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がんによる呼吸苦は、どうやって取り除ける?対処法を医師が解説!

 2023/10/18 緩和ケア関連コラム 肺がん  

こんにちは。札幌でがん治療を専門にして働いている医師である加藤隆佑です。

痛みがあれば、モルヒネで痛みを取り除くことができるということは、かなり周知されてきました。

しかし、がんによる呼吸苦を、和らげることができるかということに関しては、ご存知ではない方が多いです。

そこで、今回は、がんの治療中に呼吸苦が出る理由と、その対処法について解説いたします。

1、がんの治療中に呼吸苦が出る理由とは?

がんが肺や気道に発生すると、呼吸器への影響が生じます。

例えば、肺がんや気道のがんは、正常な呼吸を妨げることがあります。がんの腫瘍が気道を圧迫し、空気の流れを制限することで、呼吸苦が生じます。

それ以外にも、以下のような理由が挙げられます。

1、腫瘍が肺を占拠し、十分な換気ができなくなる

2、肺炎や液体貯留

がんによって引き起こされる肺炎や胸水の貯留も、呼吸苦を引き起こす一因です。

肺炎は肺の炎症を引き起こし、呼吸器の正常な機能を妨げます。

また、胸水は肺と胸壁の間に液体がたまる状態で、肺の膨らみを制限し、呼吸に支障をきたします。

3、がん治療の副作用

がん治療自体も、呼吸苦の原因となることがあります。特に放射線療法や抗がん剤治療は、肺や気道に影響を及ぼす可能性があります。

放射線治療や抗がん剤によって、肺で炎症が起こることがあるからです。

呼吸苦が出た時の対処法とは?

酸素を吸入することで、症状が楽になる場合は、酸素を吸ってもらうことは、基本的な対処法となります。

しかし、それ以外にも、さまざまな対処法がありますので、そのような対処法も組み合わせてやっていく必要があります。

1、まずは安心感を持つ

呼吸困難感に対処する際、何よりも大切なのは、安心感を持ってもらうことです。

診察室での対話や情報提供によって、「大丈夫ですからね。安心してください」という言葉を言ってもらえれば、不安の軽減につながります。

トレーニングをうけた医師であれば、そのようなことを意識した会話をしてくださることでしょう。

不安が襲ってくると、呼吸困難感が増し、逆に安心感があると呼吸が楽になることがあるのです。

2、不安感が強くないかをチェック

不安感が強い場合、以下の表を用いて症状の評価を行いましょう。

HADS(Hospital-Anxiety-and-Depression-Scale)

この尺度を通じて、不安やうつ症状の程度を正確に把握し、適切な対応を選択できます。

合計点が8点以上だと、何らかの対策を考慮した方が良いです。

不安やうつ症状が強い時には、抗不安薬(アルプラゾラムなど)や抗うつ薬を飲むと、呼吸苦が楽になることもあります。

・パニック障害を伴う、うつ気味の場合

エスシタロプラムやセルトラリンなどが効果的であることが多いです。

・パニック障害のあるうつ気味の場合

エスシタロプラムを用いて、食欲不振や不眠を伴ううつ気味の場合は、セルトラリンを用いると効果的なことが多いです。

3、送風

自宅での療養中でも、呼吸困難感を和らげるためにできることがあります。

扇風機やうちわを使って顔に風を当てることは、呼吸困難症状を緩和するための簡単な方法です。

風が当たると、呼吸が楽に感じられることがあります。

(https://p.ono-oncology.jp/care/symptom/08_dyspnea/01.htmlより画像を引用)

この方法は、臨床試験でも有効性が示された方法です。

入院中でも、扇風機の方法を試してみる価値は十分にあります。

4、呼吸を深くできるようにするためのリハビリやリハクゼーション法

ベッド上でも気軽に行える呼吸リハビリとリラクゼーション法があります。

これらの方法は、呼吸を改善し、症状を和らげるのに役立ちます。

・シルベスター法

・自律神経法

5、薬物療法

呼吸困難を緩和するために、薬物療法も一つの選択肢です。

モルヒネやミタゾラムなどの薬剤は、呼吸苦を改善してくれます。

ミタゾラムを使用する場合、眠気を避けつつ呼吸困難を緩和するために、少量(1日あたり2.5から10mg)の使用が推奨されます。

この方法は、呼吸困難感を軽減しつつ、日常生活を続けるのに役立ちます。

6、原因を取り除く

例えば、胸水が原因で、呼吸苦が出た時には、胸水を抜くことで、症状が緩和されます。

いろんなことをうまく活用することで、呼吸苦は、かなり改善することができますよ。

 

執筆医師:加藤隆佑


癌治療認定医
内科学会認定医
消化器病学会専門医・指導医
消化器内視鏡学会専門医
肝臓専門医・指導医
札幌禎心会病院がん化学療法センター長

(2021年9月までは、小樽協会病院消化器内科に所属)

消化器領域のがん(食道、胃、すい臓、肝臓、胆のう、大腸)を専門としつつ、がん全般についてアドバイスをしています。

緑書房より「抗がん剤治療を受けるときに読む本」「大腸がんと告知されたときに読む本」「がんと向き合うために大切なこと」を出版。

加藤隆佑医師の論文

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