こんにちは。加藤隆佑です。
がん治療を専門に、札幌市内の病院で勤務をしています。
さっそく、本日の本題に入りたいと思います。
抗がん剤によって下痢になることがあります。
放置しておくと、脱水になり命に関わることになることがあるので、適切な対処をしないといけません。
適切な対処をしたら、解決できる問題です。
この記事を読むことにより、以下の内容について理解することができるようになります。
・抗がん剤によって下痢になる理由
・下痢になりやすい薬剤
・抗がん剤を投与してから、いつころ下痢がでるのか?
・下痢になったときの食事の注意点
・食事だけでよくならないときの、対処法
抗がん剤によって下痢になる理由
理由1
抗がん剤によって、腸の動きが活発になりすぎて、下痢になることがあります。
そのような理由の場合、抗がん剤を投与した当日に、下痢は発症します。
イリノテカンという抗がん剤で、このような下痢が発生することが多いです。
医学的な対処法は、腸の動きを和らげる薬剤である抗コリン薬(商品名はブスコパンなど)を用います。
この薬剤で下痢は制御できるので、次回からも、同じ量の抗がん剤を投与できることが多いです。
理由2
腸の粘膜がダメージをうけて、消化吸収がしっかりできなくなり、下痢になることがあります。
このことが原因になる場合は、抗がん剤の投与から数日から10日ほどしてから、下痢は発症します。
腸の粘膜にダメージをあたえる抗がん剤は、複数あります。
5FU(注射):3.7%の頻度で下痢
エスワン:15.7%の頻度で下痢
イリノテカン:6割くらいの方に下痢
ドセタキセル:22.8%くらいの方に下痢
パクリタキセル:30.4%くらいの方に下痢
アドリアマイシン:5%くらい
エトポシド:1〜10%未満
医学的な対処法は、ロペミンという薬剤を用います。
ロペミンにより、腸管の運動は抑えられ、さらに腸での水分の吸収は促進されます。その結果、下痢が改善します。
重症の下痢の場合は、ロペミンを4ミリ飲み、その後、下痢がでるたびに、ロペミンをのむという対処がなされることがあります。(1日あたり16ミリグラムまでロペミンを使用)
発熱を伴う場合は、感染性の腸炎を合併していることがあるので、抗生物質を併用することがあります。
これらの対処法でも、下痢が落ち着かないときには、オクトレオチドという点滴を用いることがあります。
そして、下痢がひどくなった場合は、次回からは、その原因となった抗がん剤を1段階減量することにより、下痢で悩まされないようにする必要があります。
ちなみに、下痢を抑えるのに、アルカリイオン水が役立つことがあります。
理由3
免疫チェックポイント阻害薬による下痢は、自己免疫性腸炎といえます。
自分の免疫細胞が暴走して、自分の腸の細胞を攻撃してしまい、下痢が起きてしまうのです。
その場合は、ステロイドという薬物によって、下痢を対処しないといけません。
下痢の最中に、食事内容で気をつけるべきこと
1、以下の食品は、避けるようにしてください。
牛乳、乳製品(とくに、イリノテカンによる下痢の場合)
冷たいもの
香辛料を多く用いた食品
脂肪を多く含む食品
アルコール
カフェインを含むもの
果汁飲料
2、水分を多めに摂取しましょう。
ただし、冷えたお水ではなく、暖かいお水やお茶にするとよいです。
3、トイレに間に合わない場合もあるかもしれません。
その場合は、ポータブルトイレの設置や、おむつの使用を検討しないといけません。
軟便を吸収する吸収パットもあります。
例)アテントSケア 軟便安心パッド
4、肛門の周囲があれるときには、以下の工夫を取り入れてください。
・ウオッシュレットや半身シャワーによる局所の洗浄
・市販の撥水性クリーム、アズレン軟膏、もしくはワセリン軟膏をぬる
びらんが強いときには、ストーマケア用のストーマパウダーが役立ちます。