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肝臓がんに対する肝動注化学療法について医師が解説

 2022/05/04 肝臓がん  

こんにちは。加藤隆佑です。

肝臓がんを制御するために、様々な治療法があります。

免疫チェックポイント阻害薬、抗がん剤、手術、放射線治療

これらでの治療でも、うまく制御できないときには、肝動注化学療法が有効なことは多々あります。

肝動注化学療法は、とても試みる価値がある治療です。

肝臓の機能の低下により、免疫チェックポイント阻害薬や、レンビマを用いることができない。

そのようなときにも、肝動注化学療法は、できることはあります。

肝臓がんに対する肝動注化学療法の記事を、岩本内科医院の理事長でいらっしゃいます岩本英希先生に監修していただきましたので、ご紹介いたします。

岩本英希先生は、全国でも、かなりの数の肝動注化学療法をされている先生です。

肝動注化学療法とは?

カテーテルを留置して、抗がん剤を直接、肝臓に投与する治療です。

「https://capture.dropbox.com/9nlDDfKx9cb13BXC」より画像を引用

以前は、肝臓がんに対しては、肝動注化学療法が行われることは、よくありました。

最近は、抗がん剤が発達したために、肝臓がんに対して、行われる頻度は減ってきています。

しかし、肝動注化学療法、とくにNew FP療法は、非常にがんを縮小させる力が強いので、常に選択肢に入れたほうがよい治療法です。

全身に抗がん剤を投与するときよりも、副作用が少ないという特徴があります。

肝動注化学療法の効果は?

岩本先生に、実際に治療を受けた方の治療結果をご紹介します。

事例1)肝臓がんを寛解にもっていった事例

肝臓の右側にも、肝臓がんが多発している方です。

画像でお示ししますと、矢印のところに、がんがあります。

(画像は、ガンちゃん先生奮闘記より引用)

New FP療法による肝動注化学療法により、多発していた癌はほぼ消失。残っているがんで、以下の画像の矢印に示してあるように、2個だけになりました。

(画像は、ガンちゃん先生奮闘記より引用)

残っているがんに対して、追加で門脈動脈同時塞栓療法を行い、画像上見えるがんは、0になりました。

事例2)肝臓が、がんで埋め尽くされた事例

癌は肝臓の60-80%を埋め尽くし、門脈の中に鋳型状に入り込んだ状態となりました。

画像でお示ししますと、矢印のところに、がんがあります。

(画像は、ガンちゃん先生奮闘記より引用)

そこで、New FP療法による肝動注化学療法を開始しました。

ちなみに、門脈本幹に、がんが入り込んでいる状態では、門脈動脈同時塞栓療法は行えませんので、選択しませんでした。

その結果、腫瘍マーカーの値の一つが4分の1になりました。

画像的に評価しても、以下の画像の矢印に示すように、門脈内のがんにも、抗がん剤が貯留していて、良い兆候が出現しています。

(画像は、ガンちゃん先生奮闘記より引用)

・事例3)抗がん剤による副作用で、治療継続ができなくなった事例

抗がん剤治療が行われてきたのですが、その薬剤によりタンパク尿が著明となり、薬物療法の継続が不能となってしまいました。

がんの状態はステージ4Aの門脈への浸潤を有する状態です。

このような状況であっても、New FP療法による肝動注化学療法は可能で、薬の分布は良好で、癌の中に薬が貯留したことを確認できました。

(画像は、ガンちゃん先生奮闘記より引用)

このような状況になれば、今後、がんが小さくなることが非常に期待できます。

・事例4)テセントリク+アバスチンを始め、途中から治療効果が出なくなった事例

当初は、テセントリク+アバスチンの治療効果はありましたが、半年くらいの経過で急に癌が大きくなり始めたので、肝動注化学療法に切り替えました。

下の画像は、がんが悪化してきたときのものです。

(画像は、ガンちゃん先生奮闘記より引用)

New FP療法による肝動注化学療法を行うと、急激に大きくなっていた癌の勢いが収まり、状態が改善しました。

(画像は、ガンちゃん先生奮闘記より引用)

どんな時に、肝動注化学療法を検討すべきか?

肝動注化学療法を検討すべき状況は、肝臓の転移巣を制御できれば、もっと長生きができるような場面です。

・標準療法による抗がん剤が効かなくなった場合や、副作用などで抗がん剤治療が行えなくなった場合で、肝臓だけに病変がある時

そのような時には、肝動注化学療法を試みる価値が高いです。

肝動注化学療法は、体への負担は少ない治療法です。つまり、リスクが低い治療法と言えます。

そうであれば、肝動注化学療法を試みることに、躊躇する必要はないはずです。

もし、肝臓の転移巣を制御できれば、もっと長生きができるような状況で、標準的な治療が難しい場合は、肝動注化学療法を検討してもらいましょう。

まだ、この治療ができる施設は少ないのですが、北九州市にある岩本英希先生の病院では、治療の相談に乗ってくださることができます。

岩本英希先生の病院はこちらです。

そして、岩本英希先生のブログはこちらです。

編集後記

最後に、zoomで私と岩本先生で対談をしております。その内容も、ご紹介します。

加藤医師)

記事を監修してくださり、ありがとうございました。

肝臓がんに対して、肝動注化学療法はとても有望な治療の1つであることを知ることができました。ありがとうございます。

肝動注化学療法のためのカテーテルを留置するのに、だいたいどのくらいの時間がかかるのですか?

岩本先生)

最初は、カテーテルを留置したりするので2週間程度の入院をお願いします。

カテーテルの留置自体は1時間前後くらいで終わります。

その後は、外来で動注療法をするか、入院で集中的に動注療法をするか、その時の癌の状況やご本人のご都合で決めながら治療を進めていきます。

加藤医師)

以前は、肝臓がんに対して、肝動注化学療法は、それなりに行われていましたが、最近は、あまり行われなくなりました。また、世界には、あまり広がっていない治療法ですよね。その理由は、なんでしょうか?

岩本先生)

カテーテルの留置、管理が非常に難しいという技術的な問題で、日本の中でも限られた施設でしか行われず、さらに、世界ではほとんど行われない手技なのです

そして、大規模な臨床試験ができないために、最近は、日本でも、この治療法を行う施設が少なくなってきています。そして、大規模な臨床試験の結果に裏打ちされた治療法であるテセントリク+アバスチン併用療法といった治療法が、主流になっています。

しかし、だからといって、肝動注化学療法が役に立たない治療ということにはなりません。

なぜならば、肝動注化学療法により、よくなる方は、多いからです。

加藤医師)最近の治療法と、肝動注化学療法を比較して説明してもらえますか?

岩本先生)簡単に説明しますと、以下のようなことが言えます。

・テセントリク+アバスチン併用療法の効果は、癌を小さくさせる力が30%、癌を大きくさせない力が60-80%、まったく効果が出ないのが20%くらい

がんを大きくさせない期間は大体、半年くらい。中には、長く効果が保てるものもあります。

・放射線治療を用いれば、門脈浸潤であれば6割くらいの症例で縮小させる事ができる事が分かっていますし、静脈浸潤では8割くらいの症例で縮小させる事ができます。

・肝障害度が高いと、標準治療で推奨されている抗がん剤を、用いることはできません。

そして、肝動注化学療法に関してですが、以下のような薬剤が、一般的には使われます。

・少量のシスプラチンと5-FUと呼ばれる抗癌剤を使ったLow dose FP療法

・インターフェロンと5-FUを使ったFAIT療法

・粉末のシスプラチンとリピオドールを混和し、5-FUを使用するNew-FP

これらの中で最も高い治療成績を出しているのがNew-FP療法です。私は、この治療法を用いています。

New-FP療法による肝動注化学療法に関しては、約7から8割の方は、縮小を期待できます。

さらに、肝障害度が多少高くても、安全にできることが多いです。

しかし、この治療戦略は肝臓がんの標準治療のガイドラインには書いていません。

加藤医師)

治療ガイドラインは治療レベルの均一化、全体の底上げには効果を発揮しますが、職人技的な治療法は記載されないので、天井を抜ける結果を出す事は限られてしまいますよね。

だからこそ、岩本先生のような治療法も、組み合わせることは、とても大事だと思います。

そして、岩本先生の御施設では、門脈動脈同時塞栓療法も併用して、チャンスがあれば、完治を目指した治療をされているかと思います。

通常の動脈だけをつめる肝動脈化学塞栓術と、門脈と動脈を同時につめる門脈動脈同時塞栓療法の違いな何なのでしょうか?

岩本先生)

簡単にご説明します。

門脈動脈同時塞栓療法の場合も、肝動脈化学塞栓術のときと同様に、動脈側から、血管をつめる物質を注入します。

動脈をつめていると、門脈という血管まで、血管をつめる物質を送り込むことができます。そうすることにより、門脈の血流をとめることができ、よりいっそう、肝臓がんにいく血流を減らすことができ、肝臓がんを兵糧攻めにすることができる治療法です。

そうすることで、肝臓がんを叩くことができるのです。

これを、門脈動脈同時塞栓療法と呼びます。

治療に時間はかかりますが、安全にできますし、効果的な治療法です。

加藤医師)この治療の注意点はありますか?

岩本医師)

兵糧攻めにあった癌は次にどうするかというと、別の動脈から血液を貰おうとします。

つまり、肝動脈では無くて、周囲の別の動脈から血液をもらうのです。

どんなものか例を挙げると、以下のようにいっぱいあります。

横隔膜の動脈
胃の動脈
十二指腸の動脈
腸の動脈
膵臓の動脈
副腎の動脈
腎臓の動脈
肋骨の動脈
胸部の動脈

様々な動脈から、肝臓のがんへ、血液、つまり、がんにとっての栄養が、入り込む可能性があるのです。

したがって、このような状況になったら、これらの血管も詰めることをしていきます。

加藤医師)

すごい奥が深い治療法なのですね。

多くの病院は、進行肝臓がんに対して薬物治療のみにこだわって治療をしていくと、副作用で、治療がスムーズにいかなくなったり、体力を消耗したりすることがあります。

たとえば、テセントリク+アバスチン療法での副作用で問題になる副作用の一つとしてタンパク尿が挙げられます

これは、他の肝臓がん治療の薬剤でも起こり得る事ですが、このタンパク尿は厄介で、尿に栄養素の一つのタンパクが漏れ出てしまう状態です。

ひどくなると、腎臓の機能が落ちるケースもありますし、もともと肝硬変などで肝機能が悪い方は、浮腫がひどくなることもあります。

だからこそ、テセントリク+アバスチン療法に代表されるような標準療法で推奨される薬剤だけにこだわらず、肝動注化学療法や、動脈同時塞栓療法をうまく併用することは、非常に大事ですよね。

ただ、血管をつめる治療により、肝臓の機能が低下するリスクもあるので、先生の御施設のように、経験のある医師のもとで、治療をしてもらうことも大事だと感じます。

先生の治療が、さらに広がることを祈っております。

本日は、ありがとうございました。

 

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