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CT検査による被曝で癌になることを避けるためにすべきことを医師が解説!

 2021/01/20 がんと遺伝コラム  

こんにちは。加藤隆佑です。がん治療を専門に総合病院で勤務しています。

今日は、CT検査による被曝で癌になることを避けるためにすべきことを解説します。

CTはとても優れた検査法である一方、被爆という問題点があります。

その結果、がんになるリスクがあがります。

たとえば、2004年にランセットという権威のある医学雑誌に、以下のような内容の論文が掲載されました。

日本は年間7587人(がんになる方の3.2%)のがんの患者さんが医療被曝によって発生している。

CTの便利な点はたくさんありますが、一方で医療被爆という重大な問題点があることを忘れてはいけません。

CT検査による被曝量は?

たとえば、腹部CTによる被爆量は10ミリシーボルト(mSv)です。

撮影の仕方によっては、1回のCT検査で30ミリシーボルト(mSv)になることがあります。

一方で、年間の自然被爆量は1.4mSvです。一生涯の間の総被爆量は100mSvにおさえたほうがよいと言われています。

以上を考慮すると、CTによる被爆量は相当なものになります。

もし、CT検査が原因でがんになったとしても、すぐに、目にみえるくらいの大きさのがんになるわけではありません。

検査で指摘できるくらいまでの大きさになるためには、少なくても10年から20年はかかります。

そして、がんになってしまった場合は、過去に受けたCT検査が原因になっている可能性は0ではないことになります。

CT被曝をさけるために大切なことは?

CT検査が、必要不可欠なときは、あります。

たとえば、急に背部に強い痛みがでて、倒れたとします。そのような場合は、CT検査が必須です。

動脈解離になっていないかを、確認しないといけないからです。

もし動脈解離になっていたら、緊急で、動脈解離の治療をしないと、命を奪われてしまいます。

このように、緊急で治療をしないと命に関わる病気の場合は、CT検査が必要になることが、多いです。

それでは、少しお腹が痛いときに、CT検査は必要なのでしょうか?

必要ではありません。

大半のケースにおいては、腹部エコー、採血、胃カメラ、大腸カメラ、MRIといったような検査と問診で、診断はつきます。そして、治療方針も、決めることができます。

それでは、これらの検査をしても診断がつかなかったり、治療方針が決まらなかった場合は、どうしたらよいのでしょうか?

「背景に、緊急で治療をしないと、命に関わる病気が隠れていない」と推測される場合は、経過をみていくという対処法がベストです。

症状をとる薬をだしつつ、経過を追うのです。その結果、症状が良くなれば、CT検査は回避できる可能性が、高まります。

もし、なかなか症状が良くならなければ、CTの検査を検討することになります。

しかし、最近は、このような過程をふまず、すぐにCTをとってしまう傾向があります。

病院の収益目的に、ちょっとした症状があるだけにも関わらず、患者さんにCTをすすめる医師もいます。

大した症状ではないにも関わらずCTを取ってほしいと言われる患者さんもいます。そして医師は、患者さんの要望ということで安易にCT検査をしてしまう傾向も、あります。

このような傾向が、過剰な医療被曝を引き起こす原因となります。

CT検査を受けることは必要最低限にしていかないといけないという認識を、医師だけではなく患者さんも持つ必要があるのでしょう。

10年から20年後も元気に生活している可能性が年齢の人や妊娠を希望される人は、ことさら、CT被爆の問題に特に注意を払って欲しいです。

もし医師からCT検査を勧められたら、以下のことを確認してください。

  • MRI検査やエコー検査で、代用できないか?
  • 具体的に、どのような病気の存在を考えてCTをとるのか?その病気である可能性は、高いのか?

以上の質問をして、MRI検査やエコー検査で代用できない上に、緊急で治療をしないと命に関わる病気の可能性が、それなりの確率である場合は、CT検査をうけてください。

肺がんが不安なときには、どのような検査を受けたら良いか?

肺がんの検診目的で、CT検査を希望される方はいます。

通常のレントゲン写真では、小さな肺がんを見つけることは、できませんので、肺がんの有無をしっかり確認するのは、CT検査がベストです。

しかし、被曝の問題がありますので、検診目的でのCTは推奨されません。

そのような場合は、低線量CT検査を受けると良いです。

通常の肺CT検査に比べ、被ばく量は1/10程度です。

がんの手術後に、再発の有無を確認するためのCTは、問題はないのか?

がん治療の成功の1つの目安は5年の生存です。

10年から20年先の心配までして、CTをとらないでおこうという考え方は不適切と言えます。

たとえば手術をした後にがんの再発を早期に発見するために、半年から1年に1回CTを取ることはやむを得ないことでしょう。

しかし、妊娠を希望されるような方の、がんの手術後に関しては、CTは極力さけるべきです。

MRIや腹部エコーの検査をうまく利用することにより、CTの検査を省略するというのも、有効な方法になるでしょう。

 

執筆医師:加藤隆佑


癌治療認定医
内科学会認定医
消化器病学会専門医・指導医
消化器内視鏡学会専門医
肝臓専門医・指導医
札幌禎心会病院がん化学療法センター長

(2021年9月までは、小樽協会病院消化器内科に所属)

消化器領域のがん(食道、胃、すい臓、肝臓、胆のう、大腸)を専門としつつ、がん全般についてアドバイスをしています。

緑書房より「抗がん剤治療を受けるときに読む本」「大腸がんと告知されたときに読む本」「がんと向き合うために大切なこと」を出版。

加藤隆佑医師の論文

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