脳転移が再発した時には、放射線脳壊死の可能性も考えないといけない。
こんにちは。札幌近郊の総合病院で、がん治療を専門にしている工藤準也です。
本日は、放射線脳壊死について解説いたします。
がんの脳転移になった時の予後は?
がんが脳に転移しても、放射線治療により、かなり制御できます。
しかし、放射線治療を行なっても、脳転移が再発することがあります。
その場合は、一番初めに、追加で放射線治療ができないかを検討します。
注意点として、脳転移の再発のように見えて、実は、再発ではないことがあることです。
放射線脳壊死の可能性もあるのです。
放射線脳壊死とは?
放射線があたった脳の組織や細胞が、死んでしまうことです。
放射線脳壊死が生じる時期は,放射線治療後 数ヶ月から10年後くらいというように、幅があります。
放射線脳壊死が生じる頻度は高いものではありませんが、もし、脳壊死が生じるならば、一日に照射した線量が多い方が、より早い時期に脳壊死が発生する傾向があるとされています。
そして、ガドリニムという造影剤を用いて検査をすると、脳壊死になった場合は、造影剤によって染まりますので、再発との区別が難しいです。
つまり、がんの再発と思われたのが、実は、放射線脳壊死ということもあり得るのです。
放射線脳壊死による症状は?
脳が、むくみます。
その結果、脳腫瘍が再発した時と同じような症状が出ます。例えば、以下のような症状です。
- 認知症、記憶力の低下
- てんかん
- 上半身麻痺
放射線脳壊死に対する治療は?
脳浮腫を軽減させる薬剤であるステロイドを用います。
最近は、アバスチンという血管新生阻害薬が、浮腫を改善させることが判明しています。
しかし、放射線脳壊死に対して、アバスチンを用いることは、保険診療上では認可されていません。
また、浮腫は半年から2年くらい続くとされているので、ステロイドやアバスチンは、かなり長期間用いないといけません。
これらの薬を途中でやめると、再び脳浮腫は悪化します。
もし、ステロイドでの治療を行なっても、浮腫が改善しない場合は、手術を検討します。
手術が成功すると,脳浮腫(脳の腫れ)が、引きます。そして、浮腫により圧迫されていた脳の機能が改善して,症状が良くなります 。
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