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血縁者に大腸がんの方がいるときには、大腸カメラを受けるべき理由とは?

今日は、大腸内視鏡検査に詳しい加藤医師に、大腸内視鏡検査について記事を監修していただきました。

この記事を通して、大腸内視鏡を受ける意義を知っていただければと思います。

大腸癌は、年々増加しており、近年は男性の11人に1人、女性の13人に1人が大腸がんと診断されます。

不安に思われるかもしれませんが、早期発見すれば、治る病気でもあります。

検査法には色々なものがありますが、早期発見のために、最も有効な検査は大腸内視鏡検査です。

進行した大腸がんがあっても、便潜血検査では異常なしという結果になることは、よくあることだからです。

仮に、大腸がん検診(便潜血検査)で異常なしという結果であっても、一度は大腸カメラを受けましょう。

大腸内視鏡検査(大腸カメラ)とは、どんな検査?

通常約2リットルの下剤を検査当日に飲み、腸の中に溜まっている便を出していきます。

腸がきれいになったら、肛門から大腸カメラを入れて、取り除く必要があるポリープがないか確認していきます。

切除する必要性が高いポリープは以下の通りです。

  • 大腸がん
  • 大腸腺腫
  • 10ミリ以上の大きさの過形成性ポリープ

大腸がんの中でも、大腸の壁の深くに食い込んでいるもの、つまり進行大腸がんが見つかった場合には、内視鏡では切除せず、腸を切除する外科的な手術で治療をすることになります。

大腸カメラを受けることが望ましい人

1.大腸がんの検診で便潜血検査陽性の結果を受けた人

2.大腸がんを疑う症状

  • 便が細くなる
  • 普段は便通が良かったのに、ある時期を境に便通が悪くなる。
  • 便に血が混じる。
  • 下痢が続く
  • 腹痛やお腹の張りが長く続く

3.血液検査で鉄欠乏性貧血を指摘された

4.40歳を超えた方

40歳を超えたら、大腸がんになるリスクが少しずつ高くなります。

5.血縁者の中に、大腸がんにかかった方がいる方

大腸がんは、遺伝しやすいがんの1つとされています。

次に、遺伝性の大腸がんについて詳しく説明いたします。

遺伝していたら100%の確率で発症する遺伝性の大腸がんもある。

大腸がんの中には、遺伝性の大腸がんがいくつかあります。

家族性大腸腺腫症

家族性大腸腺腫症とは、大腸に100個以上の腺腫、つまりがん化しやすいポリープができる病気です。

大腸がん全体から見た頻度は高くないのですが、遺伝していた場合は、ほぼ100%の確率で大腸がんを発生します。

リンチ症候群

リンチ症候群も遺伝する病気であり、大腸がん、子宮がんといった、さまざまながんを発生します。

リンチ症候群由来の大腸がんは、全体の2〜5%を占めています。

下の条件に該当する場合には、リンチ症候群の可能性も考慮に入れないといけません。

1、家系内の少なくとも3名に大腸がん、子宮内膜がん、小腸がん、尿管あるいは腎盂のがんが認められる。

2、そのうちの1名は、ほかの2名に対して第一度近親者(親、子、兄弟)である。

3、少なくとも、2世代にわたって発症している。

4、少なくとも、1名は50歳未満で診断されている。

もし、血縁の方が大腸がんになった時に、家族性大腸腺腫症やリンチ症候群に当てはまらなければが、大腸がんは遺伝しないと考えてよいのでしょうか?

残念ながらそうではありません。

大腸がんの患者さんの父母、兄弟姉妹、子供(第一度近親者)は、大腸がんになるリスクが数倍高くなるというデータが出ています。

ですから、近い血縁者に大腸がんの方がいる場合は、定期的に大腸カメラの検査を受けることが強く推奨されます。

もし、あなたが大腸がんになった場合は、血縁の方に、大腸カメラを受けることをすすめてほしいです。

大腸カメラを受ける手順

大腸カメラをうけるときには、まず、かかりつけの医師に相談しましょう。かかりつけの医師がいない場合は、大腸カメラの検査を力を入れてやっている病院を受診して検査を受けましょう。

苦痛の少なく検査を受けるために知ってほしいこと

過去に受けた検査が、苦しかったため検査を躊躇される方がいらっしゃいます。

最近は、カメラの性能が向上し、かなり楽に検査を受けることができるようになりました。

施設によっては、細い内視鏡を用いたり、注射の痛み止めを用いて検査します。

空気の代わりに、お腹にたまりにくい二酸化炭素を用いて検査をすることもあります。

以上のような工夫を加えることにより、かなり痛みを軽減できます。

検査の苦痛の有無は、内視鏡を行う医師の腕にも依存します。

過去の検査の苦痛がトラウマになっている方は、苦痛のない内視鏡検査を謳い文句にしているクリニックで検査をうけるのがよいでしょう。

このように検査を受けて、早期発見を心がけつつ、がんにかかりにくい生活習慣を意識してほしいと思います。そうすることで、大腸がんで命を落とすことを避けることができます。

国立がん研究センターがん予防・検診研究センターがまとめた「がんを防ぐための新12か条」というものがあります。

1.たばこは吸わない
2.他人のたばこの煙をできるだけ避ける
3.お酒はほどほどに
4.バランスのとれた食生活を
5.塩辛い食品は控えめに
6.野菜や果物は不足しないように
7.適度に運動
8.適切な体重維持
9.ウイルスや細菌の感染予防と治療
10.定期的ながん検診を
11.身体の異常に気がついたら、すぐに受診を
12.正しいがん情報でがんを知る

がんになりにくい生活を意識することで、大腸がんにかかるリスクを減らすことができます。

 

参考:遺伝性大腸癌診療ガイドライン2020年版

監修医師:加藤織江
今医院副院長

消化器内視鏡学会専門医

消化器病学会専門医

内科学会認定医

 

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