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BNCT(ホウ素中性子捕捉療法)について、治療方法と治療効果について医師が解説

 2024/11/02 放射線治療  

こんにちは。がん治療専門医の加藤隆佑です。

BNCT(ホウ素中性子捕捉療法)は、がん細胞を狙い撃ちする新しい治療法です。この治療法について、患者さんにわかりやすく説明いたします。

BNCTとは

BNCTは、がん細胞だけを選んで破壊する革新的な治療法です。

この治療法は、ホウ素という特殊な物質と中性子という粒子を使って、がん細胞を内側から攻撃します。

治療の手順

1、ホウ素を含む薬をお体に注射します。

このホウ素は、正常細胞にはほとんど取り込まれず、がん細胞に集まりやすい性質を持っています。ホウ素ががん細胞に集まったら、中性子という粒子を照射します。

2、中性子という粒子を照射することで、中性子がホウ素と出会うことになります。

その結果、α線とリチウム粒子によるエネルギーにより、細胞を破壊する力の強い粒子が生まれます。さらに、細胞1つ分程度の範囲でしか作用しません。

したがって、正常な細胞はほとんどダメージを受けません。

こちらより画像を引用

ただし、ただし、一部の正常細胞(例:粘膜)もホウ素薬剤を取り込む可能性があるため、完全に副作用がないわけではありません。脱毛、口内炎、吐き気などの副作用が生じる可能性はあります。

ちなみに、BNCTで使用される中性子は、エネルギーが低く(~0.025eV)、それ自体では正常細胞にほとんど影響を与えません。つまり、正常細胞では、この低エネルギーの中性子はほとんど影響を与えずに通過していきます。

3、1〜2回の治療で完了することが多く、患者さんの治療時間は30〜60分程度と短いです。

ただし、治療を行うためのプランを作ることに医療従事者側は時間を要します。

何回も、この治療を受けることはできますか?

BNTCによる治療を受けて、同じ場所に再発した場合も、再びBNTCをすることはありました。

しかし、最近になり、再照射をした場合の治療効果が良くないことがわかり、再照射をすることは減りました。

BNTCはどのような癌に対して用いられる?

現在、頭や首のがんで、手術ができないものや再発したものに対して保険が適用されています。

その治療成績ですが、以下の論文で報告されています。

72人の方に治療をして

・・・・・

44.4%の方が、完全消失

36.1%の方が、縮小

13.9%の方が大きさに変化なし

2.8%が増大

2.8%が評価不能

・・・・・

という結果でした。

将来的には、脳腫瘍、肺がん、肝臓がん、乳がんなど、さまざまながんへの応用が期待されています。

どこの病院で受けられる?

2024年11月現在における情報となりますが、

1、頭頸部がんに対するBNTC

・大阪医科大学・関西BNCT共同医療センター

・総合南東北病院・南東北BNCT研究センター

2、乳がんに対するBNTC

特定臨床研究中ではありますが、江戸川病院で行われています。

3、皮膚血管肉腫に対するBNTC

臨床試験中ではありますが、条件を満たせば国立がん中央センターで受けられるかもしれません。

4、膠芽腫(脳腫瘍の1つ)

臨床試験中ではありますが、条件を満たせば筑波大学病院で受けられるかもしれません。

そして、以下のような治験も行われています。

BNCTは、患者さんの生活の質を大切にしながら、効果的にがんと闘う新しい選択肢です。この治療法が、より多くのがん患者さんの希望となることが期待されています。

執筆医師:加藤隆佑


癌治療認定医
内科学会認定医
消化器病学会専門医・指導医
消化器内視鏡学会専門医
肝臓専門医・指導医
札幌禎心会病院がん化学療法センター長

(2021年9月までは、小樽協会病院消化器内科に所属)

消化器領域のがん(食道、胃、すい臓、肝臓、胆のう、大腸)を専門としつつ、がん全般についてアドバイスをしています。

緑書房より「抗がん剤治療を受けるときに読む本」「大腸がんと告知されたときに読む本」「がんと向き合うために大切なこと」を出版。

加藤隆佑医師の論文

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