大腸がんが再発した時の症状を、再発部位ごとに医師が解説!
こんにちは。加藤隆佑です。小樽協会病院というところで、がんを専門に診療をしています。
再発とは、手術などにより、いったんは治ったように見えていたがんが、再び出現してきた状態をいいます。
そして、大腸がんの手術後、一番気がかりなのが、再発しないかということです。
本日は、大腸がんが再発したときの症状を、再発部位ごとに解説いたします。
Contents
大腸がんが再発しやすい場所は?
直腸がんと、直腸以外の大腸がんでは、再発しやすい場所が異なります。
直腸以外にできた大腸がんの、再発しやすい場所
大腸からの血液は肝臓に集まるため、肝臓に転移しやすいです。
また、肺も再発が起こりやすい場所です。
これら以外で再発しやすい場所は、最初にがんが見つかった場所の近くです。
これを局所再発といいます。
また、腹膜に再発することもあります。
頻度は非常に低いですが、骨や脳に転移することもあります。
直腸がんにおける再発しやすい場所
直腸がんでは肝臓への再発、肺への再発、局所再発がほぼ同じ頻度です。
また、腹膜に再発することもあります。
頻度は非常に低いですが、骨や脳に転移することもあります。
大半のケースにおいて、手術を終えて5年以内に再発します。
5年を過ぎれば、再発の危険は、ほとんどないです。
肝臓に再発した場合の症状
肝臓に再発しても、初期の段階では、症状はでないでしょう。
「再発したがんが、肝臓の大半を、占拠した段階」に至ってから、肝臓に再発したことによる症状がでることが多いです。
例えば、黄疸といった症状です。
ちなみに、採血で肝機能障害が出現した時に、「肝臓に再発したからだろう」と心配される方が多いですが、そうではありません。
大半のケースは、がん以外の原因です。例えば、薬剤による肝機能障害などです。
ちなみに、肝臓に再発した場合は、抗がん剤治療で制御していくことになります。
もし、肝転移の数が少数であり、肝臓以外にがんが存在しなければ、以下の治療法が検討されることもあります。
- 放射線治療
- 手術
肺に再発した場合の症状
がんが、肺のスペースをかなり占拠しないかぎりは、症状はほとんど出ません。
がんが大きくなると、以下のような症状がでることがあります。
- 咳
- 痰
- 呼吸困難
ちなみに、肺に再発した場合は、抗がん剤治療で制御していくことになります。
もし、肺への再発の数が少数であり、肺以外にがんが存在しなければ、以下の治療法が検討されることもあります。
- 放射線治療
- 手術
局所再発したときの症状
もともと、がんがあった周囲に再発することを局所再発といいます。
大腸がんの手術は腸と腸をつなぎ合わせますが、そのつなぎ目にがんが再発することも、局所再発の一つです。
局所再発したがんの症状が、周囲の臓器を圧迫することにより、症状がでます。
治療としては、抗がん剤治療と同時に、手術や放射線治療を検討します。
腹膜播種として再発した場合の症状
お腹の中に、腹膜という部位があります。そこに、種がまかれるように、バラバラと、がんが広がることを腹膜播種(ふくまくはしゅ)と言います。
大腸がんにおいては、腹膜播種の形態で再発することは、ありえます。
腹痛や便秘といった症状が出ます。
腹膜播種がひどい状況になると、腹水がでて、お腹がはります。
お腹がはることがきっかけで、大腸がんの再発がわかることは、珍しくありません。
大腸がんの術後に、お腹がはるという症状がでたときには、早めに病院を受診しましょう。
大腸がんで腹水多量で、お腹がパンパンになったときの対処法
腹水でお腹が張って辛いという症状をとるために、小さな針をお腹にさして、腹水を抜くことがあります。
腹水だけを抜くと、体の栄養成分も、抜けてしまうことが、注意点として、挙げられます。
そのことを避けるために、腹水を抜いた後に、腹水を「ろ過+濃縮」して、腹水の中の栄養分だけを体内に戻す、腹水ろ過濃縮再静注法(CART)を行うことがあります。
脳に再発したときの症状
大腸がんが脳に転移して再発することがありますが、その頻度は非常に低いため、定期的に脳の検査をすることはありません。
しかし、頭痛、麻痺、けいれんといった症状が出たときには、CTやMRIで精密検査をして、脳に再発巣があるかを、確認します。
脳に再発が見つかった場合、残念ながら、抗がん剤は脳に再発した大腸がんに対して、効果をほとんど期待できません。
なぜならば、脳の組織と血管とのあいだにバリアがあり、抗がん剤が脳にいきわたらないからです。
したがって、治療法は、放射線治療か手術で取り除くかの、どちらかです。
骨に再発したときの症状
頻度は低いですが、大腸がんが骨に転移することがあります。
しかし、骨だけに転移して再発することはまれで、どこかに再発したがんが、体中に広がり骨に転移していくというケースが大半です。
大腸がんが骨に転移すると、骨が破壊されて周りの組織を圧迫します。
その結果、痛み、しびれ、麻痺といった症状が出たり、転移した部位が骨折することがあります。
痛みが強い場合や、麻痺の危険があるときは放射線治療を行い、場合によっては手術をします。骨転移以外の部位にも、がんがあることがほとんどなので、同時に抗がん剤治療も行います。
さて、大腸がんを早期に発見すると、大腸がんを治癒にもっていける可能性は、高くなります。
だからこそ、大腸がんの再発を疑わせる症状があるときには、早く病院を受診しましょう。
万が一、再発してしまった時の治療法については、こちらで詳しく解説しています。
また、大腸がんの再発を回避するために、取り入れるべきことも、あります。