ハイパーサーミアで抗がん剤の効果を増強させて、がんを叩く治療を医師が解説!
こんにちは。加藤隆佑です。がん治療を専門に総合病院で勤務しています。
本日は、戸畑共立病院のがん治療センター長の今田肇先生に、ハイパーサーミアに関する記事を監修していただきます。
今田肇先生は、私がとても尊敬しているドクターでもあります。
もし私が、がんの治療を受けないといけないときには、真っ先に治療をお願いするであろうドクターです。
ハイパーサーミア(温熱療法)のがんへの効果とは?
温熱療法はハイパーサーミアとも言われています。
がん細胞は、正常な細胞より温まりやすい上に、熱に弱いです。
したがって、同じように熱を加えた時に、がん細胞は正常な細胞に比べて1度から2度ほど高くなるために、がん細胞だけが死滅して、正常な細胞は生き残るのです。
高圧酸素療法のがんに対する効果とは?
高圧酸素療法を受けるだけでは、がんに対する治療効果は期待できません。
抗がん剤治療や放射線治療を併用することが前提です。
そうすることにより、治療効果を増強させられます。副作用も減らすことができます。
ハイパーサーミアと高圧酸素療法の両方を併用するとさらに良い!
ハイパーサーミアと高圧酸素療法の両方を併用すると、がんを制御する力が、さらにアップします。
そのような治療を受けた事例を何個か提示します。
事例1)乳がんの腋窩リンパ節転移
(画像は、今田肇氏より許可を得て使用)
温熱療法、高圧酸素療法を併用して、放射線治療。
左側の赤の部分が病変ですが、治療後の画像(右側の画像の矢印の部分)を見ていただくと、リンパ節転移の部分は完全に消失しています。
事例2)胃がん(遠隔転移はなし)
(画像は、今田肇氏より許可を得て使用)
放射線治療と同時にパクリタキセルという抗がん剤で治療しました。
左側の写真では胃がんを認めますが、治療後の右側の写真では、胃がん消失しています。
次は、ハイパーサーミアを併用した治療と、併用しない治療で、治療効果にどの程度の差があるかについて、ステージ3Bのすい臓がんを例に示します。
(グラフは、今田肇氏より許可を得て使用)
グラフが指し示すように、温熱療法を併用した方が、治療成績は良いです。
より高い治療効果を得るために、温熱療法やハイパーサーミアを併用した治療を受けることは、試みる価値の高いことです。
最後に、今田医師と加藤医師の対談記事をご紹介します。
今田肇医師と加藤隆佑医師の対談記事
(加藤医師)
今田先生、記事を監修していただきありがとうございました。
温熱療法や高圧酸素療法を併用すると、治療効果はかなりアップしていますね。
事例1のようなケースに関して言いますと、放射線治療だけでは、あそこまで腋窩リンパ節の癌が小さくなることはならないと思います。
(今田医師)
そうですね。私たちは、治療と同じ日に温熱療法や高圧酸素療法をするようにしています。
例えばですが、温熱療法→高圧酸素療法→放射線治療という感じです。
(加藤医師)
私も、先生から、抗がん剤や放射線治療と間を空けないようにしないといけないと教わり、前日の夕方に他の病院で温熱療法をやっていただき、その翌日の午前中に抗がん剤という形をとるようにしています。
私の病院に温熱療法の機械を購入できれば、同日中にできるようにしたいです。
両方の機械を備えている今田先生の病院が羨ましいです。
(今田肇医師)
遅くても、2日前までには温熱療法をしたいですよね。
抗がん剤(もしくは放射線治療)と温熱療法の間隔が、これ以上離れてしまうと、抗がん剤や放射線治療の効果アップは難しくなると思います。
(加藤医師)
間隔が空きすぎると、温熱療法の意義は、かなり下がってしまうということですね。
(今田医師)
事例2に関して、補足させてください。15年近く前の事例です。外科から手術はできないと言われた事例でもあります。
私たちの治療後は、5年間再発はありませんでした。
これをもって、私たちの病院は、胃がんを手術しないで治せるなんて言うつもりはないです。
手術ができる状況なら、強く手術を勧めますし、自分が患者でもそうします。
でも、手術が選択できない状況で、遠隔転移がないなら、放射線治療、化学療法、温熱療法、高気圧酸素治療を使用した集学的治療で、胃がんであっても手術しないでも治せることもあるというお話です。
(加藤医師)
標準的な治療ができないからといって、工夫をすれば治療方法を見出すことができるということなのでしょうか。
(今田肇医師)
ガイドラインに書いていなくても、やれることはたくさんあります。腫瘍の性質を見抜いて、治療をするのが大切なような気がします。
(加藤医師)
大切なことを教えていただいて、ありがとうございました。