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がんの悪液質に効くと言われるエドルミズの効果を医師が解説

 2022/09/27 緩和ケア関連コラム  

こんにちは。加藤隆佑です。

札幌にある総合病院でがん治療を専門に診療しています。

本日は、がんの悪液質に効くと言われるエドルミズの効果について解説します。

がんの悪液質とは?

がん悪液質は、従来の栄養サポートで改善することは困難で、進行性の機能障害をもたらす、筋組織の著しい減少を特徴とする複合的な代謝異常症候群と定義されています。

以下の表で、点数が低いほど、悪液質の可能性が高くなります。

悪液質が疑われるときには、薬物、運動、栄養、心理療法などを併用した介入が求められます。

がん悪液質に対する治療の意味合いは、食欲を増進し、骨格筋や臓器組織から構成される除脂肪体重の減少(体重減少)を阻止することになります。

エドルミズは、どのような状況の時に使える?

がんの悪液質が疑われる時に、用いられます。

以下の1から3の条件をすべて満たす時が、がんの悪液質の可能性があると言われています。

1、6ヵ月以内に5%以上の体重減少

2、食欲の低下

3、CRP値0.5mg/dL超、ヘモグロビン値12g/dL未満、又はアルブミン値3.2 g/dL未満のうち2つ以上が該当

すべてのがんに対して、エドルミズを用いることはできない。

非小細胞肺がん、胃がん、膵がん、大腸がんにおいて、用いることができます。

どのような効果が期待できる?

臨床データからは、体重が1%以上増加の割合が3週で約53%、12週で約61%に認められます

1%以上の体重増加というのは、体重がもともと60kgあったからならば、体重が600グラム増えることを指します。

便秘になるだけでも、そのくらいの体重の増減は認めてしまうものであり、正直なところ、効果が実感しにくい薬剤とも言えます。

この薬剤の効果は、体重を増やすというよりは、体重を下げ止めることに寄与する薬剤と考えた方が良いかもしれません。

一方で、食欲関連スコアが改善したのは、3週目で61%、12週目で74%に認めています。

つまり、食事量は、それなりの割合で増えていることになります。

エドルミズを用いるタイミングは?

なるべく早い段階で用いることです。

6ヵ月以内に5%以上の体重減少と食欲の低下があり、さらに以下のうちの2つ条件をみたしたら、早めにエドルミズを試みると良いです。

1、疲労又は倦怠感

2、全身の筋力低下

3、CRP値0.5mg/dL超、ヘモグロビン値12g/dL未満、又はアルブミン値3.2 g/dL未満のうち2つ以上が該当

体調が非常に悪くなってから、使うのでは、この薬剤の効果の恩恵をあづかることができる可能性が低くなってしまうのです。

執筆医師:加藤隆佑


癌治療認定医
内科学会認定医
消化器病学会専門医・指導医
消化器内視鏡学会専門医
肝臓専門医・指導医
札幌禎心会病院がん化学療法センター長

(2021年9月までは、小樽協会病院消化器内科に所属)

消化器領域のがん(食道、胃、すい臓、肝臓、胆のう、大腸)を専門としつつ、がん全般についてアドバイスをしています。

緑書房より「抗がん剤治療を受けるときに読む本」「大腸がんと告知されたときに読む本」「がんと向き合うために大切なこと」を出版。

加藤隆佑医師の論文

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