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抗がん剤で下痢がでたときの食事の注意点と、医学的な解決策を医師が解説

 2021/12/28 副作用対策  

こんにちは。加藤隆佑です。

がん治療を専門に、札幌市内の病院で勤務をしています。

さっそく、本日の本題に入りたいと思います。

抗がん剤によって下痢になることがあります。

放置しておくと、脱水になり命に関わることになることがあるので、適切な対処をしないといけません。

適切な対処をしたら、解決できる問題です。

この記事を読むことにより、以下の内容について理解することができるようになります。

・抗がん剤によって下痢になる理由

・下痢になりやすい薬剤

・抗がん剤を投与してから、いつころ下痢がでるのか?

・下痢になったときの食事の注意点

・食事だけでよくならないときの、対処法

抗がん剤によって下痢になる理由

理由1

抗がん剤によって、腸の動きが活発になりすぎて、下痢になることがあります。

そのような理由の場合、抗がん剤を投与した当日に、下痢は発症します。

イリノテカンという抗がん剤で、このような下痢が発生することが多いです。

医学的な対処法は、腸の動きを和らげる薬剤である抗コリン薬(商品名はブスコパンなど)を用います。

この薬剤で下痢は制御できるので、次回からも、同じ量の抗がん剤を投与できることが多いです。

理由2

腸の粘膜がダメージをうけて、消化吸収がしっかりできなくなり、下痢になることがあります。

このことが原因になる場合は、抗がん剤の投与から数日から10日ほどしてから、下痢は発症します。

腸の粘膜にダメージをあたえる抗がん剤は、複数あります。

5FU(注射):3.7%の頻度で下痢

エスワン:15.7%の頻度で下痢

イリノテカン:6割くらいの方に下痢

ドセタキセル:22.8%くらいの方に下痢

パクリタキセル:30.4%くらいの方に下痢

アドリアマイシン:5%くらい

エトポシド:1〜10%未満

医学的な対処法は、ロペミンという薬剤を用います。

ロペミンにより、腸管の運動は抑えられ、さらに腸での水分の吸収は促進されます。その結果、下痢が改善します。

重症の下痢の場合は、ロペミンを4ミリ飲み、その後、下痢がでるたびに、ロペミンをのむという対処がなされることがあります。(1日あたり16ミリグラムまでロペミンを使用)

発熱を伴う場合は、感染性の腸炎を合併していることがあるので、抗生物質を併用することがあります。

これらの対処法でも、下痢が落ち着かないときには、オクトレオチドという点滴を用いることがあります。

そして、下痢がひどくなった場合は、次回からは、その原因となった抗がん剤を1段階減量することにより、下痢で悩まされないようにする必要があります。

ちなみに、下痢を抑えるのに、アルカリイオン水が役立つことがあります。

理由3

免疫チェックポイント阻害薬による下痢は、自己免疫性腸炎といえます。

自分の免疫細胞が暴走して、自分の腸の細胞を攻撃してしまい、下痢が起きてしまうのです。

その場合は、ステロイドという薬物によって、下痢を対処しないといけません。

下痢の最中に、食事内容で気をつけるべきこと

1、以下の食品は、避けるようにしてください。

牛乳、乳製品(とくに、イリノテカンによる下痢の場合)

冷たいもの

香辛料を多く用いた食品

脂肪を多く含む食品

アルコール

カフェインを含むもの

果汁飲料

2、水分を多めに摂取しましょう。

ただし、冷えたお水ではなく、暖かいお水やお茶にするとよいです。

3、トイレに間に合わない場合もあるかもしれません。

その場合は、ポータブルトイレの設置や、おむつの使用を検討しないといけません。

軟便を吸収する吸収パットもあります。

例)アテントSケア 軟便安心パッド

4、肛門の周囲があれるときには、以下の工夫を取り入れてください。

・ウオッシュレットや半身シャワーによる局所の洗浄

・市販の撥水性クリーム、アズレン軟膏、もしくはワセリン軟膏をぬる

びらんが強いときには、ストーマケア用のストーマパウダーが役立ちます。

 

執筆医師:加藤隆佑


癌治療認定医
内科学会認定医
消化器病学会専門医・指導医
消化器内視鏡学会専門医
肝臓専門医・指導医
札幌禎心会病院がん化学療法センター長

(2021年9月までは、小樽協会病院消化器内科に所属)

消化器領域のがん(食道、胃、すい臓、肝臓、胆のう、大腸)を専門としつつ、がん全般についてアドバイスをしています。

緑書房より「抗がん剤治療を受けるときに読む本」「大腸がんと告知されたときに読む本」「がんと向き合うために大切なこと」を出版。

加藤隆佑医師の論文

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