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CARTでショック状態、血圧低下、倦怠感を生じないにするために

 2021/07/10 緩和ケア関連コラム  

こんにちは。加藤隆佑です。

がん治療を専門に、総合病院で勤務している医師です。

今日の記事は、医師向けの内容になります。

がんによる腹水のために、腹水を抜く処置をしないといけないことがあります。

腹水をぬいて、CARTを行うことは、非常に有効な治療法になります。

しかし、腹水をぬいている最中に、強い倦怠感や、血圧低下が生じることがあります。

それは、血管内脱水の中で、腹水を抜いたためです。

したがって、血管内脱水を補正した上で、腹水を抜くことが必要です。

そのために、すべきことを記載します。

1、CART前日に、血管内脱水の有無をチェック

腹部エコーで、下大静脈が虚脱していないかをチェック。

虚脱していなければ、CARTの際の発熱予防として、プレドニゾロン30ミリグラム投与

虚脱していて、脱水があれば、細胞外液(500〜1000cc)を投与しつつ、CARTの際の発熱予防として、プレドニゾロン30ミリグラム投与

後者の場合は、一時的に腹部膨満が悪化することを覚悟して、行うことになります。

2、CART当日

細胞外液500CC +プレドニゾロン30ミリグラムを投与しつつ、腹水を抜きます。

そして、抜いた腹水をCART処理して、還元します。

15リットルといった大量の腹水を抜く場合は?

15リットル抜くことへの不安は、経験のない医師は不安に思うことが多いです。看護師も不安に思うことでしょう。

しかし、実際に経験してみると、ちゃんと安全にできます。

KM-CARTの第一人者である松崎圭祐医師は、そのことをデータでも示してくださっています。

そして、15Lのも大量の腹水の大半を抜くときのコツは、アスピレーションキットを用いて穿刺することが必要になります。

以下のようなキットは有効です。


「https://www.cardinalhealth.jp/content/dam/corp/web/documents/patient-recovery-jp/brochure/cardinal-health-jp-aspiration-kit.pdf」より画像を引用

穿刺ポイントは、へそのラインで腹直筋を外した箇所です。

そして、カテーテルをダグラス窩の方向に進めることです。

あとは、仰臥位で下肢を水平にしたまま上半身を45度程度上げた半座位の体位にすれば良いだけです。

残念ながら、一部の施設では、ベニューラ針や、CVカテーテルで腹水を抜こうとしていますが、それでは、全量抜けません。中途半端な量を抜いても、本来の治療効果を期待できません。

循環状態にもよりますが、循環状態が不安定な場合は、一気に全量を抜いてはいけません。たとえばですが、はじめに10リットルくらいの腹水を抜きます。

そして、CART処理して、還元します。その上で、残りの腹水5リットルをぬいて、再びCART処理して、還元します。

このような大量の腹水を処理する場合は、KM-CARTが必要になります。

15リットルもの多量の腹水を、通常のCARTでは処理できないからです。

以上のようにして、循環動態を安定させつつ、CARTを行うのが、大事になります。

ただし、循環状態が安定している場合は、一気に15リットル抜いても構いません。そのときの患者さんの状態を見て、腹水を抜くペースを考えましょう。

アルブミンの数値が2未満の時の注意事項

CARTを行う当日に、アルブミン製剤を投与した方が、より良いです。

CARTだけでは、アルブミンの数値を高くすることに限界があるからです。

「循環動態が不安定であり、循環動態を安定させてからCARTを行うために、CARTの直前にアルブミン製剤を投与した」と記載すれば、保険診療内でアルブミン製剤を用いることはできます。

それ以外の注意点

・高度脱水例

術前・術中の補液は多めにするとよいです。

循環状態が不安定で、できるだけ早く濃縮濾過を終わらせないといけないときには、濃縮率をさげることも考慮します。

利尿剤を内服している場合は、利尿剤を中止にしましょう。

・うっ血性心不全の場合

カテコラミンの併用、ゆっくり点滴静注、濃縮率をあげるということが必要になります。

利尿剤は継続し、術前の補液は少なめにします。

CARTで発熱が生じる理由

腹水にはサイトカインなどの発熱物質が多量に含まれています。

CARTではこれらすべての不要物を濾過しきれていません。

濃縮した腹水を再静注したときに、体内にこの発熱物質も入ってしまい、CART後に発熱しやすくなります。

したがって、発熱予防としてプレドニン(R)やソルコーテフ(R)などの副腎皮質ステロイドホルモンを静注すると、抗炎症作用による発熱を抑えることができます。

さらに、KM-CARTですと、腹水へのストレスを減らして、濃縮濾過できるので、発熱の程度をかなり減らすことができます。

KM-CART認定施設は、こちらです。

CART翌日は採血項目チェック

翌日は、ヘモグロビン(Hb)の数値が、低下していることが多いです。

CART前の採血でのヘモグロビンは、脱水のために濃縮したヘモグロビンとなっていることがあります。

CARTをして、循環動態が安定して、脱水がなくなると、濃縮していたヘモグロビンは、濃縮していない状態、つまり薄まった状態になります。

そうなると、採血上は、ヘモグロビンの数値が下がります。

例えば、ヘモグロビンが10くらいの方が、CART後に、7.8位に低下することがあります。これは、貧血が進行したという訳でないので、誤解してないでほしいです。

脱水の状態が良くなったことを意味するので、良いことです。

アルブミンについても、同様のことがあります。CARTをしても、アルブミンが上がらないことがあります。これも、ヘモグロビンの時と同様の理由になります。

さらに、CARTをすると、下痢が出ることがあります。

これは、腹水が減り、腸の浮腫が減り、腸が動きだしたことを意味するので、良いことです。

CARTという言葉は広がっていますが、しっかりしたCART療法ができる施設は、かなり限られています。そして、多量の腹水で悩まれている患者さんの苦しみを緩和するには、KM-CARTが非常に重要な役目を果たします。

執筆医師:加藤隆佑


癌治療認定医
内科学会認定医
消化器病学会専門医
消化器内視鏡学会専門医
肝臓専門医
札幌禎心会病院がん化学療法センター長

(2021年9月までは、小樽協会病院消化器内科に所属)

消化器領域のがん(食道、胃、すい臓、肝臓、胆のう、大腸)を専門としつつ、がん全般についてアドバイスをしています。

緑書房より「抗がん剤治療を受けるときに読む本」と、「大腸がんと告知されたときに読む本」を出版。

加藤隆佑医師の論文

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