乳がんの再発でも楽に余命を伸ばす!末期からでも回復する治療を医師が解説
こんにちは。加藤隆佑です。がん治療を専門に、札幌市内の総合病院で勤務しています。
さて、今日は、乳がんについてのお話です。乳がんの再発で、手術ができない状況ですと、長くは生きられないと、途方にくれているかもしれません。しかし、必ずしも、そうではありません。
油断ができない状況であることは事実ですが、劇的に良くなる方は、いらっしゃいます。
たとえ、抗がん剤治療ができないような、末期の状態であっても、よりよい状態にもっていくことは、できます。余命宣告をされていたとしても、余命をさらに伸ばすことは、できるのです。
また、あなたが、副作用で苦しんでいるならば、もっと楽に治療を受けることも、できるようになります。
希望を持ちつつ、治療を受けていきましょう。
そして、再発の乳がんを克服する確率を、跳ね上げていきましょう。
そこで、私の20年間のがん治療の経験を踏まえて、乳がんをさらに小さくするために、すべきことを、書いていきます。
Contents
乳がんが再発する理由とは?
乳がんが再発する理由は、手術の際に行われた検査では、小さすぎて分からなかった癌細胞が、時間とともに大きくなり、検査で分かるようになったという理由です。
再発した乳がんに、手術による治療は意味がないのか?
乳がんの再発では、肝臓、肺、腹膜、複数のリンパ節に、がん細胞がある状態のことです。がん細胞が、体に広く散らばっていると予想されます。
手術では、すべてのがんを、取り除けませんので、手術による治療は、なされないことになります。
一方で、抗がん剤などによる薬物療法であれば、血流にのって、体中にひろがったがん細胞に、がんを倒す薬の成分を、行き渡らせることができます。
うまく抗がん剤が効いてくれると、がんを抑えることに、非常に役立ちます。
薬物療法が、再発した乳がんの治療における主役になるのです。
その治療により、体に広く散らばっているがんが、制御できたと予想される場合は、根治を目指した手術が、なされることも、あります。
さて、先ほど、乳がんが再発していると、がん細胞が、体に広く散らばっていると予想されるとお話しました。
しかし、すべての方が、再発しているからといって、がん細胞が、体に広く散らばっているわけではありません。
再発した部位だけに、がん細胞がとどまっていることも、あるのです。
特に、以下のようなケースにおいては、再発した部位だけに、がんがとどまっている可能性が、あります。
- 再発した病巣の数が1から3個くらいのケース
- 局所再発であるケース
ちなみに、局所再発とは,手術をした側の乳房や胸壁(きょうへき),その周囲の皮膚やリンパ節に、再発が起こることです。
このような状況に置かれているならば、根治を目指した手術や放射線治療を、検討することがあります。
再発の乳がんに対して、抗がん剤は、どのくらいの効果がある?
乳がんには、いろんな顔つきがある。
乳がんの細胞には、いくつかの顔つきがあります。
顔つきを決める1つの要素が、がん細胞の中に、ホルモン受容体があるか、無いかです。ホルモン受容体があると、女性ホルモンが、がんの増殖を促すことになります。
そして、ホルモン受容体を邪魔するお薬を使えば、がんの増殖を止められます。
がんの顔つきを決めるもう1つの要素が、HER2というタンパクがあるか、無いかです。
HER2というタンパクがあれば、HER2を遮断するお薬を用いると、がんは、小さくなります。
以上のことを踏まえると、乳がんは、以下のような4つのグループにまとめられます。ちなみに、下記にある表の中に書いてある「陽性」の意味は、「検査してみると、反応が認められる」という意味です。
乳がんの顔つきに応じた薬を用いれば、乳がんの縮小を期待できる。
ホルモン受容体が陽性ならば、「ホルモン療法」と「抗がん剤治療」が中心となります。
HER2タンパクが陽性ならば、「HER2タンパクを標的とする分子標的薬」と「抗がん剤治療」が中心となります。
ホルモン受容体とHER2が陽性ならば、「HER2タンパクを標的とする分子標的薬」、「抗がん剤治療」、「ホルモン療法」が中心となります。
トリプルネガティブ乳がんは、抗がん剤が中心となります。
具体的には、以下のような薬物が、用いられます。
ホルモン療法に用いられる薬
- アナストロゾール(製品名は、アリミデックス)
- エキセメスタン(アロマシン)
- レトロゾール(フェマーラ)
- タモキシフェン(ノルバデックス)
- トレミフェン(フェアストン)
- フルベストラント(フェソロデックス)
最近は、ホルモン療法の際に、アフィニトール、ベージニオといった分子標的薬を併用します。
抗がん剤治療の中で、効き目が強いもの
1、ドセタキセル+シクロホスファミド
抗がん剤の頭文字をとって、TC療法とも呼ばれます。
注射による治療です。
2、エピルビシン+シクロホスファミド+フルオロウラシル
FEC療とも呼ばれます。FEC療法の代わりに、AC療法が用いられることがありますが、効果は同じです。
注射による治療です。
3、アブラキサン
アブラキサンのかわりに、ドセタキセルやパクリタキセルという薬が用いられることがあります。どれであったとしても、効果は、ほぼ同じです。
パクリタキセルによる治療の際に、アバスチンという分子標的薬を併用することがあります。
4、免疫チェックポイント阻害薬(製品名は、キイトルーダやテセントリク)
PD-L1という蛋白質を認めるトリプルネガティブ乳がんの場合に用いることができます。
キイトルーダ は「パクリタキセル」もしくは「ゲムシタビン+カルボプラチン 」という抗がん剤と併用して用います。
テセントリクはアブラキサンという抗がん剤と併用することになります。
どちらも、注射による治療です。
5、エスワン(もしくはカペシタビン)
飲み薬です。副作用は少ないです。
6、トロデルビ
トリプルネガティブ乳がんに用いられる抗がん剤の注射薬です。
また、2018年より、BRCAという遺伝子に変異がある場合は、リムパーサという分子標的薬を用いることが、できるようになりました。
ちなみに、BRCAの変異が陽性の割合は以下の通りです。
- ホルモン陽性かつHER2陰性の患者さんの5パーセント
- トリプルネガティブの乳がんの患者さんの15〜20パーセント
上記の方が、リムパーサという飲み薬を用いることができます。
抗がん剤治療で用いられる薬で、効き目はそれほど強くないもの
エリブリンメシル酸塩(製品名はハラヴェン)、ジェムザール(ゲムシタビン)、ビノレルビン(ナベルビンなど)、イリノテカン
さて、抗がん剤によって、強い副作用が、でることが、あります。
従って、副作用に耐えられる体力を維持することが、非常に重要になります。
また、副作用に耐えられる体力がない方は、抗がん剤を受けるべきではありません。逆に、寿命を短くすることに、なりかねないからです。
HER2タンパクを、がん細胞にたくさん認める乳がん(HER2陽性乳がん)に用いられる薬(分子標的薬)
1、トラスツズマブ(ハーセプチン)+ペルツズマブ(パージェタ)
ドセタキセルという抗がん剤と併用されることが多いです。
2、エンハーツ
HER2陽性乳がんだけでなく、HER2タンパクを、がん細胞に少ししか認めない乳がん(HER2低発現乳がん)にも、エンハーツが投与可能になりました。
3、トラスツズマブエムタンシン(カドサイラ)
4、ラパチニブ(タイケルブ)
ゼローダという抗がん剤と併用されることが多いですが、最近は用いられることが少なくなりました。
抗がん剤治療に手詰まり感がでてくるときの対処法
再発の乳がんの治療法のところに、「効き目の強い抗がん剤」と、「効き目がそれほど強くない抗がん剤」という分類になっていることに、気づかれたでしょうか?
効き目の強い抗がん剤は、かなりの治療効果を期待できます。そして、効き目の強い抗がん剤を、優先的に使っていくことになります。
しかし、効き目の強い抗がん剤を用いても、がんが制御できなくなり、「効き目がそれほど強くない抗がん剤」の選択肢しかない段階が、来ることがあります。
具体的には、以下のようなお薬の選択肢しかない場合です。
ハラヴェン、ジェムザール、ナベルビン、イリノテカン
そのような場合は、抗がん剤治療の副作用によって、体力を消耗する割に、がんを制御できないという結果に終わることも、珍しくありません。
このような段階においては、無理に抗がん剤を受けないほうが、よい時もあると言えます。
無理な治療が、寿命を短くするのです。
また、効き目が強い抗がん剤の選択肢がない段階においては、以下のような治療法を受ける価値がないかを、検討してもよいでしょう。
- 治験
- 放射線治療
- ラジオ波
- 血管内治療
もし、上記の治療法のどれかが、とても有効な場合であっても、主治医がこれらの治療を提案してくれるケースは非常に少ないです。
なぜならば、主治医が、これらの治療に関して、詳しくないからです。
主治医が提案してくれなくても、有望な治療法があることが珍しくないことを、覚えておきましょう。
有望な治療法を探す時には、セカンドオピニオンを利用しても良いでしょう。
また、抗がん剤治療に手詰まり感がでれば、こちらの治療法も、検討することになります。
抗がん剤の治療効果を、どのように確認する?
2ヶ月間ほど、治療を行った上で、抗がん剤の治療効果を確認します。
CTや、腫瘍マーカーの数値で、がんの増殖が抑えられていれば、抗がん剤の効果はあると判定されます。
がんの勢いが強く、切羽詰まった状態の時もあります。その場合は、2ヶ月よりもっと短い期間で、抗がん剤の効果判定をします。
適切なタイミングで、抗がん剤の効果の判定をすることが大切なのです。
適切なタイミングで、やってもらえるかは、医師の腕による部分も、多いところです。
「もっと早い段階で抗がん剤の効果判定を行い、別の抗がん剤を変更しておけば、もっと長く元気に過ごすことができたかもしれない。」ということも、あるということです。
さて、乳がんの抗がん剤は、よい薬がでています。非常に長い期間、元気に過ごされる方も多いです。
先日、私が担当した方は、肺に転移して、もう少しで15年になる方でした。
ずっとがんの成長は抑えられています。
また、再発の乳がんであったとしても、一部の人は、劇的に効いて、手術ができるくらいになることもあります。
そして、乳がんの寛解の状態(画像上、がんを指摘できない状態)がずっと続くこともあります。
だからこそ、治らないと決めつけないで、治療を受けるというスタンスは必要です。
腫瘍マーカーが増加してきたら、どうしたらよい?
抗がん剤治療を受けている最中の定期検査の結果で、腫瘍マーカーが少し上昇することがあります。腫瘍マーカが少し上がった程度では、不安に思う必要はありません。
しかし、右肩上がりに上昇する場合は、注意が必要です。
たとえ、腫瘍マーカーが、正常域内であったとしても、右肩上がりに数値が上昇するときは、がんが増殖している兆候であることが多いです。
治療に、なんらかの工夫を付け加えないといけないサインとなります。
乳がんの5年生存率を、もっと高くできる。
出典:がん登録・統計
上記のデータは、2006年から2008年の間に、乳がんの診断や治療を受けた患者様に基づいたデータです。
つまり、10年前の治療に基づくものですので、現在の発達した治療であれば、よりよい治療成績になっています。
以前に比べれば、乳がんの治療効果は、高っているのです。
ちなみに、再発の場合の5年生存率は、ステージ4の乳がんと、ほぼ同じとなります。
再発の乳がんは、余命を数える段階か?
再発の乳がんであっても、数年にわたって、元気にされている人はいます。中には、完治に持ってこれるケースもあります。
一方で、全身に転移して食事もほとんど食べられない状態の再発ですと、数週間しか生きられない人もいます。
結果として、再発の乳がんの生存期間の中央値は、約29ヶ月となります。
そして、工夫をすることにより、さらに、生存期間を伸ばせることは、様々な医学データから判明しています。
さて、なかには、再発の乳がんであっても、画像上、がんが、指摘できない状態に持っていく事ができるケースもあります。1つ事例をあげます。
再発の乳がんでも、治ることがあるということを示すために、乳がんよりも、難治性のがんである、膵臓がんを例にだして、お話しします。
肝臓に転移があり、ステージ4の診断。
抗がん剤治療で、肝臓の転移は消失。
しかし、膵癌のがんの部分は、大血管を巻き込んでいて、手術では、とれない状態。しかし、これ以上の抗がん剤治療の継続は困難であり、手術を試みることになる。
手術で、お腹の中を見てみると、血管を巻き込んでいる部分は、がんではなく、治療により繊維化した部分であることが、判明。
最終的に、手術で、がんを取り除くことができる。
今回は、膵臓がんを例に説明しましたが、再発の乳がんでも完治する方はいるのです。
さて、このような、良い治療結果にしていくためには、病院の治療だけを受けていれば良いわけではありません。
いろんな工夫を取り入れていく必要があります。
抗がん剤の効果を、増強させることは、できる。
抗がん剤治療や放射線治療の効果を、よりよいものに、することは、できます。
例えば、ハイパーサーミア(温熱療法)を併用することも、よいでしょう。
よりよい治療結果につながるというデータは、複数あります。
保険診療で、ハイパーサーミアを受けることができるケースが多いです。
以下のような機械で、病巣を加熱します。
また、東洋医学を併用すると、よりよい治療結果につながるというデータも、複数あります。
たとえば、漢方薬の内服は、東洋医学における代表的な治療法です。
エキス顆粒の漢方や、タブレット状の漢方であれば、水と一緒に飲むだけです。
煎じる漢方の場合は、以下のような漢方を、ヤカンなどで煮出して、煮出した液体だけを飲みます。
購入に関してですが、保険診療の中で処方してもらえる、漢方もあれば、保険の効かない漢方もあります。
保険の効かないような、特殊な漢方は、漢方薬局で購入することになります。
一方で、漢方やハイパーサミアは、十分に普及していないのも、事実です。主治医は、これらの治療のことを知らないがために、「そんな治療は、役に立たない」と言われる方も、います。
私も、以前は、そのように感じていました。
しかし、効果を肌身で感じてからは、「ハイパーサーミア」や「漢方」は、非常に有効な治療の1つと確信しました。
たとえば、以下のような事例があります。
再発した子宮頸がんに対して、抗がん剤と放射線治療を行うものの、がんは、増大してしまう。
そこで、2種類の漢方を追加する。
その結果、腫瘍マーカーは下がり、がんも、縮小する。
今回は、子宮がんの事例ですが、乳がんに対しても同じことが言えます。
幸いなことに、最近は、漢方に理解を示してくれる医師が、増えてきています。
大切なところなので、もう一度、書きます。
病院の治療は、データも豊富であり、重要な治療法であることは、事実です。その治療法を軸にしつつ、「ハイパーサーミア」や「漢方」といった枝葉をつけると、もっとよいです。
副作用を減らすことにも、つながります。
あなたの今の治療に、簡単に取り入れられる漢方に関しても、こちらで学ぶことができます。
私、加藤隆佑が、このような治療法を取り入れたきっかけとは?
私は、医師として、20年のキャリアがあります。
西洋医学のトレーニングを徹底的に受けました。
しかし、専門医をとり、ある程度のことができるようになった頃より、がんの治療に、大きな疑問を感じるようになりました。
治療の結果、副作用に悩まされる人が大勢いる。ベストの治療をしても、患者さんは、必ずしも幸せになってくれない。
さらに、患者さんだけでなく、家族もとても辛い思いをしている方が多い。
病院では治療だけで、心のケアをしてくれる人がいない。
このような思いに、悩まされるように、なったのです。そこで、いろんな治療法を勉強しました。
患者さんや、そのご家族の不安を取り除くための、カウンセリングのトレーニングを受けました。
また、いろんな治療法を学ぶ過程で、漢方、食事療法、そしてハイパーサーミアは効果があり、再現性のある治療法であることを、知ることができました。
このような経緯があり、現在は、西洋医学に、漢方、食事療法、そしてハイパーサーミアを組み込んだ治療を、提案しています。
たとえ、ステージ4のがんであったとしても、完治にもっていく確率をあげることができます。
私の情報発信は、一人でも多くの方に、このことを伝えるための、挑戦でもあります。
そして、がんになっても、毎日の生活に楽しみを持ちながら、生活を送って欲しいと思います。
免疫療法は、効果があるのか?
免疫療法には、2種類あります。1つ目は、保険診療で認可されている免疫チェックポイント阻害薬のことです。
そして、免疫チェックポイント阻害薬は、乳がんでも用いられます。しかし、すべての乳がんの方に用いることは、できません。
トリプルネガティブ乳がんで、PDーL1というたんぱく質を認める場合にのみ、「テセントリク」という免疫チェクポイント阻害薬を、用いることができます。
抗がん剤と併用することが、前提になっています。
2つ目は、自由診療で用いられる免疫療法です。リンパ球や樹状細胞といった免疫に寄与する細胞を、あなたの体のなかに、注入する治療のことです。
この治療法には、否定的な意見が多く、「データが乏しく、値段も高く、効果もほとんどない」と主張される医師は、多いです。
しかし、本当なのでしょうか?
ここでは、詳細は割愛しますが、結論から言うと、「抗がん剤と併用することによって、がんを非常に縮小させる後押しができること」は、頻度は低いながら、あります。
そうである以上、一部の方には、有効な治療法であると考えるのが妥当です。
抗がん剤の副作用を、もっと取り除くことが、できる。
抗がん剤の副作用で、寿命が短くなることがある。
抗がん剤は、がん細胞だけでなく正常な細胞にも影響を与えます。
特に髪の毛、口や消化管などの粘膜、あるいは血球をつくる骨髄は、影響を受けやすいです。その結果、脱毛、口内炎、下痢が起こったり、白血球の数が少なくなることがあります。
また、全身のだるさ、吐き気、手足のはれ、しびれ、動悸(どうき)、肝機能障害、腎機能障害が出ることもあります。
こうした副作用が、どの程度出るかに関しては、個人差があります。
副作用が著しい場合には、抗がん剤の量を減らしたり、抗がん剤治療を中断します。
副作用がひどいと、体力を消耗するからです。高齢の方ですと、そのことがきっかけで、寝たきりになることもあります。
寿命が短くなることに、つながります。
そのようなことを避けるために、あなたが、辛いと思っている副作用を、主治医に、しっかり伝えましょう。そして、副作用を、取り除いてもらいましょう。
幸いにも、最近は副作用を、かなり取り除けるようになっていますよ。
抗がん剤の副作用を取り除くために、◯◯を伝えないといけない。
例えば、以前は、吐き気で悩まれる方が、非常に多かったです。しかし、最近は、そのようなことは、減りました。非常によく効く吐き気止めの薬が、使えるようになったからです。
以前とは、比べものにならないくらいに、吐き気に悩まされずに、治療を受けられるようになってきています。
そのような事実があるにもかかわらず、吐き気に悩まされながら治療を受けられている方がいるのも、事実です。
その原因として、以下の理由があげられます。
- 副作用で苦しんでいることを、主治医が把握できていない。
- 主治医が、副作用対策を、熟知していない。
そのために、本来であれば悩まなくてもよい副作用に、悩まされることは、多いです。
普段から、医師とのコミュニケーションを、しっかりとることが、必要です。
コミュニケーションをとっても、副作用がとれない場合は、セカンドオピニオンで、他の医師の意見を聞きましょう。
私の外来にも、そのような悩みで、受診される方は、いらっしゃいます。
副作用の原因で、もう一つ忘れてはいけないことがあります。
過剰な量の抗がん剤が、投与されていることが、あるのです。
もう少し具体的にお伝えします。
抗がん剤は、体重と身長から、投与量を計算しますので、体重が減ったならば、抗がん剤の量を、減量しないといけません。
しかし、体重が減ったにも関わらず、従来の体重から計算された量の抗がん剤が、投与されていることがあるのです。
それは、過剰な量の抗がん剤になり、強い副作用がでることになります。
体重の1キロ程度の減少は、気にしなくてもよいですが、それ以上の体重の減少のときは、主治医に伝えるべきです。
副作用を減らして、もっと楽に治療を受けることはできます。
抗がん剤による口内炎は、もっと楽にできます。
エレンタールという栄養ドリンクがあります。これを飲むと、抗がん剤によってできる口内炎を減らすことができるというデータがあります。
データの数は少ないのですが、その効果を実感して、診療に利用している病院も複数あります。
私もエレンタールの効果に驚き、よく用います。
ちなみに、私の著書にも、エレンタールの効果のことを、書いています。
諦めないでいろいろ調べてみると、あなたの悩みを解決できる方法があるものです。
ちなみに、私は、広くは普及していない治療方法であったとしても、しっかりリサーチします。
そして、再現性が高く、効果があるものは、ブログなどで、ご紹介しています。
標準的な治療だけが、治療でないことは、知っておいて欲しいです。
参考文献:消化器癌化学療法における口内炎に対するエレンタールの有用性
抗がん剤による吐き気は、もっと楽にできます。
抗がん剤の副作用である吐き気を、もっと取り除くことは、できます。
最近になって、非常に効果のある吐き気止めの薬が、開発されたからです。
しかし、その薬を主治医が適切に用いることができないために、吐き気を取ることができていないケースを、たまに見かけます。
そのような可能性があるときには、セカンドオピニオンなどで、他の医師に、吐き気の解決策の意見を仰ぐのも、よいでしょう。
また、あなたが、吐き気で辛い事を、主治医に伝えたつもりでも、伝わっていないことは、多いです。
そのような場合は、主治医に伝えたいことを、短い手紙に書いて、外来の診察の前に渡すとよいでしょう。
確実に、あなたの伝えたい事が伝わります。
あらゆる手段を使って、吐き気を楽にしましょう。体力が低下してしまうので、必ず解決しないといけない副作用の1つです。そして、多くの場合が、解決できます。
抗がん剤によるしびれは、もっと楽にできます。
乳がんでは、アブラキサンやパクリタキセルという抗がん剤がよく用いられます。これらの薬剤で、特に注意しないといけない副作用があります。
それは、しびれです。
専門用語では、末梢神経障害と呼ばれます。
後遺症としてしびれが残り、自分で歩く事が困難になったり、ボタンを自分でつけれなくなることもあります。
しびれに関しては、適切な対処が必要です。
主治医には、しびれがでたときには、報告して、適切な対処をしてもらいましょう。
しびれは、標準療法で用いられる方法では、十分に改善しないこともあります。そのような場合でも、しびれを改善させる方法は、あります。
特殊な漢方になってしまいますが、非常にしびれをとる力がある漢方が、あるのです。
また、しびれが、出現しないようにする予防法もあります。
再発した部位に合わせた特殊な治療法と症状
骨に再発している場合の治療法と症状
乳がんは、骨に再発しやすいがんです。
さて、骨転移に対する治療としては、薬物療法と、放射線治療です。
薬物療法では、骨粗しょう症の治療薬を用います。骨の転移による骨折を予防するためです。具体的には、ビスフォスフォネート製剤やランマーク(デノスマブ)という名称の薬を服用します。
放射線治療では、痛みの緩和や、骨折の危険性が高い場合に、行われます。
同時に薬物療法(抗がん剤治療、ホルモン剤)になります。
次に症状に関してですが、骨の痛みや、骨折といったことが挙げられます。
肝臓に再発している場合の治療法と症状
肝臓に再発している場合は、抗がん剤治療で制御していくことになります。
もし、肝臓への再発の数が少数であり、肝臓以外にがんが存在せず、さらに、肝臓への再発の状態が長期間にわたって落ち着いているときは、以下の治療法が検討されることもあります。
- 放射線治療
- 手術
次に症状に関してですが、「再発したがんが、肝臓の大半を、占拠した段階」に至ってから、肝臓の再発による症状が、でることが多いです。
例えば、黄疸といった症状です。
ちなみに、採血で肝機能障害が出現した時に、「肝臓の転移が、悪化したのであろう」と心配される方が多いですが、そうではありません。
大半のケースは、抗がん剤などによる肝機能障害か、「転移したがんが、胆管という胆汁の流れ道を塞ぐこと」が、原因となっています。
リンパ節に再発したときの治療法と症状
再発したがんにより、リンパ節が腫大している場合は、抗がん剤治療で制御していくことになります。
もし、リンパ節への再発が、一部分だけにとどまるときは、放射線治療を検討することもあります。
次に症状に関してですが、大きく腫れたリンパ節が、神経に触れるれば、痛みがでます。
腫大したリンパ節が、臓器を圧排すれば、それに伴う症状が出ます。例えば、再発して腫大したリンパ節が、胆汁の流れ道を、押しつぶせば、黄疸が出現するといった感じです。
どの部位のリンパ節に再発して、そのリンパ節がどの程度、腫れるかによって、症状は異なります。
胸膜に再発した場合の治療法と症状
肺の中に、胸膜という部位があります。そこに、種がまかれるように、バラバラと、がんが広がることを胸膜播種(ふくまくはしゅ)と言います。
乳がんにおいては、胸膜播種の形態で再発することは、多いです。
胸膜播種がひどい状況になると、胸水が出現します。そして、胸水の量が非常に多いと、呼吸困難に陥り、命にも関わる状態になります。
その場合は、抗がん剤で、治療をしていくことになります。抗がん剤治療で、がんを制御できれば、胸水は減ります。
呼吸困難といった症状も、楽にしていくことが、できます。
さて、胸水が非常に多いときは、胸水を抜かないといけません。
胸水だけを抜くと、体の栄養成分も、抜けてしまうということが注意点として挙げられます。
そのことを避けるために、抜いた胸水を「ろ過+濃縮」して、胸水の中の栄養成分だけを、体内に戻す腹水ろ過濃縮再静注法(CART)を行うことがあります。
また、胸膜癒着術という方法で、胸水がたまらないようにする治療を行うこともあります。
脳に再発した場合の治療法と、症状
脳に乳がんが再発したときの症状は,頭痛,嘔吐,麻痺,けいれんなどですが,再発する場所によっても症状が異なります。
また、小さな再発巣でも、けいれんなどの症状が出ることもあれば,相当大きくなるまで症状が出ない場合もあります。
さて、脳への再発には、放射線治療による効果が期待できます。
脳全体に放射線を照射する「全脳照射」と、転移がある部分にのみ放射線を照射する「定位放射線治療」があります。
ちなみに、「定位放射線治療」は、ピンポイント照射と言われ、高用量の放射線を、ピンポイントで当てます。
再発の個数が少ない場合は、「定位放射線治療」になります。再発の数が多い場合は、「全脳照射」になります。
「全脳照射」に「定位放射線治療」が併用されることもあります。
同時に薬物療法(抗がん剤治療、ホルモン剤)になります。
その治療により、脳に再発したがんを、完全に消すこともできます。
乳がんによる痛みは、もっと、とる事ができる。
乳がんの治療を受けるときに、最も大切なことは、症状をとることです。
痛みがあるときは、痛み止めを飲む事になります。なかなかとれない痛みであるならば、モルヒネといった医療用麻薬を用いることに、なります。
痛みをとることを中途半端にして、治療を受けるべきでは、ありません。
痛みがある結果、食事量が減ったり、睡眠不足になって、体力が落ちる事もあります。体力が落ちると、病院の治療に耐えられなくなる事も、珍しくありません。
症状をとること、そして、体調を整えることを、第一目標にしましょう。
その上で、病院の治療を受けましょう。
乳がんの治療では、その部分が、肝要になります。
再発した乳がんは治る?それとも、末期で余命を数える段階?そして末期症状とは?
「再発=末期」と、思われがちですが、再発した乳がんでも、完治される方は、います。
私が考える末期とは、自分の力で歩くことも食事をすることもできないほど、弱りきっている段階と考えます。そのような段階にならない限りは、受けるべき治療はあります。
また、再発にも、いろんな状況が想定されます。
肝臓に再発した病巣が、1つだけある方
肺や肝臓に、無数の再発した病巣がある方
すべての抗がん剤治療を試み、治緩和ケアを提案される方
上記の通り、再発した乳がんといっても、いろんな段階があるのです。
そして、再発した乳がんであっても、完治にもってこれることも、あるのです。
さて、ここでは、効果の期待できる抗がん剤治療が提案することができない段階の対応について、詳しくお伝えします。
このような段階は、病気に伴う心と体の痛みを和らげる治療、つまり緩和医療が中心となります。
痛みがあるときは、痛み止めの薬の量を調節する。
精神的に落ち込んでいるときは、カウンセリングを受けたり、抗うつ薬の量を調節する。
そのような治療を中心に行います。
もちろん、がんと診断された時期から、上記のことを、同時並行で行っています。「効果の期待できる抗がん剤治療が提案できない段階」は、これらを、より強化していくということです。
緩和医療を受けることも、より長く生きていくことにつながることは、証明されています。
抗がん剤、手術、放射線治療だけが、より長く生きていくための治療ではないことを忘れてはいけません。
抗がん剤、手術、放射線治療を受けなくても、体調を整えることを心がけるだけでも、より長く生きられます。
そのために、漢方や薬膳的な食事といった東洋医学も、取り入れるべき価値のあることです。
そして、毎日の生活に、楽しみを持ちながら、生活できるようにしましょう。
最後に、まとめとなりますが、乳がんと戦うためには、以下の点に注意が必要です。
- 抗がん剤治療、放射線治療、手術をバランスよく用いる
- 病院での治療で、体力を消耗しないようにすること
- 適切な漢方
- 適切な食事内容
その結果、乳がんによる症状を、楽にできます。
乳がんを、もっと小さくしていくことも、できます。
余命宣告をされていたとしても、もっと長く生きることは、できます。そして、乳がんに負けない体を作っていきましょう。
そのために、知っておくことがあります。
参考文献
日本医師会 知っておきたいがん検診 乳がん検診 乳がんの原因
https://www.med.or.jp/forest/gankenshin/type/breast/cause/
東北大学大学院医学系研究科医科学専攻社会医学講座公衆衛生学分野
http://www.pbhealth.med.tohoku.ac.jp/node/319
がん研有明病院 がんの種類について 乳癌
http://www.jfcr.or.jp/hospital/cancer/type/breast.html
がん研有明病院 形成外科 乳房再建
http://www.jfcr.or.jp/hospital/department/clinic/general/plastic_surgery/breast/003.html
国立がん研究センター東病院 形成外科 乳房再建術について
https://www.ncc.go.jp/jp/ncce/clinic/plastic_surgery/ps/02.html
がん・感染症センター 都立駒込病院 乳がん薬物療法について
http://www.cick.jp/gekanyusen/drug_therapy/
特定非営利活動法人日本成人病予防協会
http://www.japa.org/?page_id=6806
和歌山病院 セルフチェック
http://wakayama-hosp.jp/%E4%B9%B3%E3%81%8C%E3%82%93%E6%A4%9C%E8%A8%BA/
東京都福祉保健局 自己触診
http://www.fukushihoken.metro.tokyo.jp/kensui/territory1/selfcheck/nyuugan.html
日本産婦人科学会
http://www.jsog.or.jp/activity/pdf/kenshu_58-4.pdf
日本産婦人科学会 婦人会による乳がん診療
http://www.jsog.or.jp/PDF/52/5209-304.pdf
がん情報サイト 男性乳がんの治療(PDQ®)
http://cancerinfo.tri-kobe.org/pdq/summary/japanese.jsp?Pdq_ID=CDR0000062969
公益財団法人がん研究振興財団「がんの統計’17」
https://ganjoho.jp/data/reg_stat/statistics/brochure/2017/cancer_statistics_2017_date_J.pdf
文献:『乳がん 受診から診断、治療、経過観察への流れ』国立がん研究センターがん報サービス
参考資料:『乳がん 受診から診断、治療、経過観察への流れ』国立がん研究センターがん報サービス
参考資料:日本乳癌学会乳がん診療ガイドライン
参考文献:current status of clinical evidence for electromagnetic hyperthermia on prospective trials