1. TOP
  2. ハイパーサーミア(温熱療法)
  3. 高圧酸素療法のがんへの効果を、医師が解説

高圧酸素療法のがんへの効果を、医師が解説

 2021/01/17 ハイパーサーミア(温熱療法)  

こんにちは。加藤隆佑です。

高圧酸素療法というものがあります。

それを抗がん剤治療や放射線治療と併用すると、非常に良いです。

がんに対する治療効果が増強されます。

高圧酸素療法の適応とは?

以下のような疾患に対して、高圧酸素療法は用いられます。

ア 網膜動脈閉塞症

イ 突発性難聴

ウ 放射線又は抗癌剤治療と併用される悪性腫瘍

エ 難治性潰瘍を伴う末梢循環障害

オ 皮膚移植

カ 脊髄神経疾患

キ 骨髄炎又は放射線障害

これは、厚生労働省が提示している内容です。

ちなみに、2018年に、高圧酸素療法に対する保険点数が以前の15倍にも高くなりました。

このことを契機に、高圧酸素療法がもっと普及するとよいです。

高圧酸素療法のがんに対する効果とは?

高圧酸素療法を受けるだけでは、がんに対する治療効果は期待できません。

抗がん剤治療や放射線治療を併用することが前提です。

そうすることにより、治療効果を増強させられます。副作用も減らすことができます。

高圧酸素療法は放射線治療により生じた副作用も改善できる

1つ事例をあげます。

直腸がんになり、放射線治療を受けた方がいました。

その後、放射線の副作用のために、陰部に潰瘍ができてしまいました。

一般的には、放射線治療による潰瘍は治すことが難しいケースが多いです。

そして、この方には、高圧酸素療法を受けていただき、潰瘍は治癒しました。

今回は、潰瘍の事例を提示しましたが、。高圧酸素療法は、それ以外の放射線治療による遺症的な症状に、効果があるのです。

つまり、放射性膀胱炎、放射線直腸炎、放射線皮膚障害、放射線骨髄炎に対して、高圧酸素療法は有効ということです。

高圧酸素療法の治療効果をさらにあげるには?

高圧酸素療法の治療効果をあげるならば、ハイパーサーミアも併用するとよいことは、判明しています。

この2つを併用しつつ、抗がん剤治療や放射線治療に力をいれている施設は、非常によい治療成績をあげています。

たとえば、以下のような治療成績があります。

進行性非小細胞がんのパクリタキセル/カルボプラチンの併用療法をうけて腫瘍が縮小するのは約40%の患者さんと言われている。

一方で、高圧酸素療法とハイパーサーミアを併用すると、73%の患者さんの肺がんが縮小する。

 

卵巣がんに標準的に用いられるTC療法の効果がなかった患者さんに、高圧酸素療法とハイパーサーミアを併用してTC療法をする。

その結果、卵巣がんが縮小することが、それ相応の確率である。

 

私が担当しているがんの患者さんにも、状況に応じて、この治療法を受けていただくことは多いです。

高圧酸素療法はどのような治療法ですか?

水深 10から20mに相当の気圧環境の中で、100%酸素を吸入します。

その結果、血液中の酸素量が増加し、酸素不足の状態にある組織も酸素量が増えます。

がん組織は低酸素を好みますので、高圧酸素療法で高酸素の状態にすることは、がん細胞によって嫌がる環境を作ることになります。

1回の治療時間は、通常約 90 分です。所定の圧まで上げるのに約 15分、その後一定圧で 60 分、圧力を大気圧まで戻すのに約 15分要します。

高圧酸素療法を受けると、その後約30分間は、がん細胞内の酸素分圧が上昇します。

高圧酸素療法の直後に、抗がん剤治療や放射線治療をうけないと、治療効果は落ちるといえます。

高圧酸素療法の副作用は?

主に耳痛です。

治療が始まり、圧力が上がってくると次第に耳が痛くなることがあります。

飛行機に乗った時や山に 登った時の症状のことです。あくび、つばを飲み込むなどして、耳抜きをするとよいです。

本日のまとめです。

がんの治療は、標準的な治療法をベースにしつつ、様々な枝葉をつけていくとよいです。

今回ご紹介した治療法も、その1つです。

そして、治療効果をアップさせつつ、副作用で悩まされることも減らしていきましょう。

関連記事

  • ハイパーサーミアで抗がん剤の効果を増強させて、がんを叩く治療を医師が解説!

  • 温熱療法(ハイパーサーミア)の治療が受けられる病院の一覧と治療費について

  • 温熱療法(ハイパーサーミア)の治療が受けられる病院の一覧と治療費について

  • 温熱療法のすい臓がんへの効果を医師が解説!末期状態でも癌を制御するためにすべきこと

  • 効果がなかった抗がん剤を再投与して、再び効果を出す方法を医師が解説

  • 古い抗がん剤でも、工夫をすれば効果がでることがある。それはどんな抗がん剤?