガイドラインが存在します。

甘みを感じる神経は、咳を抑えるはたらきと関連しているとされているからです。

コーヒーにハチミツを入れると、咳止めとして役立つという論文もあります。

コーヒーにも気管支を広げる作用があり、ハチミツと組み合わせれば効果的なのです。

ちなみに、子どもの場合は、就寝前のスプーン1杯のハチミツが非常に有効だという報告もあります。

がん性リンパ管症による、咳を止める方法とは?

がん性リンパ管症とは、肺内のリンパ管系にがん細胞が浸潤し、肺内のリンパ管が塞栓を来たす状態のことです。

そのような場合は、以下のような処方を行うことが多いです。

・ 咳のひどいときにベタメタゾン4から8mgを、短期間投与する。
・ ベタメタゾン0.5~2mgを長期投与する。

咳をしつづけると、体力を消耗しますし、日常生活の質も落ちます。

あなたにあった薬を見つけることで、咳による症状を、もっと楽にできますよ。

 

 

参考文献

・Molassiotis A, et al. Symptomatic Treatment of Cough Among Adult Patients With Lung Cancer: CHEST Guidelines and Expert Panel Report. Chest. 2017 Jan 17. pii: S0012-3692(17)30022-3.
・Oduwole O, et al. Honey for acute cough in children. Cochrane Database Syst Rev. 2014 Dec 23;(12):CD007094.
・Raeessi MA, et al. Honey plus coffee versus systemic steroid in the treatment of persistent post-infectious cough: a randomised controlled trial. Prim Care Respir J. 2013 Sep;22(3):325-30.

関連記事

  • 漢方の副作用の1つである肝障害の症状と頻度を医師が解説

  • 分子標的薬を用いることができないと判明した肺がんの治療における、ベストの治療方法は?

  • 漢方だけで、がんが治る事はありますか?

  • がんによる呼吸苦は、どうやって取り除ける?対処法を医師が解説!

  • ジェムザール(ゲムシタビン)の間質性肺炎という副作用の対処法を医師が解説

  • 肺がんの腫瘍マーカーであるCEA、シフラなどについて医師が解説